心療内科・精神科経営シリーズ 第1回|診療報酬改定から考える経営の3つの視点
本記事は「診療科目別経営戦略/心療内科・精神科経営シリーズ」に属します。
診療報酬改定の流れを踏まえ、心療内科・精神科クリニックの外来機能・収益モデル・医療DXを整理します。
心療内科・精神科経営シリーズ 第1回|診療報酬改定から考える経営の3つの視点
診療報酬改定は、単なる制度変更ではなく、「これからの診療をどう支えるか」を考えるきっかけです。
心療内科や精神科の現場では、慢性期の患者対応・初診枠の制限・人材確保など、日常の課題が複雑に絡み合います。
この記事では、改定の動きを踏まえて、院長が経営の舵取りを行ううえで整理しておきたい3つの視点を紹介します。
「制度に振り回される」のではなく、「理念に基づいて経営を選び取る」ためのヒントとしてご活用ください。
1. 外来機能をどう位置づけるか
診療報酬の議論では、地域医療の中で「かかりつけ機能」と「専門機能」をどう整理するかが大きなテーマです。
心療内科の場合、長期的に通院を続ける患者さんと、新たに初診で来院される方の双方に対応する必要があります。
たとえば、初診枠を曜日・時間帯で明確に区切る、他科(内科・婦人科など)からの紹介ルートを整えるといった工夫により、地域での役割を果たしやすくなります。
制度対応を「縛り」ととらえるのではなく、自院がどのような外来機能を担い、どんな人を支えたいのかを明文化することが、経営の安定につながります。
2. 収益モデルを多角的にとらえる
心療内科クリニックでは、再診料中心の構造ゆえに収入の上限が見えやすいという特徴があります。
だからこそ、持続性を高めるために「収益」よりも「負担の分散」という発想が大切です。
たとえば、予約料の導入はキャンセル・無断欠席のリスクを減らし、医師とスタッフの時間を守る仕組みになります。導入の際は、患者さんへの丁寧な説明や法的確認を踏まえたうえで進めましょう。
👉 導入手順の詳細は「心療内科クリニックにおける予約料導入の流れ」で解説しています。
また、臨床心理士や公認心理師の活用も、医師一人では難しい支援を可能にします。心理検査・カウンセリングなどを通して診療の幅を広げると同時に、患者支援の質を保ちながら新しい収益構造を築くことができます。
経営上の安定とは、数字の拡大ではなく、支援を続けるための余白をつくることでもあります。
3. 医療DXをどう活用するか
AI問診や予約システム、電子カルテなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)はクリニック運営を効率化する有力な手段です。
しかし心療内科では、電話応対や面談そのものが患者さんの安心感を支える場合もあり、単純な効率化が最善とは限りません。
DX導入の目的は「人を減らす」ことではなく、「人の時間を取り戻す」こと。
オンライン問診や電子受付などを部分的に取り入れ、スタッフが「人にしかできない仕事」に集中できる環境を整えることが現実的なステップです。
制度や流行に合わせるのではなく、自院の診療方針に合った形で少しずつ整えることが重要です。
まとめ
診療報酬改定は、「変化に耐えるための試練」ではなく、「自院の理念を再確認する機会」です。
外来機能・収益モデル・DXの3点を、自院の診療方針と照らし合わせて見直すことで、制度の波に流されない経営基盤を整えることができます。
- 地域の中で自院の役割を明確にする
- 心理士や予約料などで負担を分散させる
- DXは“人の時間を取り戻す道具”として活用する
経営を見直すとき、答えは制度の中ではなく、院長ご自身の診療理念の中にあります。
本シリーズを通じて、「支える医療」の形を一緒に考えていきましょう。
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