2026年診療報酬改定に向けて|財務省提言から読み解くクリニック経営への示唆

診療報酬改定は、2年ごとに行われる“医療の価格改定”です。2025年4月、財務省の財政制度等審議会から、次回2026年改定に向けた「建議(提言)」が公表されました。
※本記事は提言段階の情報を基に、クリニック経営への示唆を整理したものです。最終的な改定内容は中医協での議論を経て決定されます。
財務省が示した主な方向性
1.医療費の伸びを抑える効率化
- 高齢化による医療費の自然増を抑制する方針。
- 人件費や物価上昇の十分な補填は見込みにくく、経営側の効率化が前提。
2.医師の働き方改革の加速
- 労働時間規制を踏まえ、タスクシフト・チーム医療を推進。
- 看護師・事務への業務移管やICT活用が前提。
3.外来機能の分化の徹底
- 紹介状なしの大病院受診に対する追加負担の一層の強化が示唆。
- 「まずは地域のかかりつけ医へ」という流れを明確化。
4.医療DXの原則化
- オンライン資格確認や電子処方箋の「原則導入」を推進。
- 経営情報(職員数・給与等)の提出は、将来的な義務化の可能性。
クリニック経営への示唆
プラス要素
- かかりつけ機能の重視により、地域クリニックの入口機能が強まり、患者流入増の可能性。
- DX導入により、受付・会計・薬剤管理などで事務効率化が期待。
マイナス要素
- システム導入やスタッフ教育に伴う初期コストの増加。
- 診療報酬が人件費上昇を十分に反映しない場合、収益圧迫のリスク。
- 経営情報提出の義務化に備え、データ整備・会計システム導入が必須に。
経営者として考えておくべき対応
- コスト管理と効率化の徹底: 薬剤・材料費の見直し、ICTツール活用、業務の標準化。
- 役割分担の再設計: タスクシフトを前提に、スタッフ教育・業務フローを再構築。
- 地域連携の強化: 病院との紹介・逆紹介、介護・在宅サービスとの連携を計画的に。
- 情報整備の先行対応: 職種別人件費・稼働・収益構造などのデータを整備し、将来の提出要件に備える。
一般の方への影響も視野に
- 大病院よりも「地域のクリニックをまず受診」という流れが強まる可能性。
- マイナンバーカードや電子処方箋の普及で利便性が向上する一方、導入スピードには医療機関間で差が生じ得る。
まとめと今後の見通し
今回の財務省提言は“方向性”の提示です。最終的な診療報酬改定は、中医協の議論を経て2026年春に確定する見込みです。
一方で、制度が固まってから準備を始めるのでは遅れやすく、早めの着手が安定経営と差別化につながります。
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まえやまだ純商店では、以下のテーマで個別無料相談を承っています。
- 診療報酬改定に向けて今から準備すべきことの整理
- DX導入や人件費高騰への対応策の検討
- 地域のかかりつけ機能をどう打ち出すかの戦略立案
「自院にどんな影響がありそうか」「何から着手すべきか」を、経営状況や地域特性を踏まえてご一緒に整理いたします。
※本記事は2025年4月に財務省が提言した『持続可能な社会保障制度の構築 (財政各論Ⅱ)』を基に作成しています。最新の公式情報は厚生労働省・中医協等の発表をご確認ください。