更新日:2026年9月14日
「求人を出しても応募が来ない」
「人手が足りないので、もう一人採用したい」
このようなとき、求人媒体を変えたり、給与や求人票の表現を見直したりすることを考えるかもしれません。
ただ、その前に確認したいのが、今回の採用で何を解決したいのかということです。
受付が忙しい、電話対応が多い、特定のスタッフに仕事が偏っているなど、「人が足りない」と感じる背景はクリニックによって異なります。背景が違えば、必要な対応も同じとは限りません。
この記事では、求人票を書く前に、採用で解決したいこと、採用以外の選択肢、任せたい役割を整理し、応募者が自院で働くかどうかを判断できる求人票につなげる考え方を紹介します。
求人票を書く前に、採用で何を解決したいかを整理する
求人票を書くことや、応募者を集めること自体が採用の目的ではありません。まず確認したいのは、人を採ることで現在のクリニックの何を変えたいのかです。
例えば「医療事務が足りない」と感じていても、その背景にはさまざまな状況があります。
- 受付や会計が集中し、患者さんを待たせている
- 電話対応が多く、ほかの業務が止まりやすい
- 特定のスタッフへ仕事が偏っている
- レセプトを担当できる人が限られている
- 院長や看護師が、本来担当しなくてもよい業務まで行っている
- 退職予定者がおり、現在の体制を維持しにくい
同じ「人手不足」でも、困っている場所が違えば必要な人材や勤務時間も変わります。
「忙しい」を具体的な業務に分ける
例えば「受付が忙しい」であれば、何曜日・何時ごろに負担が集中しているのか、受付・会計・電話のどこで滞っているのか、特定のスタッフにしかできない仕事がないかを確認します。
一日を通して人が足りないのではなく、特定の時間帯や仕事に負担が集中している場合もあります。反対に、現在の人数では無理があり、業務を見直すだけでは対応しにくい場合もあります。
最初に「誰を採るか」ではなく、「何を解決したいか」を確認します。
困っている場面や業務を具体的にすると、必要な役割も考えやすくなります。
採用後にどうなればよいかも考える
採用の目的は「一人採用できた」で終わりではありません。例えば、患者さんの待ち時間を減らす、電話と窓口を分担する、特定のスタッフへの負担を減らす、院長が診療へ集中できる時間を増やす、といった状態です。
採用後の状態まで考えると、単に「経験者がほしい」ではなく、どの仕事を担ってもらう必要があるのかが見えやすくなります。
採用を決める前に、ほかの選択肢も確認する
採用で解決したいことが見えてきたら、次に人を増やすことだけが方法なのかを確認します。採用しないほうがよいという意味ではなく、現在の人員や業務、使っている仕組みを確認したうえで、採用も含めて選択肢を比べます。
- 現在のスタッフ間で役割分担を見直す
- 一部の業務を減らす、またはやめる
- 特定の人に集中している仕事を分ける
- 予約・受付・電話対応の流れを見直す
- 現在使っているシステムの使い方を見直す
- 勤務時間やシフトを調整する
- 必要な時間帯や業務に絞って採用する
- 必要に応じて、新しいシステムや外部サービスを検討する
新しく人や仕組みを増やす前に、今あるものをどう使っているかを確認することが大切です。
例えば、電話対応が負担になっている場合
電話が多く受付業務が止まっている場合も、すぐに人員を増やすとは限りません。予約変更が多いなら予約方法を見直す、診療時間などの問い合わせが多いならホームページで案内する、院長への確認が多いなら院内の対応基準を整理する、といった方法も考えられます。
それでも人員が必要であれば、「午前中の電話対応を分担し、受付と会計を止めないために採用する」と目的を具体的にできます。
費用だけで比べない
採用には給与だけでなく、採用費や教育、シフト調整などの負担があります。一方、システムや外部サービスにも、費用のほかに設定や院内への説明、日々の運用が必要です。
費用だけでなく、現在のスタッフで無理なく運用できるか、新しい業務が増えないか、誰が管理するのか、実際に負担が減るのかも確認します。
医療DXについては、クリニックの医療DXは何から始める?|導入前に整理したいことでも整理しています。
採用ありきで考えず、まず現在の人員・業務・仕組みを確認します。
そのうえで、採用する、役割を変える、業務を減らすなど、自院で取り得る方法を比較します。
採用するなら、任せたい役割を具体的にする
採用が必要だと判断したら、次に新しく入る人に何を任せたいのかを整理します。
同じ医療事務でも、受付・会計を中心に担当するのか、電話や予約変更も担うのか、レセプトまで任せるのかで必要な経験や勤務時間は変わります。
現在の仕事を分けてみる
任せたい役割が分かりにくければ、受付、会計、電話対応、予約変更、患者情報の入力、書類準備、レセプト、備品管理など、現在の仕事を一度分けます。
そのうえで「今は誰が担当しているのか」「どこに負担が集中しているのか」「新しく入る人に何を移したいのか」を確認します。すると、単に一人増やしたいのではなく、どの仕事を担う人が必要なのかが見えやすくなります。
必要な経験を分ける
求人票の条件は、次の3つに分けて考えます。
- 入職時点でできていてほしいこと
- 経験があると望ましいこと
- 入職後に覚えてもらえばよいこと
入職直後からレセプトを一人で任せるなら経験を求める理由があります。一方、受付や会計から始め、院内で教えられるのであれば、必ずしも経験者だけに絞る必要はないかもしれません。
既存スタッフとの分担も確認する
誰が仕事を教えるのか、最初はどこまで任せるのか、判断に迷ったときは誰に確認するのかも考えます。経験者でも、電子カルテや予約方法、院内ルールはクリニックごとに異なります。
「どんな人がほしいか」より先に、「何を担ってほしいか」を整理します。
役割が分かれば、必要な経験や勤務条件も決めやすくなります。
採用基準については、自院に合う人をどう考える?|採用基準を整理するでも紹介しています。
求人票には、応募者が判断できる情報を書く
採用の目的と役割が整理できたら、求人票へ落とし込みます。大切なのは、クリニックをできるだけ良く見せることではなく、応募者が「自分はここで働けそうか」を判断できる情報を伝えることです。
抽象的な言葉を、実際の働き方へ置き換える
誰に相談できるのか、忙しいときにどう仕事を分担するのかを伝えます。
普段の退勤時刻や残業時間の目安、繁忙時の状況を示します。
どの仕事から始めるのか、誰が教えるのかを伝えます。
どのような場面で周囲との連携が必要なのかを示します。
「アットホーム」を「風通しの良い職場」に言い換えるだけでは、応募者が判断できる情報はそれほど増えません。抽象的な言葉を、実際の業務や日常の運用へ置き換えることが重要です。
仕事内容を具体的にする
「医療事務全般」とだけ書くのではなく、受付・会計、電話対応、予約変更、電子カルテへの入力、書類準備、レセプトなど、実際に担当する仕事を示します。
備品管理や診療補助などを日常的にお願いするなら、それもできる範囲で伝えます。入職後に「聞いていた仕事と違う」とならないよう、実際の仕事と求人票をできるだけ近づけます。
働くうえで知っておきたいことも伝える
午前中は患者さんが集中しやすい、電話が多い時間帯がある、受付以外の仕事も状況に応じて分担する、季節によって忙しさに差がある、といったことも応募者の判断材料になります。
これは悪いところを書くという意味ではありません。働き始めてから知るより、応募前に判断できるようにするという考え方です。
「未経験歓迎」なら、教え方も確認する
未経験者を募集するなら、最初はどの仕事から覚えるのか、誰が教えるのか、分からないときに誰へ確認できるのかも考えます。教える人や時間を確保できないなら、本当に未経験者を募集できるのかを見直す必要があります。
勤務条件と実際の運用を離しすぎない
勤務時間、休憩、休日、残業についても、制度だけでなく実際の運用を確認します。「残業ほぼなし」なら普段の退勤時刻、「シフト制」なら希望休の調整方法など、応募者の判断に影響することは求人票や面接で伝えられるようにします。
求人票は、院側が「良い職場です」と評価するための文章ではありません。
仕事内容や働き方を伝え、応募者自身が「ここで働くか」を判断するための情報にします。
面接については、お互いを確認する面接へ|面接で何を確認し、何を伝えるかでも整理しています。
求人票を書く前に確認したいこと
- 今回の採用で何を解決したいのか。
- どの時間帯・業務で負担が大きいのか。
- 現在の役割分担や業務を見直せないか。
- 採用以外の方法も比較したか。
- 採用後にどのような状態を目指すのか。
- 新しく入る人に何を任せたいのか。
- 入職時に必要な経験と、入職後に覚えられることを分けたか。
- 求人票の仕事内容と実際の仕事が合っているか。
- 応募者が働く姿を想像できる情報になっているか。
すべてを完璧に決めてから求人を出す必要はありません。ただ、「なぜ採用するのか」「何を任せたいのか」「採用後にどうなればよいのか」は説明できる状態にしておくと、その後の求人票や面接も整理しやすくなります。
まとめ|求人票を書く前に採用の前提を整理する
求人を出しても応募が来ないとき、給与や求人媒体、求人票の表現を見直すことが必要な場合もあります。ただ、その前に確認したいのが、今回の採用で何を解決したいのかです。
まず現在の人員や業務、役割分担を確認し、採用以外の方法も比較します。そのうえで採用するなら、任せたい役割と必要な経験を整理します。
求人票では、「アットホーム」「働きやすい」「未経験歓迎」といった言葉だけで終わらせず、仕事内容や働き方、入職後の教育など、応募者が自分で判断できる情報に置き換えます。
求人票を書くことから始めるのではなく、その前に採用の目的と役割を整理します。
その整理が、求人票、面接、入職後の役割分担をつなぐ土台になります。
採用ありきで考えず、自院の現状から必要な方法を選ぶことが、採用を考える最初の一歩です。
採用について、何から整理すればよいか迷っている方へ
採用では、「人を増やしたほうがよいのか」「役割分担を見直したほうがよいのか」「求人票を直したほうがよいのか」など、複数の論点が重なることがあります。
まえやまだ純商店では、まず現在の状況やこれまでの経緯、院長先生が困っていることやお考えを伺います。そのうえで、採用で何を解決したいのか、今ある人員や仕組みで見直せることはないか、採用以外にどのような選択肢があるかを整理し、自院としてどう進めるかを判断しやすい状態を整えます。
相談できる内容・進め方を見る※無料相談では、まず現在の状況やお考えを伺います。
※お話を伺ったうえで対応可否を確認し、対応可能な場合は支援内容とお見積りをご提示します。
