「求人を出しても応募が来ない」「条件を上げても定着しない」。そんな声を多く耳にします。
それでも、応募を増やす方法はあります。鍵は「求人票=手紙」という発想。
事実の羅列ではなく、採用したい“たった1人”に向けて情報を翻訳し、応募判断に必要な材料を欠けなく示す――それだけで応募行動は変わります。


求人票は「手紙」である


求人票は、院長が採用したい“たった1人”に宛てた手紙です。読み手の状況・不安・期待を想像し、「これは自分の仕事だ」と判断できる情報へ翻訳することが出発点。
同じ事実でも理解・決断できる形に直せば、応募率と面接の質は同時に上がります。


求人票が“ぼんやり”になる4つの理由と直し方


原因



  1. 誰に来てほしいか(相手像)が定まっていない

  2. ありふれた情報だけの並び(差分が見えない)

  3. 抽象語の多用(「やりがい」「アットホーム」等)

  4. 応募判断に必要な材料の不足


直し方



  • 冒頭で目的と役割を明記(例:混雑ピーク帯の受付導線を安定させる)

  • 抽象語は具体例へ置換(例:「忙しい」→「午前60名/午後30名、2診体制」)

  • 必要情報は一覧化(後述の衛生要因・動機づけ要因)


「コト」から始めて「ヒト」を決める ― 要件定義の型


採用の起点はではなくコト(解く課題)です。次の順で要件を固めます。



  1. 課題の明確化:待ち時間、電話一次解決、レセ誤り、導線 など

  2. 役割定義:受付導線最適化/電話一次対応/処置準備 等

  3. 成果基準:平均待ち時間△分短縮、一次解決率○%、誤り率○%以下

  4. 必要条件:必須・歓迎要件、研修で補う部分


例(医療事務):ピーク帯の2人体制における分担・声かけ・セルフ会計促進まで具体化。
「いつ・どこで・誰と・何を・どの水準まで」を書くと、経験者の自己判定精度が上がります。

応募を決める二本柱:衛生要因と動機づけ要因


衛生要因(欠けると応募しない最低限)


まず給与レンジは、下限と上限の幅だけでなく、昇給の考え方まで明記します。たとえば「年1回の評価に基づき改定」「役割の拡張に応じて手当を追加」など、どう変わるのかが分かる表現が有効です。


勤務時間・シフトでは、開始/終了時刻の型に加えて、残業の目安を数値で示します(例:平均○時間/月、繁忙期は+△時間)。固定勤務かシフト制か、早番・遅番の有無も最初に触れておくと、ミスマッチを抑えられます。


休日・有給は、単なる日数よりも取得実績や運用ルールを伝えます。半日単位の可否、繁忙期の取り方、学校行事への配慮など、実際に取れると想像できる文章が安心感につながります。


通勤・福利厚生は、最寄り駅からの徒歩分数だけでなく、車通勤の可否・駐車場の有無、交通費の上限、各種手当や社会保険の取り扱いを簡潔に。制服・シューズ支給、ワクチン接種補助なども「あるなら書く」が原則です。


動機づけ要因(あると応募が増える魅力)



  • 役割の意味(ミッション)と任される範囲

  • 成長機会(教育・評価・キャリア例)

  • チームの価値観・院長の考え方

  • 手応えの可視化(待ち時間・一次解決率などの見える化)


コツ:衛生要因は欠けなく具体に、動機づけ要因は短い物語で伝える。

経験者に刺さる“リアル”、未経験者に届く“ドリーム”



  • 経験者向け(リアル)

    • 1日の外来規模、ピーク運用、担当範囲、使用システム、評価観点を具体に。

    • 「この条件なら戦力になれる」が判断できる材料を提示。



  • 未経験者向け(ドリーム)

    • 仕事の楽しさ、身につく力、サポート体制、到達イメージ(3か月/6か月)。

    • 不安を減らす習熟ステップ(例:週次OJT→月次振り返り)。




仕上げチェック:これだけは外さない10項目



  1. 冒頭で募集の目的と役割を明示

  2. 成果基準(待ち時間/一次解決率など)を提示

  3. 業務の具体(1日の流れ・ピーク運用)を記載

  4. 必須/歓迎要件研修で補える範囲を区別

  5. 衛生要因を欠けなく具体に

  6. 動機づけ要因を短い物語で

  7. 抽象語を具体例に置換

  8. 写真や図で職場の雰囲気を補足

  9. 選考スピード(連絡目安・所要日数)を明記

  10. 応募方法が1クリックで分かる導線


まとめ


求人票は“手紙”です。誰に何を託すのかを「コト」から言語化し、経験者には“リアル”、未経験者には“ドリーム”を届ける。
まずは上の10項目で既存の求人票を点検し、抜けを埋めてください。修正だけで応募率は着実に上がります。


最後に――求人票を整えることは、単なる書類づくりではありません。どんな人と、どんなチームをつくりたいのか。
院長自身の言葉を整える時間です。その言葉が、次の“たった1人”に届きます。




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