採用が難しくなっているいま、面接は「選ぶ場」ではなく、お互いを確認する大切な機会になっています。
応募者の見極めだけでなく、「ここで働く自分」をイメージしてもらう設計が欠かせません。
本記事では、面接の準備から質問の型、評価の仕組み、そして承諾率を高める伝え方まで、現場でそのまま使える形で整理します。
面接の目的は「見極め」と「動機形成」
かつての面接は採用側が応募者を選ぶ「選抜の場」でした。現在は、応募者が複数の職場を比較し、理念や働き方への共感で決める時代です。
だからこそ面接官は、見極め(適性の確認)と動機形成(納得感の醸成)という二つの役割を担う必要があります。
- 見極め: 実務スキル・再現性・価値観の適合・リスクの有無
- 動機形成: 任される範囲・成長機会・チームの価値観・働く手応えの共有
質問は「評価のための手段」であると同時に、応募者自身が自分の強みや方向性を再確認する時間にもなります。
面接フローの全体像(準備→導入→質問→評価→連絡)
1)準備:目的を共有し、質問を設計する
- 募集の意図・役割・期待成果をチームで明文化する
- 質問項目と評価シートを事前に共有し、担当を分担する
- 応募書類を読み込み、経験や志向から仮説を立てる
- 案内メールには道順・服装・所要時間などを丁寧に明記する
準備段階で「何を知りたいか」を整理しておくことで、面接中の質問がぶれず、評価の精度も上がります。
2)導入:3分で伝える「働くイメージ」
冒頭で、診療体制・患者層・チーム構成・院の価値観を3分程度で簡潔に紹介します。
そのうえで「今日はお互いを理解し合う時間にできればと思います」と添えるだけで、応募者の緊張が和らぎ、会話が自然になります。
3)質問:行動事実に基づいて掘り下げる(SAR)
質問は、SAR(Situation → Action → Result)の順に聞くのが基本です。「どんな状況で」「どう行動し」「どうなったか」を具体的に尋ね、経験の再現性を見極めます。
- 行動事実: 直近6か月で最も忙しかった場面と、その対応を教えてください。
- 価値観 : 患者さんとの意見が異なったとき、どのように折り合いをつけましたか。
- 対応力 : 受付が滞留し電話も鳴っているとき、何から手をつけますか。
- 学習力 : 最近新しく覚えた業務は?どのように習得しましたか。
- 協働性 : 医師・看護師・事務の連携で心がけていることは?
4)評価:基準を明文化し、感覚に頼らない
- 面接官ごとに評価シートを記入し、最後に集約する(同調バイアス防止)
- 役割に直結する基準×行動例で評価する(例:報連相の具体性、患者対応の優先判断)
- 懸念点は「印象」ではなく「事実」として記録する
評価シートを整備するだけで、「感覚で決める採用」から一歩抜け出せます。
5)合否連絡:スピードと誠実さが承諾率を左右する
- スピード: 当日〜翌営業日を目安に連絡
- 温度感 : 良かった点を一言添える(例:「患者さんへの声かけが自然でした」)
- 透明性 : 就業条件・評価・期待役割を簡潔に再提示し、質疑の窓口を明確に
- 必要に応じて、見学・短時間トライアルを案内する
迅速かつ丁寧な対応は、応募者に「この職場は誠実だ」という印象を与え、承諾率を大きく高めます。
評価シートの作り方
- 評価項目: 役割適合/行動様式(SAR)/コミュニケーション/学習性/価値観
- 段階設定: 1〜4段階(未充足〜充足)
- 行動例 : 各段階の具体例を1行で明記
- 重みづけ: 役割に応じて配点を調整(例:受付職は「優先判断」に重み)
- バイアス対策: 親近感や初頭効果を避け、全員で共有
公正採用とハラスメント防止
- 質問は職務適性に関わる内容に限定する
- 私生活・思想信条など業務無関係な質問は禁止
- 圧迫的態度や冗談めいた発言も避ける
- 面接記録の保管・アクセス権限を明確にしておく
面接は「評価の場」であると同時に、安心の土台を築く対話です。手続きの丁寧さが、評判と承諾率を高めます。
面接運用チェックリスト(最終確認)
- 募集の意図・役割・期待成果を面接官で共有した
- 評価シート(基準×段階×行動例)を準備した
- 導入3分プレゼンを用意した
- 質問はSAR型で構成し、行動事実を確認した
- 個別記入→集約でバイアスを防止した
- 合否連絡は翌営業日までに対応した
- 見学・トライアルを選択肢として提示した
- 応募者の不安点を明文化し、対応策を共有した
- 面接ログを蓄積し、次回に反映した
まとめ
面接は「相互理解を設計する経営行為」です。
見極めと動機形成という両輪を整えるだけで、採用の安定感は大きく変わります。
まずは次回の面接から、質問の型と評価シートの整備を始めてみてください。
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