採用が思うように進まないのは「運の悪さ」ではなく、市場の構造です。だからこそ、採れない前提で設計したほうがぶれません。本稿は、要件定義を「人」ではなく「コト(解く課題)」から始め、業務分解・短時間設計・DX併用で戦える土台をつくるための考え方を整理します。
なぜ「採れない前提」が合理的か
- 需給のミスマッチ:医療・福祉分野は恒常的な人手不足。母集団が小さい。
- 候補者の選択肢が増えた:勤務地・働き方・雇用形態の選択肢が広い。
- 判断材料の非対称性:求職者は具体情報を求めるが、多くの求人票は抽象的。
結論:採用“だけ”に依存せず、業務設計×採用×育成を同時に回す。
自院が採用を難しくしている3要因
- 理想像の肥大化:万能人材を想定して母集団をさらに狭めている。
- 情報不足:応募判断に必要な具体(外来規模・役割・評価基準)が足りない。
- 遅い選考:連絡が遅く、他院に決められてしまう。
- 対策:要件を「コト」に分解し、必要情報を開示、連絡の目安(当日〜翌営業日)を決めて守る。
「人」ではなく「コト」で要件定義する
募集の起点を「人」から「コト(解く課題)」へ。役割と成果が先、人材像は後から整合させます。
- 課題の特定:待ち時間、電話滞留、レセ誤り、動線の乱れ 等
- 役割の設計:受付導線最適化/電話一次対応/処置準備/会計精度向上
- 成果の指標:平均待ち時間△分短縮など
- 補完の計画:研修で補う領域、OJT担当、到達目安(3か月/6か月)
採れない時の実務:業務分解・短時間設計・DX併用
- 業務分解:受付・会計・電話・処置準備を分け、属人化を外す。
- 短時間設計:ピーク帯の2〜4時間限定枠や週2〜3日で募集し、母集団を広げる。
- DX併用:Web問診、セルフレジ、携帯へのショートメッセージでのリマインド、自動音声案内(番号選択式)の一次対応で人的負荷を下げる。
- 教育の標準化:業務手順書(動画/チェックリスト)で未経験者も立ち上げ可能に。
意思決定の基準:かけた費用と手間に見合うかを見える化
「採る/採らない」を感覚で決めない。簡易で良いので数式にします(元が取れるかどうかを数で確認)。
- 効果:待ち時間短縮による再来や口コミ、レセ誤りの減少、追加枠の売上 など
- 費用・手間:給与+採用費+教育にかかる時間+管理の手間(− IT導入で減る分)
- 代替案比較:短時間雇用・外注・IT活用の三案比較で最適を選ぶ。
チェックリスト
- 採用の目的が課題(コト)で表現されている
- 役割と成果指標が明文化されている
- 短時間/限定枠など母集団を広げる工夫がある
- IT・外注・配置転換の代替案が比較されている
- 求人票は応募判断情報を満たす(衛生要因/動機づけ要因)
- 面接は見極め+動機形成の両輪で設計
- 合否連絡の目安(当日〜翌営業日)がある
- 教育の標準化(手順書/チェックリスト/到達目安)がある
- 定期的に指標を見直し、求人票・運用に反映している
まとめ
「採れたら回る」ではなく、「採れなくても回る」を土台に設計すると、採用が“上振れ”した時に一気に伸びます。コト起点の要件定義→短時間設計→IT/外注→面接標準化を小さく回し、実装していきましょう。
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