2024年診療報酬改定で“何が変わり”、院内では“何を変えるか”|クリニック実務への影響
2024年の診療報酬改定は、点数の増減そのものよりも「医療を支える仕組みをどう変えるか」に重点が置かれました。 本記事は、院長先生が“経営の専門知識がなくても”読み進められるように、現場で何が変わり、院内で何を変えていくかを 考えの整理の視点でまとめたものです。
この記事で整うこと:
・2024年改定の本質をつかむ/・現場で起きた変化を把握する/・人への投資・DX・地域連携を今日から動かす一歩に変える
今回の改定が示したのは、人への投資(賃上げ・働き方)、データを活かす医療(DX)、そして 地域完結型医療への移行です。制度という「点」を追うだけでなく、院内の仕組みを「線」でつなぎ、続く運営へ舵を切ることが求められています。
1. 改定の背景とメッセージ ― 「続く医療」を支える前提づくり
物価・人件費の上昇、医師の時間外労働規制、デジタル化の遅れ──これらに対し、国は「人を守り、仕組みを整え、データで磨く」方向を明確にしました。 クリニックにとっては“人・仕組み・数字”をつなげる経営が必須に。
- スタッフの賃上げと評価・運用(賃上げの一過性化を避ける)
- 医師の時間外上限に対応した体制の再設計
- オンライン資格確認・電子処方箋・外来データ加算等の運用まで含めたDX
- 病院/地域の役割分担を前提にした患者案内と連携の見える化
まずやる一歩:「人・仕組み・数字」の現状を書き出し、止まっている箇所を1つだけ特定する(朝礼メモ1枚)。
2. 外来機能分化 ― 「まず地域へ」を患者にも分かる形に
紹介状なし受診の負担増により、「専門=病院」「日常=地域」の役割は一層明確に。クリニックには、 地域で完結する診療の設計と、かかりつけ医としての発信が求められます。
- HP/院内掲示で紹介・逆紹介の流れを図解し、患者の不安を減らす
- 「まず地域の先生に」相談できる電話・Web予約・LINEの入口を一本化
- 病院側の診療情報提供書に対する返信(逆紹介)を定型化
まずやる一歩:HPに「紹介・逆紹介の流れ(図)」を追加し、受付でも同じ図を提示。
3. ベースアップ評価料 ― 賃上げを「仕組み」に変える
申請して終わりではありません。給与規程・評価・勤怠運用まで含めて整え、スタッフが納得感を持てるプロセスにしてこそ定着します。
- 昇給ルール(期・幅・評価観点)を文書化し、年1回の面談で確認
- 36協定/勤怠のルールと実運用の差を点検(残業の発生理由にメス)
- 賃金台帳・勤怠データ・面談記録をセットで保全
- 「賃上げ=コスト」ではなく、採用・定着・紹介採用に効く投資として設計
まずやる一歩:昇給ルールの草案をA4一枚で作り、次回ミーティングで合意形成。
4. 医療DX ― 「導入」で止めず、回収まで設計する
外来データ加算・電子処方箋など、評価の対象は“データを活かす運用”にあります。機器導入だけでは成果が出ません。 重要なのはROI(費用対効果)設計と、現場の使い方の標準化です。
- 受付→診察→会計の待ち時間KPIを計測(週次で10症例サンプル)
- 電子カルテ・レセコンの更新計画に教育時間を必ず含める
- マイナ受付のエラー種別を3分類し、一次対応手順をカード化
ROIの見方:例)電子カルテ更新200万円 → 待ち時間短縮+再来率改善等で年間効果80万円なら2.5年で回収。 導入時点で「何を、どれだけ、いつまでに」回収するかを決め、四半期で見直す。
まずやる一歩:「待ち時間の基準表(受付・診察・会計)」を作り、1週間だけ計測して可視化。
5. よくある“思い込み”を外す
思い込み①:「ベースアップ評価料は一時的な手当」
→ 実態は継続賃上げを促す枠組み。規程・評価・運用が揃って初めて機能します。
思い込み②:「DXを入れれば自動的に効率化」
→ 変えるのは道具ではなく使い方。教育と運用ルールが成果を左右します。
思い込み③:「地域連携は病院主導」
→ クリニック発の見える化(HP・掲示・連携表)が紹介と信頼を生みます。
まずやる一歩:上の3項のうち、院内で最も効きそうな1つを選び、今月の目標に設定。
6. 2025年以降に向けて ― 「点」ではなく「線」でつなぐ
次の改定を見据えるほど、単発対応では限界があります。入口・人・仕組み・数字・連携を線でつなぎ、 細く長く強い運営へ。
- 入口:初診導線(Web/LINE/電話)を一本化し、「初めての方へ」を最新化
- 人:評価制度・シフト最適化で働きやすさを上げる
- 仕組み:機器・保守・教育を費用×効果で管理
- 数字:1件あたり収益/検査コスト/時間当たり診療量を月次ダッシュボード化
- 連携:紹介・逆紹介・地域連携をHPと掲示で見える化
まずやる一歩:5項目のうち今月の重点1つを決め、15分ミーティングでアクション1本に落とす。
まとめ:2024年改定は、クリニックに「信頼される運営」へ踏み出すヒントを示しました。 制度の点を追うだけでなく、人・仕組み・数字を線でつなぐことで、変化の時代を静かに強く乗り切れます。
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