クリニック開業・経営の伴走支援|まえやまだ純商店

クリニック開業・経営コラム

地域包括ケア時代に生き残る ― かかりつけ医機能と持続可能なクリニック経営(クリニック経営の基本視点シリーズ第4回)


はじめに




診療報酬改定のたびに「かかりつけ医機能」や「地域包括ケア」といった言葉が取り上げられています。これらは単なる制度上の要件ではなく、クリニックが今後も地域で必要とされ続けるために欠かせない視点です。


少子高齢化の進行や患者ニーズの多様化により、クリニックの経営環境は大きく変わりつつあります。こうした時代に持続可能な経営を実現するには、制度を「負担」ではなく「地域での役割を示すもの」として捉えることが重要です。




制度が示す方向性


かかりつけ医機能



  • 院内掲示による情報提供

  • 24時間対応体制の確保(一部の加算で求められる要件)

  • 他の医療機関や介護事業者との連携


これらは単に加算を得るための条件ではなく、地域で信頼されるクリニックの姿を制度として形にしたものです。


地域包括ケア


地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるように、医療・介護・生活支援が一体となる仕組みです。診療所はその一端を担い、病院中心から「地域全体で支える」体制への移行が求められています。


制度改定の方向性を読み解けば、社会がクリニックに期待する役割が明確に見えてきます。




経営に直結する理由



  • 患者数の安定:かかりつけ医として選ばれることで、継続的な来院につながる

  • 紹介・信頼の増加:地域包括ケアに参画することで、他の医療機関や介護事業者との関係が深まり、紹介や相談が増える

  • 体制整備=経営基盤:制度に沿った体制は、加算取得のためだけでなく、クリニックの持続可能性を支える基盤になる


つまり制度対応は、単なる「加算対策」ではなく「経営戦略」そのものなのです。




実務的な対応ポイント



  • 院内掲示・ホームページで情報を発信:かかりつけ医機能を果たしていることを、患者さんにわかりやすく伝える。

  • 地域連携の強化:介護事業者や訪問看護と顔の見える関係を築き、24時間対応や在宅医療を分担。

  • 役割分担の明確化:在宅と外来を無理なく両立させるため、地域全体の仕組みの中で自院の役割を位置づける。




院長先生ご自身やご家族のQOLを踏まえた判断を


かかりつけ医機能の要件に、必ずしも24時間対応が含まれているわけではありません。在宅医療や地域包括診療加算など、一部の加算では24時間対応体制が求められますが、すべてのクリニックに義務づけられているわけではないのです。


24時間対応を掲げることは、患者さんにとって安心感につながる一方で、院長先生ご自身やご家族に大きな負担がかかります。電話がいつ鳴るかわからない状況が続けば、睡眠や家族との時間が犠牲になり、結果として院長先生の健康やモチベーションも損なわれかねません。


大切なのは「すべてを自院で抱え込む」ことではなく、地域の他の医療機関や訪問看護、介護事業者と連携し、役割を分担することです。院長先生やご家族のQOLを守りながら、地域全体で患者さんを支える仕組みに参加することが、持続可能な経営につながります。


無理に24時間体制を取る必要はありません。制度対応は「加算を取り切ること」が目的ではなく、無理なく継続できる範囲で経営を安定させることが本来の目的であることを、改めて強調しておきたいと思います。




当社の視点


診療報酬改定は負担と感じられる一方で、クリニックの方向性を整理する良い機会でもあります。当社「まえやまだ純商店」では、院長先生が主体的に判断できる伴走型支援を掲げ、制度をどう経営に取り込み、無理のない形で実行していくかをサポートしています。


「どこまで対応するか」「どこを割り切るか」を院長先生ご自身が判断できるよう、情報整理と仕組み化の部分を一緒に考えるのが私たちの役割です。




まとめ


地域包括ケアは避けられない社会の流れであり、診療報酬改定はその流れを加速させています。


かかりつけ医機能をどう位置づけ、地域包括ケアにどう参画するかは、クリニックが生き残り、持続可能な経営を実現するための必須条件です。


制度対応を「負担」と捉えるのではなく「地域で必要とされ続けるためのチャンス」として活かしつつ、院長先生やご家族の生活の質も大切にしながら判断していくことが、これからのクリニック経営に求められる視点です。



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