すべてを抱え込まない医療へ ― 地域包括ケアと“続けられる”クリニック経営
「かかりつけ医機能」や「地域包括ケア」という言葉は、診療報酬改定のたびに登場します。しかし、これらは単なる制度上の要件ではなく、“これからのクリニックが地域でどんな役割を果たすか”を問いかけるキーワードでもあります。
高齢化の進行や患者ニーズの多様化により、クリニックの経営環境は確実に変化しています。制度を「負担」としてではなく、“地域に必要とされ続けるための道しるべ”として読み解くことが、これからの持続可能な経営には欠かせません。
制度が示す方向性を「読み解く」
たとえば、かかりつけ医機能では次のような項目が求められます。
- 院内掲示やホームページによる情報提供
- 必要に応じた24時間対応体制
- 他の医療機関・介護事業者との連携
これらは「加算を取るための条件」ではなく、地域で信頼される医療機関の姿を制度として可視化したものです。 同様に、地域包括ケアシステムは「病院中心」から「地域全体で支える医療」への転換を促しています。 社会がクリニックに求めるのは、“日常の医療を支える存在”としての機能なのです。
制度対応=経営戦略になる理由
制度を理解し、自院の仕組みに組み込むことは、結果として経営の安定につながります。
- 継続的な患者関係:かかりつけ医として選ばれることで、信頼と来院の継続が生まれる
- 紹介・相談の増加:地域包括ケアに参画することで、他職種からの紹介や相談が増える
- 体制整備=経営基盤:制度に沿った体制は、加算取得だけでなくクリニックの土台を強化する
つまり「制度対応」とは、加算対策ではなく、経営の方向性そのものを整える行為なのです。
“すべてを抱え込まない”という選択
かかりつけ医機能の中でも、24時間対応が求められるのは一部の加算に限られます。 24時間体制を掲げることで患者さんの安心感は得られますが、院長ご自身やご家族の生活に大きな負担をかけるリスクもあります。
大切なのは、「すべてを自院で完結させる」ことではなく、地域の他職種と役割を分担すること。 訪問看護や介護事業所との連携を前提に、無理のない範囲で体制を整えることが、結果的に長く続けられる医療につながります。
制度への対応は、「取り切る」ことではなく、“続けられる仕組みを選び取る”こと。 院長先生やご家族のQOLを守ることも、経営判断の大切な一部です。
考えを整理する機会としての「制度改定」
診療報酬改定は、経営の方向性を見直す良いタイミングでもあります。 「何をやるか」だけでなく、「どこまでやらないか」を整理することで、より主体的な経営判断が可能になります。
まえやまだ純商店では、院長先生ご自身が納得して判断できるように、考えの整理と実行の仕組みづくりを伴走しています。 制度を“読む”のではなく、“どう活かすか”を一緒に考える──それが私たちの役割です。
まとめ
地域包括ケアは避けられない流れであり、かかりつけ医機能はその中核を担う仕組みです。 制度を「負担」としてではなく、「自院の在り方を映す鏡」として捉えることで、無理なく続く経営が見えてきます。
そして、その選択に正解はありません。 地域や家族、そして院長先生ご自身が「これなら続けられる」と思える形を見つけることこそが、持続可能なクリニック経営の第一歩です。