「医療」と「医業」の違いを意識すると、開業の準備が変わる

クリニック開業を検討している先生へ――経験を言語化してお伝えします。
「医療」と「医業」。どちらも耳なじみのある言葉ですが、実際にクリニックを開業しようとすると、この違いがとても大切になってきます。ここでは、私(まえやまだ純商店)が現場で見てきたことを踏まえて、やわらかく整理してみます。
医療は“専門職としての使命”
医療は、患者さんの診療や健康を守るための行為そのものです。勤務医として働いている間は、ここに集中できる環境にある先生も多いと思います。医学的専門性を磨き、目の前の患者さんに最善を尽くす――まさに医師としての核となる部分です。
医業は“経営活動を伴う医療”
一方で、開業をすると医業=経営活動が必ず付いてきます。診療報酬で得た収入をどう管理するか、スタッフに安心して働いてもらえる職場をどう整えるか、制度改定や地域の変化にどう対応するか。医業は、医療を継続して地域に届けていくための仕組みづくりと言えるかもしれません。
現場で見てきたこと(伴走の経験より)
これまでコンサルタントとして、多くの開業準備や経営の相談に立ち会ってきました。そのなかで印象的なのは、医療と医業をしっかり切り分けられた先生ほど、長く安定して地域に根付いているということです。逆に「医療だけを頑張ればなんとかなる」と考えてしまうと、採用や資金繰りなどで思わぬ壁にぶつかるケースも少なくありません。
両立のコツ:すべてを一人で抱えない
大切なのは、経営の部分を「自分が把握できる形」にしておくこと。完璧を目指す必要はありません。次の3つだけでも十分に前進します。
- 経営の方向性を一言で言語化:「何のために、誰のために、どんな価値を届けるか」を短く書き出す。
- 数字の見える化:月次の収支・患者数・人件費など、最低限の指標を“同じフォーマット”で確認する。
- 信頼できる相談相手:専門外のことは、壁打ちできる相手を早めに確保する。
一歩ずつ。準備は“できることから”で大丈夫
開業は、医師としての新しいチャレンジであり、同時に経営者になることでもあります。不安を感じるのは自然なこと。だからこそ、まずは「医療」と「医業」の違いを整理し、できることから一歩ずつ積み上げていきましょう。
私たちもこれまでの経験から、先生方が医療に専念できるよう、経営の部分を一緒に考えてきました。壁打ちのように気軽に話していただくだけでも、次の一歩が見えることがあります。
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