クリニック開業に欠かせない「事業計画書」と「趣意書」|融資審査を突破するための必須準備
                はじめに|数字と理念の“両輪”が、融資と開業後の安定をつくる
開業目前で、金融機関への説明準備に手が止まっていませんか。
「事業計画書」=数字で示す根拠と、「趣意書」=理念で語る理由は、 単なる形式的な提出物ではなく、開業後の運営を支える土台です。
本記事では、両者を行き来しながら整える実務ステップとチェックポイントを、医療経営の視点で整理します。
1.事業計画書とは何か?(数字で示す“根拠”)
事業計画書は、融資審査で最も重視される資料です。単なる試算ではなく、経営方針を数字に翻訳するプロセスと捉えましょう。
✅ 実務ステップ(作成の流れ)
- 必要資金の洗い出し:内装・医療機器・人件費・運転資金・広告費をリスト化
 - 資金調達の設計:自己資金/借入の比率、返済年数と元利金の月次負担
 - 損益予測(12か月):診療単価×想定患者数から月次売上を算出、季節変動も反映
 - 感度分析:患者数▲10%・単価▲5%でも黒字維持かを確認(家賃・人件費の固定費を意識)
 
💬 チェックポイント
- 「感覚」ではなく診療圏データ・同規模院の実勢で裏づけられているか
 - 固定費(家賃・人件費)と可変費の切り分けができているか
 - 設備投資の回収期間(ROI)を概算でも示せているか
 
2.趣意書とは何か?(理念で伝える“理由”)
事業計画書が「どう実現するか」を語るなら、趣意書は「なぜ実現するのか」を伝えます。金融機関にとっては、 数字の前提にある地域性・役割・価値観が明確なほど、計画全体の再現性を評価しやすくなります。
✅ 趣意書で押さえる3つの柱
- なぜこの地域なのか:人口構成、患者ニーズ、既存医療資源との補完関係
 - 誰に何を届けるのか:年齢層・疾患像・生活背景まで具体化(ペルソナ例示)
 - どう貢献するのか:診療理念、スタッフ育成、地域連携・情報発信の方針
 
文章のコツ:「競合を倒す」ではなく、地域で担う役割の違いを語る。
「自院が埋めるギャップ」を明確にすると、計画の妥当性が伝わります。
3.「数字」と「理念」をつなげる(両輪の設計)
別々に作ると矛盾が生まれます。趣意書と事業計画書は往復して整合させましょう。
✅ 一貫性チェックリスト
- 趣意書の診療方針が、計画書の人員配置・時間割・物品費に反映されている
 - 診療圏データが患者数見込みに組み込まれている(非現実的な外来数になっていない)
 - 在宅・健診・自費などの柱を掲げた場合、費用・導線・広報計画に織り込まれている
 
たとえば「地域包括ケアに貢献」と掲げるなら、訪問枠・担当者・連携先まで数字と運用に落とし込みます。
4.融資審査で見られる3つの視点(金融機関の評価軸)
担当者は体裁よりも、再現性のある経営力を見ています。
- 数字の現実性:単価・患者数・費用水準に過大な期待がないか、根拠は何か
 - 地域への必然性:「この地域で開業する理由」がデータで説明できるか
 - 継続可能性:借入返済後も利益が残る構造か(固定費耐性・人件費計画)
 
数字の正しさに加え、考え方の整理度(説明の一貫性)が評価されます。
5.まずやること|“15分×3本”の下準備
- 診療圏の要点まとめ(A4・1枚):人口構成/既存資源/未充足ニーズ
 - ペルソナ草案(A4・1枚):対象患者の生活像・受診導線・来院理由
 - 12か月簡易PL(A4・1枚):売上・人件費・家賃・その他固定費+感度分析
 
3枚が揃えば、趣意書と事業計画書をブレずに肉付けできます。
おわりに|数字=根拠、理念=理由。行き来が“説得力”になる
片方だけでは不十分です。数字(どう実現するか)と理念(なぜ実現するのか)を往復し、 自院に合う納得解へ。
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