療養担当規則はクリニック経営の原点|院長が押さえる実務ポイント

保険診療を行う医療機関が守るべきルール「療養担当規則」。単なる法令ではなく、クリニック経営の“原点”です。本稿では、院長がすぐ運用に落とせる要点とチェックリストをまとめました。
なぜ「療養担当規則」が原点なのか
療養担当規則は、診療の方法、患者対応、処方、広告など、日々の業務の基本を定めています。これを軽視すると、診療報酬の返還や行政処分、地域からの信頼喪失といった重大リスクに直結します。一方、規則を理解し運用すれば、経営の土台が安定し、診療に集中できる環境が整います。
経営者として押さえるべき条文ポイント
1. 患者への説明と同意
患者に十分な説明を行い、同意の上で診療することが求められます。
- 実務対応:口頭だけでなく書面・院内掲示・説明ツールで記録を残す。説明テンプレートを院内で統一。
2. 処方日数と処方箋の取扱い
漫然とした長期処方や、自院への誘導につながる行為は禁止です。
- 実務対応:診療科・疾患別の処方日数基準を明文化。処方箋の有効期限・交付ルールを月次で点検。
3. 不当な広告・勧誘の禁止
「特別に良い治療」「過度な割引」など、誤解を招く表現は禁止。
- 実務対応:HP・SNS・院内掲示を定期監査。外部制作物も最終責任は院長にある前提でチェックリスト化。
規則違反がもたらす経営リスク
- 返還請求:不適切請求は数百万円規模になることも
- 行政処分:最悪の場合は保険医療機関指定の取消し
- 信用失墜:地域の信頼低下は集患に直結
規則遵守は、法令対応にとどまらずリスクマネジメントそのものです。
月次チェックリスト(院長・事務長向け)
- 院内掲示は最新ルールに合致しているか
- 処方日数・処方箋交付のフローに抜けがないか
- 患者説明は記録として保存できているか
- HP・SNSの文言に誤認・誘引表現がないか(第三者チェック)
三方よしの経営と療養担当規則
規則が求めるのは「患者のため」「制度のため」「医師自身のため」のバランス。これは三方よしの考え方と一致します。規則遵守は、地域から信頼されるクリニックづくりと持続可能な経営の起点です。
基本を理解してこそ発展できる
「集患施策」「DX導入」「自由診療展開」など発展的な取り組みは、保険診療の基本を正しく理解・遵守してこそ真価を発揮します。基礎が不十分なままの応用は長続きしません。まずは日々の土台を確実に守る——そこから新しい戦略を積み上げましょう。
まとめ
クリニック経営の原点に立ち返るとき、まず見直すべきは療養担当規則です。規則を理解し、院内マニュアルやスタッフ研修、月次チェックに落とし込むことが安定経営の第一歩。基本を押さえてこそ、発展が成果につながる——この順序を大切にしましょう。
関連記事
・なぜ開業医は経営者意識を持ちにくいのか(クリニック経営の基本視点シリーズ第1回)
・なぜ今の診療報酬制度は経営視点を求めるのか(クリニック経営の基本視点シリーズ第2回)
・クリニック経営に「正解」はあるのか?~経営者としての視点を持つために~
・診療報酬改定は「国からのメッセージ」—2026年と超高齢社会に向けて開業医が備えるべきこと
・恐怖に振り回されない、変化を受け入れる医院経営へ