はじめに
診療報酬改定があると、「点数が上がった」「点数が下がった」といった金額の変化だけに注目されがちです。 しかし、診療報酬は単なる収益の増減を示すものではありません。そこには、 国が医療機関に担ってほしい役割や、医療提供体制の方向性が色濃く反映されています。
つまり、診療報酬の変化を「国からのメッセージ」として受け止め、経営判断に活かす視点こそが、 これからのクリニック経営に求められる戦略眼です。
診療報酬は「政策のサイン」
診療報酬の変化は、国の方針を読み取る格好の材料です。たとえば新型コロナ流行時の「感染症対策実施加算」では、
- 「発熱患者を地域で受け入れてください」
- 「検査体制を整えてください」
- 「地域でのトリアージに協力してください」
といった明確なメッセージがありました。診療報酬は単に収益を左右するだけでなく、 医療機関に求められる社会的な役割を示すシグナルだと言えます。
経営者としての視点が欠かせない
開業医は「医師」であると同時に「経営者」です。診療の質や安全性の確保は当然の使命ですが、 同時にクリニックを持続可能に経営し、地域で必要とされる存在であり続けることも重要です。
そのためには、診療報酬改定を単なる収入の増減としてではなく、経営判断の指針として読み解く必要があります。 ある検査や外来管理が強化されたなら「今後注力してほしい分野」、点数が引き下げられたなら「効率化や統合を促す方向性」と捉えられます。 この視点を持てるかどうかが、数年先のクリニックの立ち位置を大きく変えます。
「お金の話」を避けない勇気
医療の世界では、「お金の話は下品だ」と感じる先生も少なくありません。 しかし、診療報酬の理解は単なる利益追求ではなく、地域医療を持続させるための現実的な手段です。 理想と数字は相反しません。数字を正しく読み解くことで初めて、理想を長期的に実現できます。
お金の話を避けるのではなく、数字を医療継続のための言語として捉えることが、開業医には求められています。
2026年改定と超高齢社会への対応
2026年の診療報酬改定では、超高齢社会を見据えた制度設計がさらに進むと予想されます。特に、
- 生活習慣病の管理(CKDなど慢性疾患の継続管理)
- ポリファーマシー対策(多剤併用の是正)
といった取り組みが重視されるでしょう。高齢化に伴い、慢性疾患の増加や多剤処方による副作用リスクは深刻化します。 こうした課題に対応できるクリニックを後押しする方向で、診療報酬は設計されていくと考えられます。
つまり、今からCKDやポリファーマシーへの取り組みを進めることは、単なる加算対策ではなく、 未来のクリニック経営における競争力の源泉になります。
まとめ
診療報酬改定は、開業医にとって「国からの経営メッセージ」です。いまこそ、
- 点数の変化を政策的意図として読み解く力を養う
- CKD・ポリファーマシーなどの取り組みを戦略的に導入する
ことが、持続可能なクリニック経営に直結します。
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