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クリニック開業・経営コラム

物価高と新規患者減少|急性疾患・慢性疾患における受診行動の変化と改善策





2025年6月ごろ、取引のある内科クリニックの院長先生から「既存の患者さんは維持できています。ただ、新規の患者さんが明らかに減少しているのです」という声を伺いました。これは一院の問題にとどまらず、物価高や社会の意識変化を背景に、多くの医療機関で起きている可能性があります。


患者心理の変化


急性疾患にはお金を払う


発熱や胃腸炎、外傷などは「今すぐ治したい」という切迫感があり、ためらわず受診されます。受診後に症状が改善しやすく、「支払った価値」を実感しやすいのが特徴です。


慢性疾患は後回しにされやすい


高血圧や糖尿病などは初期症状が乏しく、「今月は様子を見よう」となりがち。毎月の薬代・診察料が“固定費”として心理的負担になり、物価高のなかで節約対象と見なされやすい構造があります。


数字で見る患者負担



  • 生活習慣病(高血圧・糖尿病など)は、年間約6万〜10万円(自己負担3割換算)の自己負担になるケース。

  • 糖尿病:外来+薬代で月5,000〜8,000円前後

  • 急性疾患(例:インフル・胃腸炎)は、1回3,000〜5,000円程度


「一度きりの出費」は受け入れやすい一方、「毎月の固定費」は負担に感じられやすいのが現実です。


改善策の方向性


1. 急性疾患を“入口”として強化



  • HP・院内掲示で「発熱外来」「花粉症」「胃腸炎」などの対応を明確に打ち出す。

  • 季節疾患(冬:インフル、春:花粉、夏:熱中症)に合わせて情報を更新し、「困ったときに頼れる」認知を獲得。


2. 慢性疾患への導線づくり



  • 急性受診のタイミングで血圧測定やHbA1cチェックを提案し、潜在的リスクに気づいてもらう。

  • 地域健康チェックデー(自由診療)の開催:

    • 例:血圧測定は無料/HbA1c+脂質セット1,000円などの低額設定。

    • 特定健診の対象外(30〜40代や健診機会の少ない層)を明確にターゲティング。

    • 実施前に医師会へ「地域の健康啓発活動」として趣旨説明し、行政健診と競合しない設計を共有。




3. 費用面は“情報提供”として安全に伝える



法令(医療広告ガイドライン)に配慮し、経済的利益を断定・誇張せず、患者さんの選択肢として情報提供に徹するのが安全です。



  • ジェネリック医薬品の選択肢:新薬と同成分で薬剤費が低く設定され、結果として2〜3割下がる場合があります。処方時に相談可能である旨を掲示。

  • 公的制度の案内:高額療養費制度により月ごとの自己負担額に上限があり、医療費控除なども利用可能。

  • 通院間隔の調整:病状が安定している場合は医師の判断で通院間隔を調整できることを案内(ガイドラインに準拠)。



4. 外部導線(検索・口コミ)を強化



  • MEOで「内科」「発熱」「糖尿病」などのキーワード整備・情報充実。

  • note/SNSで「物価高でも健康を守る工夫」を生活者目線で発信し、検索・口コミからの流入を増やす。


経営視点でのまとめ



  • 物価高のもと、受診行動は「急性=優先」「慢性=後回し」になりやすい。

  • 急性を入口に新規を獲得し、慢性へ橋渡しする導線を院内外で設計する。

  • 費用は“情報提供”の姿勢で安心感を醸成し、継続受診の心理ハードルを下げる。


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(注)本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診療判断・法的助言を行うものではありません。実施内容は所管ガイドライン・自治体ルール・医師会の運用実態をご確認のうえでご判断ください。


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