開業医が備えておきたい「就業不能リスク」とGLTD(団体長期障害所得補償保険)

クリニックを開業すると、医療機器や内装工事、スタッフの採用などに多額の資金が必要になります。ローンを組み、長期的に返済していく先生も多いでしょう。そんなときに気になるのが「もし自分が病気やケガで診療できなくなったら?」というリスクです。勤務医時代と違い、開業医は社会保険の傷病手当金がなく、収入が途絶えると返済や生活費の負担がそのまま残ります。本記事では、開業医に必要な就業不能リスク対策とGLTDの役割をわかりやすく解説します。
開業医には傷病手当がない
勤務医は社会保険により、4日以上休むと最長1年半にわたり標準報酬日額の3分の2が支給されます。しかし、開業医が加入する国民健康保険にはこの制度がありません。
つまり、病気やケガで診療できなくなった場合、収入はゼロでも支出は続くという厳しい現実に直面します。
就業不能で必要になる資金の目安
院長が診療を休むと、代診の先生への依頼料、スタッフの給与、クリニックの家賃や光熱費といった固定費は毎月かかります。一方で診療収入は大きく減少します。
長期休診に備えるためには、少なくとも3〜6か月分の売上額に相当する資金を確保しておくのが目安とされています。準備がなければ、クリニック経営が行き詰まるリスクもあります。
GLTD(団体長期障害所得補償保険)とは
GLTDはGroup Long Term Disability insuranceの略で、直訳すると「団体長期障害保険」。日本では「団体長期障害所得補償保険」と呼ばれています。
簡単に言うと、病気やケガで長期間働けなくなったときに、収入の一部を補ってくれる保険です。勤務医向けの短期的な所得補償保険とは違い、開業医に必要な「長期」にわたる補償が特徴です。
なぜ「長期」の補償が必要なのか
- 長期返済に備える:開業時の借入は数千万円規模となり、返済が10年以上続くのが一般的。働けなくなっても返済義務は消えません。
- 固定費の継続:スタッフ給与・家賃・光熱費などの固定費は毎月発生します。
- 生活の安定:院長自身と家族の生活費を守るには、長期の所得補償が安心につながります。
保険を選ぶときのポイント
1. 免責期間(待機期間)
休業開始から保険金が支払われるまでの期間です。商品によって60日〜365日と差があります。休業中の資金繰りをシミュレーションし、無理のない期間を設定しましょう。
2. 保険金額の妥当性
生活費・スタッフ給与・固定費をふまえ、必要額を逆算して補償額を決めることが大切です。足りなければ意味がなく、過剰なら保険料過多になります。
保険以外の備えも検討を
十分な資産を保有している場合は、保険に加入しない選択肢もあります。年齢・家族構成・健康状態などをふまえ、保険と資産のバランスで備えることが重要です。
まとめ
勤務医から開業医になると、新しいリスクが生まれます。開業準備の早い段階から備えを整えることで、診療に安心して取り組める環境をつくることができます。
「自分にとって必要な補償はどのくらいなのか?」と迷われる方は、まずは無料相談をご利用ください。状況に合わせた備えを一緒に考えていきましょう。
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