クリニック経営とリスク管理|感染症・災害・クレームに備える「止まらないクリニック」のつくり方
感染症・災害・クレーム・情報漏洩――突然のトラブルがクリニック経営を揺るがす時代。
本記事では、院長先生が「現実的にできる備え」を整理し、持続可能な経営のために何を優先すべきかを考えます。
はじめに
新型コロナウイルスや度重なる自然災害を経て、医療機関の「止まらない仕組み」づくりが改めて注目されています。クリニックは地域にとって欠かせないインフラであり、診療が止まることは地域全体の生活に直結します。
「停電で電子カルテが使えず、外来が混乱した」「SNSでの書き込みが思わぬ影響を与えた」――そんな経験をされた先生も少なくありません。
リスク管理は医療安全の延長ではなく、経営そのものの課題です。本記事では、クリニックに起こりうるリスクと、その備え方を経営視点で整理します。
1. クリニックが直面する4つのリスク
① 感染症
- インフルエンザやコロナ流行時に外来が発熱患者であふれる
- スタッフが同時に感染し、シフトが組めなくなる
- 予約システムが未整備で、電話対応が追いつかない
② 自然災害
- 地震や台風による停電で診療機器・電子カルテが使えなくなる
- 豪雨で通院不能患者が続出し、外来数が激減
- 駐車場冠水などにより休診せざるを得ないケース
③ クレーム・トラブル
- 「待ち時間が長い」と受付で声を荒らげる患者対応
- 行き違いがSNSで拡散し、地域の評判に影響
- 記録不足により説明責任を果たしにくい場面
④ 情報セキュリティ
- 電子カルテやクラウドの障害で診療履歴が一時的に閲覧不可
- 予約システムの不具合によるダブルブッキング
- メール誤送信や端末紛失による個人情報漏洩
2. リスクが経営に与える影響
リスクは突発的なトラブルにとどまりません。影響は中長期に及び、経営基盤そのものを揺るがします。
- 診療中断が続けば、患者さんが他院へ流出
- スタッフの不安が高まり、離職につながる
- 苦情や口コミが地域に広まり、信頼回復に時間がかかる
こうした“見えにくい損失”こそ、院長が早期に把握し、予防的に対応すべき経営テーマです。
3. 今日からできる実務的な備え
感染症対策
- 発熱患者専用の動線・診察室を設ける
- オンライン診療・電話再診を活用し、来院集中を分散
- マスク・防護具・検査キットなどの在庫を定期チェック
災害対応
- 停電時の初動対応をA4一枚にまとめて掲示
- 発電機・ポータブル電源を備え、電子カルテを最低限維持
- 地域の病院や薬局と「災害時連携」を事前に確認
クレーム対応
- 苦情対応フローを全員で共有し、「否定より受け止め」を徹底
- トラブルは必ず記録し、翌日のミーティングで振り返る
- 院長が出るタイミングを事前に決めておく
情報セキュリティ
- 毎日自動バックアップを取得し、オフサイト保管も併用
- ID・パスワードの更新ルールを統一(共有IDは原則禁止)
- 業者と年1回の点検契約を締結
4. 「完璧」より「続けられる仕組み」を
リスク管理に絶対の正解はありません。重要なのは「自院に合った方法」を選び、それを続けられる形にすることです。
例えば発熱対応では、
- 動線分離で院内診療を継続する
- 近隣医療機関と役割分担する
- オンライン診療を積極活用する
――いずれも正解です。地域性・人員体制・建物構造など、条件によって最適解は異なります。
災害対応でも、非常用電源を備える院もあれば、地域の連携協定でカバーする院もあります。
大切なのは「全部やる」ではなく「続けられることを選ぶ」視点です。
5. 経営者としての視点を
リスク対策は「コスト」ではなく経営への投資です。
- 発熱外来整備=診療を止めないための投資
- 災害備蓄=信頼を守るための投資
- クレーム対応体制=スタッフを守るための投資
- セキュリティ対策=電子カルテを安心して使うための投資
外部業者や地域連携を活用すれば、院長先生やご家族の負担を減らしつつ、持続可能な経営体制を整えられます。
まえやまだ純商店では、「考えの整理」から始める伴走型支援を通じて、リスク管理を経営の一部として無理なく取り込むお手伝いをしています。
まとめ
リスクは「起こるかもしれない」ではなく、「いつか必ず起こる」もの。だからこそ、恐れすぎず、慌てず、できる範囲から整えていくことが大切です。
感染症・災害・クレーム・情報セキュリティ――これらへの備えは、医療安全と経営安定の両輪です。
自院らしい“守り方”を定め、安心して診療を続けられる体制を築いていきましょう。