【開業を考えている先生へ】医師偏在是正の流れとクリニック開業への影響|「どこで開業するか」を考える前に知っておきたいこと
更新日:2025年12月25日(2025年12月24日通達の内容を追記)
はじめに|制度の動きを知ることは、開業計画を整えること
近年、国は医師の地域や診療科の偏りを見直すための取り組みを段階的に進めてきました。 2025年には 「医療法の一部を改正する法律」が成立し、医師偏在是正の流れが法制度として位置づけられています。
そして2025年12月24日の通達(令和8年度診療報酬改定の枠組み)では、医師偏在対策が「診療報酬上の具体的措置」として明確に書き込まれた点が、開業を検討する先生にとって重要な材料になりました。
一方で、制度の文章だけを追い続けると、「結局、自分の開業計画にどう落とし込めばよいのか」が見えにくくなりがちです。
本記事では、医師偏在是正の流れと今回の通達の要点をやさしく整理しつつ、 「どの地域で、どのような医療を届けるか」を考えるうえで、開業準備の段階から意識しておきたいポイントをまとめます。
1.国が進める「医師偏在是正」とは
医師の配置バランスを整えるための取り組み
大きな方向性として、国は「医師が不足している地域・診療科」と「医師が集中している地域」との差を縮めることを目指しています。具体的には、次のような流れがあります。
- 医学部の地域枠入試の恒久化:
卒業後に一定期間、特定地域で勤務することを前提にした枠を設け、地域で働く医師を計画的に確保していく方向です。 - 「重点医師偏在対策支援区域」の設定:
医師が不足している地域を明確にし、その区域での開業や承継に対して自治体が支援を行う動きが広がっています。 - 医療計画との連動強化:
地域医療構想・医療計画の中で、「どの地域に、どのくらいの医師・医療機能が必要か」を具体的に描き、その実現に向けた施策を進める流れです。
診療報酬の面でも“方向性”は以前から議論されていました
医師偏在是正は、診療報酬(点数)の在り方とも結びついて検討されてきました。中医協や財政審の議論では、例えば次のような方向性が取り上げられてきました。
- 医師が多い地域では減算、少ない地域では加算など、地域差を踏まえた評価を検討すること。
- 「地域別単価」など、地域ごとの医療提供体制を反映した評価方法の是非を議論すること。
ただ、ここまでは「検討されている」という段階の話として受け止められやすく、 開業準備に直接結びつけるのが難しい面がありました。
その意味で、次の章の2025年12月24日通達は、開業準備に直結し得る“文章”が明記されたことがポイントです。
制度の理解だけでは、開業計画に落とし込みづらい場面もあります。まずは考えを言葉にする時間をつくり、準備の優先順位を一緒に整えていきましょう。
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2.2025年12月24日通達で“何が明文化されたか”
令和8年度診療報酬改定について(2025年12月24日通達)では、医師偏在対策について次の方針が示されました。
今回の要点(開業準備に関わるところ)
- 外来医師過多区域において、無床診療所の新規開業者が 都道府県知事からの要請に従わない場合、診療報酬上の減算措置を講じる。
- さらに、医師多数区域での“追加のディスインセンティブ”や、 重点医師偏在対策支援区域における医師手当事業の財源確保については、 令和10年度診療報酬改定で結論を得る。
「場所選び」に“コスト(減算の可能性)”が乗る時代へ
ここで大事なのは、「都市部は開業できない」という単純な話ではない点です。
ただし、少なくとも外来医師過多区域での新規開業は、都道府県の要請との関係で、 診療報酬(収益)の側にリスクが乗り得る、という前提に変わっていきます。
「制度が変わる」より前に、「計画の筋肉」をつける
減算の具体的な中身(どの程度・どの条件で、など)は今後の議論に委ねられます。
だからこそ、開業準備の時点で必要なのは、答えの暗記よりも、状況が変わっても崩れにくい計画の骨格です。
- なぜ、その地域で開業するのか(医療の役割/患者層/連携先/地域課題)
- もし前提が変わったら(制度・採用・資金・競合)どこをどう動かすか
- 収益の柱を一つにしない(慢性疾患・健診・在宅・予防・地域連携などの組み合わせ)
※通達全体の整理や、今回の文言が示す「構造」については、こちらの記事でも補足しています。
(通達を受けた新規記事)令和8年度診療報酬改定(2025年12月24日通達)と医師偏在対策のポイント
3.開業準備で意識しておきたいこと(通達を踏まえた更新)
① 開業場所の選び方:「制度」+「自分の医療」+「要請への対応」をセットで考える
これからは、開業場所を考えるときに「人口・競合・導線」だけでなく、区域指定や行政とのコミュニケーションも含めて設計していく必要があります。
- 候補地がどの区域に該当する可能性があるか(外来医師過多区域/医師多数区域/支援区域など)を早めに確認する。
- 「要請が来たら従う/従わない」の二択ではなく、要請の意図を理解し、計画を“言語化”して協議できる状態をつくる。
(=“行政対応が上手い”より、計画が筋が通っていることが強い) - 医師多数地域での開業戦略を整理した記事 なども参考にしながら、「あえて医師多数地域で勝負する」のか、「支援が厚いエリアを選ぶ」のかを検討する。
② 収益の見通しは「点数」より「構造」で守る
減算の議論が現実味を帯びると、どうしても「点数がどうなるか」に意識が寄りがちです。
ただし、院長がコントロールできるのは点数ではなく、経営の構造です。
- 生活習慣病・健診・在宅など、地域に合った複数の収益の柱を組み合わせる。
- 「何科か」だけでなく、「どの患者層と、どの頻度で関わるか」という視点で外来構成を考える。
- 医療費動向から逆算する経営判断 のように、数字の流れから経営を組み立てる視点も持っておく。
③ 人材の確保と育成:「人が集まる場所」を前提にしない
医師偏在対策は「医師だけの話」に見えますが、開業後に効いてくるのは多くの場合スタッフ採用と定着です。
どの地域でも人材確保が簡単ではない前提で、少人数で回る仕組みを先につくるのが安全です。
- 採用の前提を見直す記事 でも触れているように、採用の「前提」を整え、「辞めにくい職場」「続けやすい職場」をどう設計するかを早めに考える。
- 開業直後は少人数運営になりやすい前提で、業務フローと教育のしやすさを設計する。
- 自治体や支援機関の研修・支援メニューがあれば、開業前から情報を押さえる。
4.準備段階で確認したいポイント(チェックリスト:通達反映版)
以下は、医師偏在是正の流れと、2025年12月24日通達(減算方針の明記)も踏まえ、 開業準備の実務に置き換えたチェックリストです。
- 区域・制度の整理:候補地が該当し得る区域(過多/多数/支援)や自治体支援を一覧化する。
- 行政との対話準備:計画の「地域で担う役割」「提供体制」「連携」を短く説明できる文章にしておく。
- 診療圏の把握:人口構成・競合状況・地域の医療ニーズを、数字と現場感覚の両面から確認する。
- 経営モデルの設計:慢性疾患・健診・在宅・予防など、地域に合った複数の柱を検討する。
- スタッフ計画:採用条件・教育体制・勤続しやすい勤務シフトなど、開業直後からの体制をイメージする。
- 発信と関係づくり:ホームページ等で安心を可視化しつつ、地域の医療機関・介護事業所・行政との連携の糸口を探る。
おわりに|「どこで開業するか」より先に、「地域で何を担うか」を言葉にする
2025年12月24日通達で、医師偏在対策は「方針」から診療報酬上の措置(減算の可能性)へと一歩踏み込みました。
だからこそ、開業を考える先生にとって大切なのは、恐れることではなく、計画の前提を更新し、意思決定の精度を上げることです。
「どの地域で、どんな医療を届けたいか」。
その考えを言葉にして整理することが、制度の変化に振り回されずに、自分らしい開業を実現するための第一歩になります。
必要であれば、 自由開業制見直しと医療法改正を整理した記事 もあわせて読みながら、理解をつなげてみてください。
参考資料
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