開業準備やクリニック経営で、 「自院ではどうするか」が決めにくくなったときに。 院長の代わりに決めるのではなく、 現状・論点・優先順位・次の一歩を整理します。

クリニック開業・経営コラム

【開業を考えている先生へ】医師偏在是正の流れとクリニック開業への影響|「どこで開業するか」を考える前に知っておきたいこと

更新日:2026年6月14日
※本記事は、医師偏在是正の流れとクリニック開業への影響について、2025年12月に成立した医療法改正および2026年度診療報酬改定の内容を踏まえて加筆修正したものです。

開業準備・地域選定

クリニック開業では、「どこで開業するか」が大きなテーマになります。

人口、競合、駅からの距離、駐車場、物件条件、診療圏。これらはもちろん重要です。

ただ、医師偏在是正や外来医師過多区域の議論が進む中で、これからは「その地域で、自院は何を担うのか」をあわせて整理する必要が高まっています。

結論から言えば、開業場所を考える前に、自院が地域で担う役割を言葉にしておくことが大切です。

制度の変化は、単に「開業が難しくなるかどうか」だけの話ではありません。地域医療との関係、行政から求められる役割、開業後の体制づくりにも関わる話です。

医師偏在是正とは何か

医師偏在是正とは、医師が不足している地域や診療科と、医師が集中している地域との差を小さくするための取り組みです。

国はこれまで、地域医療構想、医療計画、外来医療計画、医学部地域枠、医師少数区域への支援などを通じて、医師の配置バランスを整える方向で検討を進めてきました。

近年は、外来医療についても、地域によって医療提供体制に差があることが課題として扱われています。

その流れの中で、クリニック開業についても、単に「自由に場所を選べるか」だけではなく、地域で不足している医療機能と、自院が担う役割をどう考えるかが問われるようになっています。

ここで大切なこと

医師偏在是正は、開業を一律に止める話ではありません。ただし、これから開業を考える先生にとっては、地域選定や診療体制を考えるうえで無視できない前提になりつつあります。

外来医師過多区域とクリニック開業への影響

2025年の医療法改正では、外来医師過多区域における無床診療所の新規開設について、事前届出や地域で不足する医療機能への協力要請などが整理されました。

外来医師過多区域とは、外来医師偏在指標や可住地面積あたりの診療所数などを踏まえ、外来医療が特に過密とされる区域です。

この区域で新たに無床診療所を開設する場合、開設前の届出や、地域で不足する医療機能への対応について確認される可能性があります。

また、要請に応じない場合には、保険医療機関の指定期間短縮や、一定の診療報酬上の評価・届出への影響が生じ得る方向も示されています。

「都市部では開業できない」という話ではない

ここで注意したいのは、外来医師過多区域の議論は、都市部での開業を一律に禁止する話ではないという点です。

ただし、開業予定地がどのような区域に該当し得るのか、その地域でどのような医療機能が求められているのかを、開業準備の早い段階で確認しておく必要があります。

制度の詳細は、医療法改正と自由開業制見直しを整理した記事でも整理しています。

開業場所を決める前に整理したい3つの視点

1.なぜその地域で開業したいのか

開業場所を考えるとき、人口や競合、物件条件だけを見ると、判断が数字に偏りやすくなります。

もちろん診療圏調査は大切です。ただ、それだけで開業後の経営が続くわけではありません。

なぜその地域なのか。どのような患者さんを支えたいのか。地域の中でどのような医療機能を担いたいのか。

この問いを整理しておくことで、物件選定、診療科目、診療時間、スタッフ体制、広報の方向性にも一貫性が出やすくなります。

2.地域で不足している医療機能は何か

地域によって、必要とされる医療機能は異なります。

たとえば、慢性疾患管理、在宅医療、初期救急、予防接種、学校医、産業医、医師不足地域への協力など、求められる役割は一つではありません。

すべてを引き受ける必要はありませんが、自院としてどこまでなら継続して担えるのかを考えておくことは重要です。

医師多数地域での開業については、医師多数地域での開業戦略を整理した記事でも補足しています。

3.制度対応と経営の持続性を両立できるか

制度への対応を考えるとき、要件を満たせるかどうかだけに目が向きがちです。

しかし、実際のクリニック経営では、算定できるかどうか以上に、院内で無理なく続けられるかが重要です。

たとえば、地域から求められる役割に応えるとしても、スタッフ体制、診療時間、院長の負担、採用状況、資金計画とのバランスを考える必要があります。

一般論として正しい選択と、自院で続けられる選択が一致しないこともあります。

だからこそ、開業前の段階で、制度・地域ニーズ・自院の体制を並べて整理しておくことが大切です。

開業準備で確認したいチェックリスト

医師偏在是正や外来医師過多区域の流れを踏まえると、開業準備では次のような点を早めに確認しておきたいところです。

  1. 候補地の区域整理
    外来医師過多区域、外来医師多数区域、医師少数区域、重点医師偏在対策支援区域などに該当する可能性を確認する。
  2. 地域で不足している医療機能
    初期救急、在宅医療、公衆衛生、慢性疾患管理など、地域で求められている機能を確認する。
  3. 自院が担える役割
    院長の専門性、診療方針、スタッフ体制、診療時間を踏まえて、継続して担える範囲を考える。
  4. 行政・地域との関係
    都道府県、保健所、医師会、近隣医療機関、介護事業所などとの関係づくりを想定する。
  5. 収益構造と運用負荷
    診療報酬、患者数、スタッフ人件費、医療DX、施設基準対応などを、開業後も続けられる形で整理する。
  6. 自院の方針の言語化
    なぜその地域で開業するのか、どの患者さんを支えたいのかを、短く説明できるようにしておく。

これらは、すべてを完璧に決めるためのものではありません。

むしろ、開業準備の途中で判断が止まったときに、どこを見直せばよいかを確認するための材料です。

まとめ|「どこで開業するか」の前に、「地域で何を担うか」を考える

医師偏在是正や外来医師過多区域の議論は、クリニック開業を一律に否定するものではありません。

しかし、開業予定地を選ぶときに、制度や地域医療との関係を切り離して考えることは難しくなっています。

これからの開業準備では、人口、競合、物件条件だけでなく、その地域で自院がどのような役割を担うのかを整理することが大切です。

なぜその場所なのか。どの患者さんを支えたいのか。地域から求められる役割に、どこまで継続して応えられるのか。

これらを言葉にしておくことは、制度対応のためだけではありません。

開業後に判断がぶれにくくなり、スタッフや地域、患者さんに対して、自院の方向性を説明しやすくするための土台にもなります。

開業準備で判断が止まったときに

開業準備では、物件、資金計画、採用、システム選定、制度対応、地域での役割など、複数の論点が重なります。

情報を集めても、「自院ではどう考えるか」で判断が止まることがあります。

まえやまだ純商店では、院長の代わりに結論を決めるのではなく、現状・論点・優先順位・次の一歩を整理し、納得して判断しやすい状態をつくる支援を行っています。

相談内容がきれいにまとまっていない段階でも問題ありません。何から考えるべきかを整理するところから始めることもできます。

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※判断整理(初回)の開始前に、事前確認オンライン面談を行います。

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