【開業を考えている先生へ】医師偏在是正の流れとクリニック開業への影響|「どこで開業するか」を考える前に知っておきたいこと
はじめに|制度の動きを知ることは、開業計画を整えること
近年、国は医師の地域や診療科の偏りを見直すための取り組みを進めています。2024年末には「総合的対策パッケージ」が公表され、今後は開業支援や診療報酬の考え方にも影響が及ぶ見通しです。
こうした制度の流れは、「どの地域で、どのような医療を届けるか」を考えるうえで欠かせない前提になります。本記事では背景をやさしく整理し、開業準備の段階で意識しておきたいポイントをまとめます。
1.国が進める「医師偏在是正」とは
医師の配置バランスを整えるための取り組み
- 医学部の地域枠入試を恒久化し、地域で働く医師を計画的に確保していく方向です。
- 「重点医師偏在対策支援区域」を設け、対象地域での開業や承継に対して自治体が支援を行う動きが広がっています。
診療報酬の面でも変化が検討されています
- 医師が多い地域では減算、少ない地域では加算など、地域差を踏まえた評価の導入が議論されています。
- まだ途中段階ですが、2026年度改定のテーマとして重要視されています。
制度の理解だけでは、開業計画に落とし込みづらい場面もあります。まずは考えを言葉にする時間をつくり、準備の優先順位を一緒に整えていきましょう。
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2.2026年度改定で注目される背景
- 中医協の検討項目:「医師偏在への対応」が明記され、改定の方向性のひとつに位置づけられています。
- 厚労省の対策パッケージ:「診療報酬における医師偏在への配慮」を明文化しています。
- 財政審の提言:「地域別単価」「過剰地域での減算」など、地域ごとの差を考慮した案が示されています。
いずれも目的は、全国どこでも必要な医療が受けられる体制を守ることにあります。そのため今後の制度は、地域の状況をより強く反映していく見通しです。
3.開業準備で意識しておきたいこと
① 開業場所の選び方
自治体の支援制度や区域指定の有無は、補助や評価に影響する場合があります。都市部では差別化や受診導線の設計、地方では地域ニーズと支援策の活用が鍵になります。
② 収益の見通しを考える
地域差を反映した点数が導入されると、単位点の違いが収益に波及する可能性があります。開業地の特性を理解し、現実的な想定で計画しておくことが大切です。
③ 人材の確保と育成
偏在対策は、スタッフ採用や教育の支援にも広がる可能性があります。どの地域でも人材確保は課題のため、働きやすく続けやすい職場づくりを早めに検討しておくと安心です。
4.準備段階で確認したいポイント(チェックリスト)
以下は、厚労省・中医協・財政審などの方向性を整理し、開業準備の実務に置き換えたものです。制度だけでなく、地域の実情や運営の視点もあわせて検討しましょう。
- 支援制度の整理:候補地域の助成・補助・区域指定を一覧化する。
- 診療圏の把握:人口構成・競合状況・地域の医療ニーズを具体的に確認する。
- 経営モデルの設計:慢性疾患・健診・在宅など、地域に合った複数の柱を検討する。
- スタッフ計画:採用条件や教育体制を早めに整え、定着まで見据える。
- 発信と関係づくり:地域住民や医療機関とのつながりを、情報発信や連携の中で育てる。
おわりに|「地域で何を担うか」を言葉にする
医師偏在是正は、医療体制を守るための大きな流れです。開業を考える先生にとっては、地域選定や経営設計を見直すきっかけにもなります。
「どの地域で、どんな医療を届けたいか」。その考えを言葉にして整理することが、安定した開業につながっていきます。
参考資料
- 厚生労働省「医師偏在対策に関する総合的な対策パッケージ」(2024年)
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会(中医協)関連資料」――令和8年度改定に向けた検討項目
- 財務省「財政制度等審議会 医療関係資料」――地域差調整に関する提言
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