更新日:2026年7月26日

開業準備中・検討中Q&A

「候補地の周辺には、同じ診療科のクリニックが多い。この場所で開業しても大丈夫だろうか」

患者さんの来院が多く見込める立地に魅力を感じる一方、競合の多さを見て判断に迷う先生もいると思います。

競合が多い地域では、診療内容や診療時間、設備、予約システムなどで違いをつくろうと考えがちです。しかし、患者数を増やすことだけを優先すると、院長やスタッフの負担が増え、開業後に続けにくくなることがあります。

結論から言えば、競合クリニックが多いからといって、開業できないとは限りません。

競合数だけでなく、患者層、地域で不足している医療、自院が提供できる診療、院内体制、患者さんから選ばれる理由を整理することが大切です。

他院と違うことを探す前に、自院が誰に何を提供し、どの体制なら続けられるかを考える必要があります。

競合クリニックが多くても開業できないとは限らない

候補地の周辺に同じ診療科が多いと、開業を見送るべきか迷います。しかし、医療機関の数だけで判断することはできません。

同じ診療科でも、患者層、主な疾患、診療時間、予約方法、通院手段、地域で担う役割は異なります。内科でも、高齢者の慢性疾患、働く世代、発熱対応、特定疾患、訪問診療など、実際の役割には違いがあります。

確認したいのは競合数だけでなく、地域にどのような医療があり、患者さんが何を理由に医療機関を選んでいるかです。

競合が多いことは、患者ニーズがあることの表れでもあります。

ただし、患者ニーズがあることと、自院が選ばれ続けることは別です。地域にある医療と自院が担える役割を重ねて考えます。

なお、「競合が多い地域」と、制度上の「外来医師過多区域」や「医師多数地域」は同じ意味ではありません。

まず「競合」をどの範囲で見るか整理する

競合調査では、近隣の同じ診療科を数えるだけでなく、患者さんが実際に何と比較するかを見ます。

同じ診療科だけが競合とは限らない

生活習慣病なら内科、循環器内科、糖尿病内科、小児の皮膚症状なら小児科と皮膚科など、複数の診療科が選択肢になります。病院外来、休日診療、オンライン診療も比較対象になり得ます。

通院動線と受診しやすさも確認する

徒歩・自動車・通勤途中など、生活圏によって比較される医療機関は変わります。また、予約の取りやすさ、診療内容の分かりやすさ、待ち時間、家族を連れて行きやすいかといった受診体験も判断材料です。

競合調査で確認したいこと

  • 主な患者層、疾患、診療内容
  • 診療時間、休診日、予約方法
  • 駅や駐車場からの通いやすさ
  • 病院・介護事業所との連携
  • 患者さんが不便に感じていそうな点

ただし、競合の弱い部分をすべて埋めようとすると、自院の運用が複雑になり、負担が増えることがあります。

差別化より先に整理したい5つの判断

差別化は目的ではありません。地域に必要とされ、無理なく続けられた結果として、他院との違いが生まれる方が自然です。

1.どの患者さんに継続して来てもらいたいか

年齢、疾患、生活背景、通院方法、受診時間を具体化すると、必要な診療体制や立地条件が見えます。「誰でも診ます」だけでは、設備、人員、情報発信の優先順位を決めにくくなります。

2.地域にある医療と、不足している医療は何か

他院の強みだけでなく、新患予約が取りにくい、働く世代が通いにくい、日常管理の担い手が少ないなど、満たされていない部分も確認します。ただし、不足しているからといって、すべてを自院が担う必要はありません。

3.院長が長く続けたい診療と一致しているか

患者数や収益性だけでなく、今後も専門性を深めたいか、毎日の診療として続けたいか、院長自身の働き方と両立できるかを確認します。

4.スタッフと院内体制で無理なく提供できるか

診療内容を広げると、人員、教育、設備、予約管理、説明業務も増えます。どの職種が何を担うか、採用可能な人材で回せるか、院長に判断が集中しないかまで考えます。

5.患者さんが選ぶ理由を受診前から受診後まで整えられるか

診療内容だけでなく、予約、受付、説明、会計、次回受診までの分かりやすさも選ばれる理由になります。高価な設備を増やすことだけが差別化ではありません。

差別化が院内の負担になっていないか

診療時間を広げる、診療内容を増やす、システムを導入する、個別要望へ対応するといった施策は、患者さんには便利でも、採用や教育、院長の勤務時間、院内ルールを複雑にすることがあります。

差別化は、追加することだけではありません。

患者層を明確にする、説明を分かりやすくする、診療の流れを整える、地域で担う範囲を決めることも自院らしさにつながります。

開業時に必要なものと、患者さんや院内の状況を見て後から追加するものを分ける方が、続けられる運用につながります。

競合が多い地域では、なぜ判断が難しくなるのか

競合調査や診療圏調査をしても、開業場所や診療方針を簡単に決められないのは、複数の条件が重なるからです。

  • 患者数は見込めるが、賃料や人件費が高い
  • 競合は少ないが、将来人口も少ない
  • 地域ニーズはあるが、人材を採用しにくい
  • 診療時間を延ばすと、院長の負担が増える
  • 専門性を打ち出すと、対象患者が限られる

患者さんの来院が多く見込める立地の場合

候補地は人の往来が多く、一定の患者数も見込めます。一方で、同じ診療科が複数あり、賃料や人件費も高い状況です。

診療時間を広げたりWeb予約を導入したりすれば選ばれる可能性はありますが、採用や院長の勤務時間への負担も増えます。また、主な患者層によって、診療時間、検査体制、予約方法、必要な人員も変わります。

このような場合は、「競合が多いから見送る」「来院が見込めるから進める」とすぐに決めず、患者層、診療時間、人員体制、固定費といったハード面と、院長が提供したい医療や地域で担いたい役割というソフト面の両方から考え、自院として何を優先し、何をあとで決めるかを整理します。

さらに情報を集めるだけでは決まりません。候補地、患者層、診療内容、資金、人員、院長が続けたい医療を並べ、何を優先し、何を見送るかを考えます。

正解を探すより、判断の前提をそろえることが先です。

何を大切にし、どの条件なら続けられるかを言葉にすると、自院として判断しやすくなります。

判断の前提が整うと、診療圏調査会社、不動産会社、税理士、医療機器会社などへ何を確認するかも明確になり、比較や打ち合わせに使う時間を減らしやすくなります。

開業前に整理したい判断の順番

  1. 候補地と患者層を整理する
    年齢、生活動線、通院方法、昼間人口、将来人口を確認します。
  2. 競合が担う役割を確認する
    診療科名だけでなく、患者層、診療内容、時間、予約方法、連携先を見ます。
  3. 地域で不足している医療を確認する
    患者さん、病院、介護事業所から見た不足を考えます。
  4. 自院が担える範囲を決める
    専門性、診療方針、人員、設備、資金を踏まえます。
  5. 今行うことと、後で見直すことを分ける
    最初からすべてを導入せず、段階を分けます。
  6. 確認する数字と時期を決める
    患者数、待ち時間、電話件数、残業、再診状況などを絞ります。

この順番なら、「競合が多いからやめる」「差別化できそうだから進める」という二択ではなく、自院にとって許容できる条件を考えやすくなります。

まとめ|他院との違いより、続けられる理由をつくる

競合が多いからといって、必ずしも開業を見送る必要はありません。ただし、人口が多い、来院が見込めるという理由だけで決めるのも危険です。

確認したいのは、患者層、地域にある医療、院長が続けたい診療、院内体制、患者さんが通い続けやすい体験です。

自院が地域で何を担い、誰にどのような医療を提供し、どの体制なら続けられるかを整理することが、開業後の経営と運用の土台になります。

競合情報を集めても決めきれないときは、情報不足ではなく、複数の条件を並べて優先順位を決める段階かもしれません。

競合を調べても、開業方針が決めきれないときに

候補地、患者層、診療内容、採用、資金、地域で担う役割などを並べ、自院では何を優先するかを考える必要があります。

まえやまだ純商店では、院長の代わりに結論を決めるのではなく、現状・背景・論点・選択肢・優先順位・次の一歩を整理し、自院として判断しやすい状態を整えます。

候補地を比較する判断基準、追加で確認する内容、今決めることと後で決めることを整理し、判断理由を持って次の一手を決めやすくします。

状況確認面談(無料)について見る

※状況確認面談は、現在の状況と相談内容を確認し、支援が合いそうかを双方で確かめる場です。無料で開業場所の選定や解決策を提示する面談ではありません。

まえやまだ純商店 前山田純

この記事を書いた人

前山田 純まえやまだ純商店

2011年から医療機関の開業・経営支援に従事。院長が一人では整理しきれない経営上の考えや課題について、現状や背景、論点、選択肢を整理し、自院として納得して判断しやすい状態づくりを支援しています。

前山田純のプロフィールを見る →