最終更新日:2026年10月19日
開業準備中・検討中Q&A「候補地の周辺には、 同じ診療科のクリニックが多い。 この場所で開業しても大丈夫だろうか」
患者さんの来院が多く見込める立地に 魅力を感じる一方、 競合の多さを見て 判断に迷う先生もいると思います。
競合が多い地域では、 診療内容や診療時間、 設備、予約システムなどで 違いをつくろうと考えがちです。
しかし、 患者数を増やすことだけを優先すると、 院長やスタッフの負担が増え、 開業後に続けにくくなることがあります。
結論から言えば、 競合クリニックが多いからといって、 開業できないとは限りません。
競合数だけでなく、 患者層、地域にある医療、 自院が提供できる診療、 資金やスタッフ体制、 患者さんが通い続けやすい環境を 整理することが大切です。
他院と違うことを探す前に、 自院が誰に何を提供し、 どのような体制なら続けられるか を考える必要があります。
競合クリニックが多くても開業できないとは限らない
候補地の周辺に同じ診療科が多いと、 開業を見送るべきか迷います。
しかし、 医療機関の数だけで判断することはできません。
同じ診療科でも、 患者層、主な疾患、 診療時間、予約方法、 通院手段、地域で担う役割は異なります。
例えば内科でも、 高齢者の慢性疾患、 働く世代の診療、 発熱への対応、 特定の疾患の専門診療、 訪問診療など、 実際に担っている役割には違いがあります。
確認したいのは競合数だけでなく、 地域にどのような医療があり、 患者さんがどのような理由で 医療機関を選んでいるのか です。
競合が多いことと、 自院に十分な患者数が見込めることは別です。
競合が多い地域には、 一定の患者ニーズが存在する場合があります。
ただし、 既存の医療機関で需要が満たされている場合もあり、 これから開業する自院が 選ばれ続けるとは限りません。
人口構成、生活動線、 既存医療機関が担っている役割、 将来の人口動向などを確認する必要があります。
競合が多い地域と、外来医師過多区域は異なる
なお、 周辺に同じ診療科のクリニックが多いことと、 制度上の「外来医師過多区域」に 該当することは別です。
また、 「医師多数区域」という医師偏在に関する区分も、 近隣の競合クリニック数だけで 判断されるものではありません。
2025年医療法改正を踏まえ、 2026年4月から、 外来医師過多区域で新たに 無床診療所を開設する場合には、 原則として開設6か月前までの 事前届出が必要となる仕組みが 始まっています。
そのため、 競合調査や診療圏調査とは別に、 開業予定地が制度上の対象区域に 該当するかを確認する必要があります。
実際の対象区域や手続きについては、 都道府県の公表情報や担当窓口で 確認してください。
まず「競合」をどの範囲で見るか整理する
競合調査では、 近隣の同じ診療科を数えるだけでなく、 患者さんが実際に どの医療機関を受診の選択肢としているかを 考える必要があります。
同じ診療科だけが競合とは限らない
例えば生活習慣病であれば、 内科、循環器内科、糖尿病内科など、 複数の診療科が受診先の選択肢になります。
また、 小児の皮膚症状であれば、 小児科と皮膚科の両方が 比較対象になることもあります。
病院外来やオンライン診療も、 患者さんの状況によっては 選択肢になり得ます。
通院動線と受診しやすさも確認する
徒歩、自動車、公共交通機関、 通勤や通学の途中など、 患者さんの生活圏によって 比較される医療機関は変わります。
また、 予約の取りやすさ、 診療内容の分かりやすさ、 待ち時間、 家族を連れて行きやすいかといった点も 受診先を選ぶ判断材料になります。
競合調査で確認したいこと
- 主な患者層、疾患、診療内容
- 診療時間、休診日、予約方法
- 駅や駐車場からの通いやすさ
- 病院・介護事業所との連携
- 地域で求められている医療機能
- 患者さんが不便に感じている可能性がある点
ただし、 競合の弱い部分をすべて埋めようとすると、 自院の運用が複雑になり、 院長やスタッフの負担が増えることがあります。
差別化より先に整理したい5つの判断
差別化そのものを 開業の目的にする必要はありません。
地域に必要とされる診療を、 無理なく続けられる形で提供する。 その結果として、 他院との違いが生まれるという考え方もあります。
そのためには、 自院にできること、 地域や患者さんから求められること、 そして続けられること を照らし合わせることが大切です。
1.どの患者さんに継続して来てもらいたいか
年齢、疾患、生活背景、 通院方法、受診時間などを具体化すると、 必要な診療体制や立地条件が見えてきます。
「誰でも診ます」という方針を否定するものではありませんが、 主にどのような患者さんを想定しているかが曖昧だと、 設備、人員、情報発信の優先順位を 決めにくくなります。
2.地域にある医療と、不足している医療は何か
他院の診療内容だけでなく、 新患予約の取りやすさ、 働く世代の通院しやすさ、 慢性疾患の継続管理、 在宅医療への対応など、 地域で十分に担われていない可能性がある 医療についても確認します。
ただし、 地域で不足しているからといって、 すべてを自院が担う必要はありません。
自院で対応すること、 他の医療機関と連携すること、 現時点では担わないことを 分ける判断も必要です。
3.院長が長く続けたい診療と一致しているか
患者数や収益性だけでなく、 今後も専門性を深めたいか、 日々の診療として続けたいか、 院長自身の働き方と両立できるかを確認します。
開業時に患者さんから選ばれることだけでなく、 数年先もその診療を続けられるかという視点が大切です。
4.スタッフと院内体制で無理なく提供できるか
診療内容を広げると、 人員、教育、設備、 予約管理、説明業務なども増えます。
どの職種が何を担うのか、 採用可能な人材で運用できるか、 院長に判断や業務が集中しないかを 考える必要があります。
院長だけでなく、 スタッフが無理なく働き続けられる体制も 経営を続けるうえで重要です。
5.患者さんが通い続けやすい環境を整えられるか
診療内容だけでなく、 予約、受付、説明、会計、 次回受診までの分かりやすさも 患者さんにとって大切です。
高価な設備や新しいサービスを増やすことだけが、 他院との違いを生む方法ではありません。
患者さんが安心して受診でき、 スタッフも無理なく対応できる 診療の流れを整えることも、 自院が選ばれる理由につながります。
差別化が院内の負担になっていないか
診療時間を広げる、 診療内容を増やす、 システムを導入する、 個別の要望へ対応するといった施策は、 患者さんの利便性を高める可能性があります。
一方で、 採用や教育、 院長の勤務時間、 院内ルールを複雑にすることもあります。
特に開業直後は、 想定していた患者数と実際の来院状況、 スタッフの業務量、 院内の動線などに違いが生じる場合があります。
差別化は、何かを追加することだけではありません。
主な患者層を明確にする、 診療内容を分かりやすく伝える、 予約や説明の流れを整える、 地域で担う範囲を決めることも 自院らしさにつながります。
開業時から必要なものと、 患者さんや院内の状況を確認して 後から追加するものを分けることも、 続けられる運用につながります。
他院が行っているから自院も導入する、 競合に対抗するために診療時間を延ばす、 という判断だけではなく、 自院にとって本当に必要か、 導入後も続けられるか を確認したいところです。
競合が多い地域では、なぜ判断が難しくなるのか
競合調査や診療圏調査をしても、 開業場所や診療方針を 簡単に決められないことがあります。
それは、 複数の条件が重なり、 何を優先するかによって 判断が変わるためです。
- 患者数は見込めるが、 賃料や人件費が高い
- 競合は少ないが、 将来人口も少ない
- 地域ニーズはあるが、 人材を採用しにくい
- 診療時間を延ばすと、 院長の負担が増える
- 専門性を打ち出すと、 対象となる患者さんが限られる
例:患者さんの来院が多く見込める立地の場合
候補地は人の往来が多く、 一定の患者数も見込めるとします。
一方で、 同じ診療科のクリニックが複数あり、 賃料や人件費も高い状況です。
診療時間を広げたり、 Web予約を導入したりすることで、 患者さんの利便性が高まる可能性はあります。
ただし、 人員確保や院長の勤務時間への負担も 考える必要があります。
また、 主な患者層によって、 診療時間、検査体制、 予約方法、必要なスタッフ数も変わります。
このような場合は、 「競合が多いから見送る」 「来院が見込めるから進める」と すぐに決めるのではなく、 複数の条件を整理します。
患者層、診療時間、 人員体制、固定費などの条件と、 院長が提供したい医療、 地域で担いたい役割を照らし合わせ、 自院として何を優先するかを考えます。
さらに情報を集めるだけでは、 結論が出ないこともあります。
候補地、患者層、診療内容、 資金、人員、 院長が続けたい医療を並べ、 何を優先し、 何を見送るかを考える必要があります。
正解を探すより、 判断の前提をそろえることが先です。
何を大切にし、 どの条件なら続けられるかを 言葉にすることで、 自院として判断しやすくなります。
判断の前提が整理できると、 診療圏調査会社、 不動産会社、税理士、 金融機関などへ 何を確認すべきかも明確になります。
開業前に整理したい判断の順番
競合が多い地域での開業を考える場合、 次のような順番で整理すると、 候補地と自院の診療方針を 比較しやすくなります。
- 候補地と患者層を整理する
年齢、生活動線、通院方法、 昼間人口、将来人口を確認します。 - 競合が担う役割を確認する
診療科名だけでなく、 患者層、診療内容、 診療時間、予約方法、 連携先などを見ます。 - 地域で求められている医療を確認する
患者さん、病院、 介護事業所などの視点から、 どのような医療が求められているかを考えます。 - 自院が担える範囲を決める
専門性、診療方針、 人員、設備、資金を踏まえ、 自院で行うことと 他院との連携で対応することを分けます。 - 今行うことと、後で見直すことを分ける
最初からすべてを導入せず、 必要性や運用状況に応じて 段階を分けます。 - 開業後に確認する数字と時期を決める
患者数、再診状況、 待ち時間、電話件数、 スタッフの残業、 収支などから 自院に必要な指標を選びます。
このように整理すれば、 「競合が多いからやめる」 「差別化できそうだから進める」 という二択ではなく、 自院にとって許容できる条件を 考えやすくなります。
まとめ|他院との違いより、続けられる理由をつくる
競合クリニックが多いからといって、 必ずしも開業を見送る必要はありません。
ただし、 人口が多い、 来院が見込めるという理由だけで 開業を決めることも慎重に考える必要があります。
確認したいのは、 患者層、地域にある医療、 院長が続けたい診療、 資金や院内体制、 患者さんが通い続けやすい環境です。
自院が地域で何を担い、 誰にどのような医療を提供し、 どのような体制なら続けられるか。
これらを整理することが、 開業後の経営や院内運用の土台になります。
競合情報や診療圏調査の結果を集めても 決めきれないときは、 情報不足ではなく、 複数の条件を並べて 優先順位を決める段階かもしれません。
他院に勝つことだけを考えるのではなく、 地域や患者さんに求められる医療と、 自院が無理なく続けられる診療を どのように重ねるのか。
その視点を持つことが、 開業場所や診療方針を判断するうえで 大切だと考えています。
競合を調べても、開業方針が決めきれないときに
候補地、患者層、診療内容、 採用、資金、 地域で担う役割など、 開業準備では複数の条件を 同時に考える必要があります。
まえやまだ純商店では、 院長の代わりに結論を決めるのではなく、 現状・背景・論点・選択肢・優先順位を整理し、 「自院ではどうするか」を 考えやすい状態を整えます。
開業候補地を比較する判断基準、 追加で確認する内容、 今決めることと後で決めることを整理し、 院長ご自身が判断理由を持って 次の一手を決められるように支援します。
相談内容や支援の進め方については、 次のページをご覧ください。
※無料相談は原則1回です。 現在の状況や迷っていることを伺い、 当方で対応できる支援があるかを確認します。 対応できる内容がある場合は、 支援範囲を整理し、 費用をお見積もりします。 無料相談の時点で 契約を決めていただく必要はありません。