人材×DX×仕組みで実現する、持続可能なクリニック経営(クリニック経営の基本視点シリーズ・第3回目)

はじめに
「スタッフがなかなか採用できない」「せっかく採用しても定着しない」── 開業医の先生方から、このようなお悩みを伺う機会が増えています。
少子高齢化に伴う労働人口の減少や、他産業との競合により、医療業界の人材確保はますます厳しくなっていくと考えられます。さらに、産休・育休やライフスタイルの変化により、定着を前提とした雇用戦略だけでは限界があります。
そのため今後のクリニック経営では、「人材×DX×仕組み」による効率的な運営が欠かせません。
なぜ「定着」だけに頼れないのか
人材定着の工夫は重要ですが、それだけで課題が解決する時代ではありません。
- 医療業界は他産業と比べても離職率が高い
- 結婚・出産・育児など、ライフイベントで退職が発生しやすい
- お祝い金や賞与・昇給といった経済的インセンティブは短期的な効果にとどまりやすい
さらに、診療報酬の伸び悩みや物価高騰による人件費上昇を考えると、従来の「給与で引き留める」方法には限界があります。
少人数でも回る仕組みを整える
これからの時代、クリニック経営には「少人数でも効率よく回す」視点が不可欠です。そのために有効なのが DXと仕組み化です。
DXの活用
- 予約システムの自動化:電話対応を減らし、スタッフの負担を軽減
- Web問診の導入:診察前の情報収集を効率化し、受付業務をスリム化
- 自動音声応答(AI電話):よくある問い合わせを自動処理し、人的対応を最小限に
- 電子カルテ連携:情報共有をスムーズにし、事務作業の手間を削減
業務の整理と仕組み化
- 院内掲示やホームページで情報を整理し、同じ質問を減らす
- 清掃や広報など、医療行為に直接関係しない業務は外部委託
- スタッフが複数の業務を兼務できるよう教育し、少人数でも柔軟に対応できる体制づくり
経営者意識としての「投資」の考え方
人件費は「コスト」と捉えられがちですが、経営者意識を持つと「投資」としての視点が必要になります。
- 採用・教育に投資することで、スタッフが長く活躍できる
- DXや仕組みづくりに投資することで、人材不足でも安定した経営が可能になる
- 投資の判断は短期的な効果ではなく、中長期的な安定を見据えて行う
この「人材×DX×仕組み」の掛け合わせこそが、これからのクリニックに求められる戦略です。
まとめ
採用や定着の工夫はもちろん大切ですが、それだけに頼るのは難しい時代に入っています。これからは、少人数でも効率的に回る仕組みを設計することが経営安定のカギになります。
人材不足や制度改定に悩む院長先生にとって、「人材×DX×仕組み」を意識した経営は、持続可能なクリニックを実現する大きな力となるはずです。