2030年を見据えて、いま開業医が準備できること

本記事は、令和7年9月17日に日本医師会が発表した 『令和7年 診療所の緊急経営調査 結果 - 令和5年度・6年度実態報告』 の第15ページ「経営課題」を確認し、現場の肌感覚と統計データをつなぐ視点で執筆しています。調査では、物価・人件費の上昇、患者数の減少、診療報酬の伸び悩み等により、多くの診療所で利益率が悪化している実態が示されています。[1][2]
人件費・採用難への備え
スタッフの確保と定着は、今後さらに一段と難しくなります。
給与だけに頼った採用では限界があり、働きやすさ・やりがい・職場の文化がなければ、人材は集まらず離れていく時代です。
放置すれば経営の根幹が揺らぎかねません。
一方で、WEB予約・AI電話・自動精算機などのDXツールを導入することで、業務効率を高め、限られた人員でも運営できる仕組みを整えることが可能です。
課題を直視しつつ、前向きに小さな一歩を積み重ねることが、持続可能な経営につながります。
患者数・受診行動の変化への対応
少子高齢化・受診控えの流れを踏まえ、生活習慣病外来、高齢者外来、ポリファーマシー対応、健診異常のフォローなど 「潜在ニーズ」に応える外来体制の整備が重要です。かかりつけ医機能の明確化も、 「まずはこのクリニックへ」という選択を後押しします。
診療報酬依存からのリスク分散
制度改定の影響をもろに受けないため、自費診療、産業医、在宅、予防プログラム等を組み合わせ、 収入の多様化を図ります。調査でも直近年度の利益率悪化が確認されており、 制度一本足からの転換は中期的なテーマです。[2]
設備投資と資金準備
建物や医療機器の老朽化は必ず訪れます。更新・リース戦略、エネルギー効率の高い設備など、 長期的にコストを抑える投資設計を。これを可能にするには、早めの資金計画と金融機関との関係構築が鍵です。
地域連携と「承継・M&A」
地域に診療所を残すため、医師会・地域包括ケアのネットワークを強化しましょう。 また、自分の引退や承継も「まだ先」と思わず、事業承継やM&Aの選択肢を早めに視野に入れておくことが、 結果として地域医療を守ることにつながります。
なお、事業承継やM&Aについては当社のノウハウが限られる分野であり、必要に応じて専門の機関や他社への相談をお勧めします。
まとめ:2030年を“待つ”のではなく“準備する”
「人・患者・制度・資金・地域」の5つの視点で小さく着手し、5年後に備えることが重要です。 2030年をただ待つのではなく、今日から準備しましょう。四方(患者・地域・スタッフ・自分)にとって良い経営を目指す姿勢が、 これからのクリニックに求められます。
無料相談(課題の整理整頓)
自院の現状を棚卸しし、「2030年に向けて何から着手するか」を一緒に整理します。
参考資料
- 日本医師会『令和7年 診療所の緊急経営調査 結果 - 令和5年度・6年度実態報告』 (2025年9月17日 発表, PDF)
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20250917.pdf - 日医総研ワーキングペーパー No.494『令和7年 診療所の緊急経営調査』(2025年9月9日, PDF)
https://www.jmari.med.or.jp/wp-content/uploads/2025/09/WP494.pdf - (参考解説)日医On-line記事 等(調査結果の背景・論点整理)
https://www.med.or.jp/nichiionline/