心療内科・精神科経営シリーズ 第2回|臨床心理士をどう活用するか

心療内科クリニックは、医師1名体制で診療を行う場合が多く、どうしても診られる人数や収益には限界があります。その限界を補い、診療の幅を広げる存在として重要になるのが「臨床心理士」です。心理士の稼働が安定すれば、診療効率の向上だけでなく、経営の持続性にもつながります。
本記事では、臨床心理士を採用・活用する際に押さえておきたい視点を整理しました。唯一の答えを示すものではなく、各院の診療方針と実情に応じた検討の材料としてご活用ください。
1. 採用のポイント
臨床心理士の採用には地域差があり、都市部と地方では求人の出し方や採用難易度が大きく異なります。求人条件としては、常勤か非常勤か、経験年数、特定領域(発達障害、認知行動療法など)の専門性をあらかじめ明確にしておくことが重要です。また、給与水準は地域ごとの相場を把握して設定する必要があります。
採用の入り口としては、親しくしている心理士や知り合いに声をかけてみることも有効です。 信頼関係のある心理士とのつながりから始める方が、求人媒体に出すよりもスムーズに進む場合があります。
2. 稼働と収益性
臨床心理士が担える業務には、心理検査(WAIS、ロールシャッハなど)、カウンセリング(精神科専門療法としての個別対応)、集団療法の補助などがあります。心理士の稼働率はクリニックの収益性に直結し、医師の診療枠だけに頼らない収益の柱となり得ます。
料金モデルとしては、診療報酬の算定に加え、自費のカウンセリングや心理検査、産業医契約の一部として心理面談を組み込む方法も考えられます。各院の方針や患者層に合わせて無理のない範囲から設計することが現実的です。
3. 経営・組織への影響
心理士が関わることで、医師は診療に集中しやすくなり、心理面のフォローを心理士が担うことで診療効率が高まります。心理士・医師・事務スタッフが連携することでチーム医療の基盤が整い、患者体験の質も向上します。カウンセリングの継続は安心感につながり、結果として通院の継続率が上がる可能性があります。
4. 導入時の留意点
採用初期は稼働が少なく、コストが先行するケースが多い点には注意が必要です。徐々に患者数を増やしながら稼働を安定させる設計が望まれます。また、医師と心理士の役割分担を明確にしないと、診療フローが混乱するリスクがあります。
患者さんへの案内においても、「心理士によるカウンセリングは医師の診察と組み合わせる形で提供する」といった説明をあらかじめ行い、理解を得ておくことが大切です。
まとめ
臨床心理士の活用は、心療内科クリニックの持続性を高める大きな要素です。採用難易度やコストを踏まえたうえで役割分担を整理し、心理士の稼働を安定させることが経営に直結します。各院の診療方針と地域の実情に合わせ、無理のない範囲から取り組むのが現実的です。