糖尿病内科経営シリーズ第5回|糖尿病外来を支える「仕組み」は、どこで外来を受け止めているか
糖尿病外来は、診療そのものだけでなく、説明・継続支援・判断の積み重ねで成り立っています。
そして多くの院長先生はすでに、「一人で抱えない」ことの重要性も、チームで支える必要性も分かっているはずです。
それでも、外来の負荷が最終的に院長へ戻ってくる感覚が消えない。
たとえば、任せているはずなのに確認が増える/説明したはずなのに同じ話が繰り返される/忙しい日の揺れがそのまま院長の疲労に変わる──そんな「重さ」が残ることがあります。
ここまでのシリーズでは、糖尿病外来の詰まりを「努力」や「能力」ではなく、外来の構造として整理してきました。
今回はその延長として、人ではなく“仕組み側”から、外来を見直す回です。
人の問題ではなく、「受け止め先」の問題かもしれない
この違和感は、誰かの努力不足や、能力の問題ではありません。
糖尿病外来には、
- 患者背景が複雑になりやすい
- 説明や納得に時間がかかる
- 判断が積み重なりやすい
という特性があります。
その結果、
- 情報が人の頭に残り
- 判断が院長に戻り
- 説明やフォローが善意で引き受けられる
状態が、自然に生まれやすくなります。
ここで起きているのは、支えが足りないことではありません。
支えはあるのに、それを受け止める場所が曖昧なままになっている──という構造です。
「仕組みで支える」とは、人を置き換えることではない
「仕組み」や「DX」という言葉に、効率化や省力化のイメージを持つ方も多いかもしれません。
ですが、ここで考えたいのは、人を減らすことでも、現場を急に変えることでもありません。
仕組みが担う役割は、たとえば、
- 記憶を残す
- 流れをつなぐ
- 判断の戻り先をつくる
といった、人がすでに担っている支えを、続く形にすることです。
人の仕事をそのまま仕組みに写す必要はありません。
ただ、どこまでを人が担い、どこからを構造として受け止めるのかを整理する余地はあります。
糖尿病外来で、仕組みが受け止める3つの場所
ここで一度、外来を「仕組み側」から眺めてみます。
正解を探すためではなく、外来の構造を見直すための問いとして捉えてください。
① 情報は、どこに集まっているか
血糖値や検査データだけでなく、
- 生活背景
- 患者さんの理解度
- これまでの説明内容
こうした情報は、今どこに集まっているでしょうか。
特定の人の記憶に委ねられている情報と、誰でも辿れる形で残っている情報。
この違いは、外来が立て込んだ日に、思っている以上に影響します。
② 判断は、どこに戻ってくるか
次回受診までの方針や、介入の強さ、説明の深さ。
判断そのものを院長が担うこと自体は問題ではありません。
ただ、
- その判断がどこに戻り
- どう共有され
- 次にどうつながっているか
が曖昧なままだと、同じ判断が何度も院長に戻ってきます。
③ 継続支援は、どこで滞留しているか
説明したつもり。伝えたはず。分かってもらえたと思う。
糖尿病外来では、こうした「つもり」が積み重なりやすい場面があります。
- 何を説明したのか
- どこまで共有できているのか
- 次は何を確認するのか
これらが、どこで受け止められているかは、外来の安定性に直結します。
仕組みは、外来を軽くするためではなく「揺れを受け止める」ためにある
第3回で触れたように、再診率や外来数の安定は結果にすぎません。
仕組みの役割は、日々を楽にすることよりも、
- 忙しい日
- 想定外の患者増
- スタッフが揃わない日
でも、外来が大きく崩れないように、揺れを受け止めることにあります。
人の頑張りで吸収している揺れを、どこまで構造で支えられているか。
その視点があるだけで、外来の見え方は変わってきます。
制度やツールは、「すでにある支え」を残すための枠組み
たとえば、生活習慣病管理料や療養計画書も、
新しい仕事を増やすためというより、すでに行っている説明や共有を、その場限りにしないための枠組みとして設けられています。
重要なのは、
- 算定しているかどうか
- 形式を満たしているか
ではなく、
- 情報の置き場として機能しているか
- 判断の戻り先になっているか
- 忙しい外来を支えているか
という点です。
まとめ|この外来は、どこまで仕組みに支えられているだろうか
人を増やす前に。新しいツールを探す前に。
一度、立ち止まって考えてみてください。
- この外来では何が人に委ねられ
- 何が構造として受け止められているのか
答えを急ぐ必要はありません。
ただ、どこが仕組みで受け止められているかを言葉にできるかどうか。
それだけで、次に考えるべきことは、自然と浮かび上がってきます。
次回予告
今回整理したのは、糖尿病外来を支えているものが人か仕組みか、という二択ではなく、その支えがどこで受け止められているかという視点でした。次回は、この視点をもう一歩進め、役割分担やツール、DXが外来のどの部分を支えるために存在しているのかを、より具体的に整理していきます。導入の正解を示すのではなく、「自院では何を支えたいのか」を考えるための材料として、構造を見つめ直す回になる予定です。
次回記事:糖尿病内科経営シリーズ第6回|糖尿病外来の「判断・継続・記録」は、どこで受け止める構造になっているか
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