糖尿病内科経営シリーズ第6回|糖尿病外来の「判断・継続・記録」は、どこで受け止める構造になっているか
※本記事では、糖尿病外来で日々起きている「判断・継続・記録」が、どこで受け止められている構造になっているかを整理します。DXや役割分担は、そのための“道具”として位置づけます。
糖尿病外来は、診断や治療方針だけで成り立っているわけではありません。
日々の診療の中では、状態をどう判断するか、治療や生活指導が無理なく続いているか、その経過や情報がどこに残っているか──そうした「判断・継続・記録」が、同時に、そして静かに回り続けています。
前回は、糖尿病外来を「人が頑張って回しているか」ではなく、仕組みが外来を受け止めているかという視点で整理しました。
では、その仕組みは実際にはどこで成立しているのでしょうか。誰が判断し、誰が継続を支え、どこで情報が整理されているのか。
今回は、DXや役割分担という言葉に触れながらも、「何を導入するか」「誰がやるか」ではなく、糖尿病外来の“重さ”がどこで受け止められている構造になっているかを、もう一段だけ具体に見ていきたいと思います。
院長が抱えているのは、診断と処方だけではない
糖尿病外来で、院長が抱えているものは何でしょうか。
多くの場合、それは診断や処方といった医師固有の専門行為だけではありません。
治療方針は妥当だっただろうか。
患者さんは通院を続けられているだろうか。
説明や指導は、きちんと伝わっているだろうか。
見落としていることはないだろうか。
こうした確認や判断が、気づかないうちに院長一人に集まっていることも、決して珍しくありません。
外来が忙しく感じられる理由は、患者数の多さだけではなく、あるいは個人の努力不足でもなく、判断・継続・記録の「受け止め先」が一か所に集中している構造にあるのかもしれません。
つまり、忙しさの正体は作業量というより、「受け止め続けている範囲」そのもの、という見え方です。
役割分担は「誰がやるか」より、「どこで受け止めるか」
役割分担という言葉も、少し立ち止まって考えてみる価値があります。
看護師が指導をする。管理栄養士が生活習慣を支える。事務が書類を整える。
それぞれ大切な役割ですが、ここでの焦点は「職種を当てはめること」だけではありません。
大事なのは、どの問いがどこで受け止められているかです。
この患者さんは今、安定しているだろうか。
治療は続けられているだろうか。
記録は必要な形で残っているだろうか。
次の判断につながる情報は揃っているだろうか。
こうした問いが、毎回院長に戻ってくる外来と、チームや仕組みの中で受け止められている外来とでは、診療の手応えが少しずつ違ってきます。
役割分担とは仕事を分けることというより、問いの所在を整理することなのかもしれません。
DXは「新しいこと」ではなく、「支えを残す枠組み」
DXやICTも、同じ文脈で捉えることができます。
新しいツールを入れたのに思ったほど楽にならない、あるいはむしろ複雑になった、という声もあります。
それは「何を使うか」が先に決まり、「何を受け止めるための仕組みなのか」が十分に整理されていなかったから、という場合もあるのだと思います。
DXは、単に作業を減らすためのものではありません。
判断の重さを分散するため。
継続の確認を、人の記憶や“気づき”だけに頼らないため。
記録を、後からまとめる作業ではなく、外来の流れの中に自然に組み込むため。
たとえば、誰かの記憶や都度の確認に頼っていたことを、「次に残る形」で受け止め直す──それだけでも、外来の構造は少し変わり得ます。
そうした目的と結びついたとき、初めて「仕組み」として機能し始めます。
ここで大切なのは、“新しいことをする”よりも、“すでにある支えを残す”という発想です。
どこまで院長が担うかは、「外来が崩れるかどうか」で考える
では、どこまでを院長が担い、どこからを仕組みやチームに預けるかは、何を基準に考えればよいのでしょうか。
専門性の高さ、忙しさ、制度の区切り──どれも無関係ではありませんが、それだけで決めきれない場面が多いのも実感ではないでしょうか。
正解はありません。
ただ、一つの問いは立てられます。
それは、自分でなければ外来が崩れてしまうものだろうか。
この問いを通して眺めてみると、これまで当たり前のように抱えていたものの中に、仕組みに預けられる余地が見えてくることがあります。
そして、その余地が見えるだけでも、外来の見通しは少し変わってきます。
仕組みは、人を楽にするためではなく「続けるため」にある
仕組みは、人を楽にするためだけのものではありません。
外来を院長一人の判断や気力に依存させず、無理なく続けられる形にするためにあります。
判断・継続・記録が、どこで、どのように受け止められているのか。
それを意図して設計している外来と、成り行きでそうなっている外来とでは、時間が経つほど少しずつ違いが表れてきます。
あなたの糖尿病外来では、何が院長自身の手にあり、何が仕組みやチームに預けられているでしょうか。
それは「なんとなく」そうなったものなのか、それとも「続けるために」選ばれたものなのか。
その問いを持てるだけでも、次の一手は変わってくるはずです。
次回予告|役割ごとに「どの問いを受け止めると揺れにくいか」
ここまで、糖尿病外来の「判断・継続・記録」が、どこで受け止められている構造になっているか、という視点で整理してきました。
ただ、ここから先は多くの先生が同じところで少し迷います。
「受け止め先を分散したい」と思っても、では具体的に、どの役割がどの問いを受け止めるのか。
どこまでを院長が担い、どこからをチームや仕組みに預けるのか。
その境界をどう置くのか。
次回は、今回の整理を踏まえて、役割ごとに“どの問いを受け止めている外来は揺れにくいのか”を、もう一段だけ具体に見ていく予定です。
正解や成功事例を示す回ではありませんが、自院の外来を見直すときの「考える順番」を整える回としてお届けできればと思います。
次回記事:糖尿病内科経営シリーズ第7回|役割分担とは、「判断をどこで受け止めるか」を決めること― 糖尿病外来を揺らさないための境界線 ―
関連記事(あわせて読みたい)
今回の「判断・継続・記録をどこで受け止めるか」という視点を、別の角度から補強できる記事です。
- 院長が設計する、現場から始める医療DX|“持続可能な経営”を実現する5ステップ
「何を入れるか」よりも、現場で無理なく成立する“順番”の整理。ツールの話に寄りすぎず、受け止め先の設計として読みやすい内容です。 - 医師の“雑務”はどこまで減らせるか|2026改定を見据えた“クリニックDX”の進め方
「効率化」よりも、外来を続けるために“受け止めの集中”をほどく視点。2026改定の空気感とも接続しやすい記事です。 - “作って終わり”にしないマニュアル運用|クリニックで根づく仕組みづくり
設計した仕組みを「続くもの」にするための、運用と定着の話。判断・継続・記録を“残す”視点の補助線になります。
正解を急がず、
ご自身の「納得解」で進むための時間
開業準備や日々の診療を続けるなかで、「どこか引っかかったまま進んでいる感覚」を抱えていませんか。
初回整理セッションは、結論を急ぐ場ではなく、相談事と論点をいったん整理し、納得して次に進むための対話の時間です。
答えを提示するのではなく、ご自身の判断の軸が見えてくることを大切にしています。
🗣️ 初回整理セッション(60分)
料金:5,000円(税別)
例えば、こんな場面でご利用いただいています。
- 開業準備や経営判断について、何から整理すべきか分からなくなっている
- 制度や環境の変化を前に、自分なりの考えを一度立ち止まって整理したい
- 一人で考え続けるのではなく、第三者との対話を通じて頭の中を言語化したい
※売り込みや即決を前提とした場ではありません
※一度整理したあと、必要に応じて月額の伴走(開業・経営整理セッション)も選べます: 詳細
事前に「雰囲気」を知りたい方へ —— Podcastのご案内
日々の診療や経営の中で感じる、言葉にしづらい違和感や判断の迷いを、
制度や現場の視点も交えながら、声で整理していく番組です。
初回整理セッションの前に、考え方や伴走のスタンスを知りたい先生におすすめです。
※外部サービスが新しいウィンドウで開きます