糖尿病内科経営シリーズ第7回|役割分担とは、「判断をどこで受け止めるか」を決めること― 糖尿病外来を揺らさないための境界線 ―
なぜ「役割分担」の話は、いつも少し難しくなるのか
糖尿病外来の運営について考えるとき、「役割分担」という言葉は、どうしても避けて通れません。
看護師に任せる。管理栄養士にお願いする。事務に回す。あるいは、仕組みに載せる。
いずれも、多くの先生がすでに取り組まれていることだと思います。
それでも、しばらくすると院長のもとに判断が戻ってくる。そんな感覚が出てくるのは、珍しいことではありません。
多くの場合、それは「誰が何をやるか」を間違えたからではなく、
その業務の中に含まれている「判断」を、どこで受け止める構造になっているかが、十分に言語化されていないだけなのかもしれません。
この回の結論:役割分担は「業務」を分ける話ではなく、「判断をどこで受け止めるか」を決める話です。
第6回の続きとして:判断・継続・記録の「受け止め先」
第6回では、糖尿病外来の中にある「判断・継続・記録」が、どこで受け止められているかを整理しました。
この視点を一歩進めると、役割分担とは、単に業務を振り分けることではなく、判断を「院長」「チーム」「仕組み」のどこで受け止めるかを考えることだと捉え直せます。
この回で扱いたいのは「任せましょう」という話ではありません。
「判断を軽くするため」ではなく、判断を守るために、受け止め先を整理する――その視点を置いてみます。
境界線を考える順番(チェックリストではなく、思考の導線)
ここからは、結論を出すためではなく、自院に当てはめて考え始めるための順番を置きます。
順番があるだけで、境界線は少し見えやすくなることがあります。
- ① 院長が受け止め続けたい判断は何か
- ② チームで受け止めたほうが安定する判断は何か
- ③ 仕組みに預けても問題が起きにくい判断は何か
ポイント:「誰の仕事か」ではなく、判断を止める場所を決めると、役割分担が戻りにくくなります。
① 院長が受け止め続けたい判断
糖尿病外来には、院長でなければ受け止めにくい判断があります。
それは医学的に正しいかどうかだけでなく、「この外来として、どうありたいか」を含む判断です。
- 治療方針を変えるかどうか
- どこまで介入するか
- この患者さんと、どんな距離感で関わり続けるか
数は多くありませんが、こうした判断が曖昧になると、外来全体の軸が少しずつ揺れ始めます。
無理に手放す必要はありません。自分が守り続けたい判断を言語化しておくことが、大切なのだと思います。
まとめ:院長が担うのは「量」ではなく、外来の軸になる判断です。
② チームで受け止めたほうが安定する判断
一方で、院長ひとりが抱え続けることで、外来が重くなってしまう判断もあります。
それは、毎回ゼロから考え直さなくてもよい判断や、判断に至るまでの準備が大きい判断です。
看護師や管理栄養士、事務スタッフが「代わりに決める」わけではありません。
ただ、判断に必要な情報や前提条件、選択肢をチーム側で受け止められるようになると、院長の判断は落ち着いたものになります。
まとめ:チームが受け止めるのは「結論」ではなく、判断に必要な前提と準備です。
③ 仕組みに預けても問題が起きにくい判断
糖尿病外来の中には、条件が揃えば、ほぼ同じ結論にたどり着く判断もあります。
そうした判断まで毎回院長が受け止め続けていると、本当に大切な判断に使う余力が、少しずつ削られていきます。
仕組みに預けることは、判断を軽くするためではありません。
院長が守り続けたい判断を、長く保つための選択と捉えると、少し言葉が変わって見えるかもしれません。
まとめ:仕組みに預けるのは「手抜き」ではなく、院長の判断を守るための防波堤です。
境界線に迷ったときの、ひとつの問い
判断の置き場所に迷ったとき、「誰の仕事か」で考えると、かえって答えが出にくくなることがあります。
そんなときは、こんな問いを置いてみてもよいかもしれません。
この判断は、誰を守るためのものだろうか。
患者さんを守るためのものだろうか。
外来全体を守るためのものだろうか。
それとも、院長自身の判断力を守るためのものだろうか。
すぐに答えが出なくても構いません。問いを置いておくだけで、判断の境界線は少しずつ見えやすくなっていきます。
まとめ:境界線は「切り分け」ではなく、守るべきものから逆算して見えてきます。
最後に:自院の外来を“少し引いて”眺めてみる
ここまで読んで、何かを決める必要はありません。
役割分担も判断の境界線も、無理に線を引こうとすると、かえって窮屈になってしまいます。
ただ、もし余裕があれば、自院の糖尿病外来を少し引いた位置から眺めてみてください。
いま、この外来で自分が受け止め続けている判断は、どこにあるだろう?
それは、これからも自分が守り続けたい判断なのか。
それとも、形を変えて受け止め直せそうな判断なのか。
この回の最後の一文:役割分担は、外来を軽くするためではなく、外来を揺らしにくくするためにあります。
次回(第8回)では、院内だけで抱え込まずに進めるための地域連携・外部連携・紹介という選択肢を、「紹介のテクニック」ではなく、外来を安定させる構造として整理していきます。
次回記事
→糖尿病内科経営シリーズ第8回|院内だけで抱えないという判断── 糖尿病外来を“閉じない”ための境界設計
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