「外部に任せる」と「自分で決める」の間で──院長の判断軸を守るための考え方(情報と考えを整えるシリーズ第4回)
※「情報と考えを整えるシリーズ」第4回の記事です。開業準備〜開業5年以内の院長先生が、外部との関わり方とご自身の判断軸について整理することを目的としています。
クリニックを運営していると、外部に仕事を任せたほうが“早く、ラクに進む”場面が多くあります。ホームページ制作、広告運用、採用、スタッフ育成、導線改善……。専門サービスに依頼すれば、院長先生の負担は大きく減り、目の前の診療に集中できます。
しかし一方で、「任せているのにしっくりこない」「方向性を説明できない」「気づいたら疲れている」と感じる院長先生も少なくありません。この記事では、外部に任せることと自分で決めることの“バランス”を整理します。
外部に任せることの“ラクさ”と、その裏で削られるもの
外部委託には、“早さ”と“労力の軽減”という大きなメリットがあります。一方で、この形が続くと院長先生の側に変化が生まれます。深く考える前に任せてしまう習慣は、静かに「判断軸」を削っていきます。
- とりあえず相談すれば何とかなる
- 深く考える前に任せようと思ってしまう
- 「前の業者はもっと早かった」と比較が生まれる
この積み重ねは、院長自身の“考える余白”を削り、本来大切にしたい価値観や方向性が曖昧になることにつながります。
よくある例
- ホームページ制作を外部に任せ続け、「誰に向けたサイトか」が説明できなくなる
- 採用を丸投げし、スタッフとのミスマッチが増える
- 広告や設備投資の判断を業者任せにし、方向性が揺れ始める
外部化そのものが悪いわけではありません。ただ、考える前に任せる状態が続くと、院長の主体性が少しずつ損なわれてしまいます。
クリニック経営には、院長にしか決められない領域が大きい
クリニック経営は、一般の企業よりも院長の価値観に依存する割合が高い仕事です。「どんな医療を提供したいか」「どんな患者層に応えたいか」「どれくらいの規模で続けたいか」。こうした“核となる判断”は院長自身でしか決められません。
ここが外部任せになると、納得感のない決定が増え、「なんとなく疲れる」という形で返ってきます。開業準備〜開業5年以内の先生ほど、影響を受けやすい傾向があります。
私が大切にしている「整理 → 対話 → 本質的な打ち手」
私は、“まず動く御用聞き型の支援”ではなく、「まず整理し、考え、必要な打ち手を選ぶ伴走支援」を大切にしています。
支援の流れ
- 整理:いま抱えている課題や不安、判断の背景を言語化する
- 対話:価値観や優先順位を一緒に見つめ、“判断軸”を整える
- 本質的な打ち手:軸が定まったうえで、必要なアクションを選ぶ
この「整理 → 対話 → 打ち手」の流れは、まえやまだ純商店の支援の中心にあります。
御用聞きを否定しない。だからこそ“依存を生まない関係”を選ぶ
医療業界の御用聞き文化が、現場を支えてきた背景を理解しています。急を要する場面では「まず動く」ことが必要なケースもあります。
しかし2026年改定、人手不足、慢性期へのシフトなど、これからの医療は「考える時間を確保できる院長」が強くなる時代です。
だからこそ私は、依存を生まない伴走という形を選んでいます。院長先生が主体性を持ち、スタッフと方向性を共有し、地域とつながりながら経営を進めていけるよう、ご一緒したいと考えています。
今日からできる、「御用聞き前提」を手放す一歩
「最近、任せすぎているかも」と感じるテーマがあれば、以下のステップを試してみてください。
ステップ①:外部に任せているテーマを書き出す
- 採用
- 広告
- ホームページ更新
- 導線・設備
- スタッフとのコミュニケーション など
ステップ②:その中から1つ選び、以下を書く
- 何を大切にしたくて、その打ち手を選んだのか
- どんな状態になれば「うまくいった」と言えるか
- どこまで任せ、どこから自分で決めるべきか
ステップ③:まだモヤモヤするなら
そのテーマは、判断軸と向き合うタイミングかもしれません。一度立ち止まって整理するだけで、選択の質が大きく変わります。
外部に任せること自体は悪いことではありません。ただし、任せる前に「自分はどうしたいのか」を見つめる時間を少しだけつくってみる。その積み重ねが、院長先生らしいクリニック経営を支えていきます。
まえやまだ純商店は、その“考える時間”をご一緒する役割でありたいと思っています。
「情報と考えを整えるシリーズ」
- 第1回:情報過多の時代に、まず“整理”が必要な理由
- 第2回:成功/失敗という二元論への違和感
- 第3回:「細く長く続ける」クリニック経営という考え方
- 第4回:外部に任せることと、自分で決めることの間で(本記事)
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