開業や経営の“もやもや”を整理し、 自分なりの「納得解」で進むために。 ――医師の考えに伴走する、対話型の経営支援。

クリニック開業・経営コラム

開業医の“成功と失敗”は誰が決めるのか|二元論が院長を苦しめる理由と、整理から始める意味(情報と考えを整えるシリーズ第2回)



クリニック開業の相談を受けていると、
「成功しなければいけない」「失敗したら終わりだ」という言葉を口にする先生は少なくありません。


2026年度診療報酬改定の議論や、医師偏在の問題、地域医療構想などが連日取り上げられるなか、院長・開業準備中の先生方が不安を抱くのは自然なことです。 しかし、表面上の「成功/失敗」という二択で物事をとらえるほど、開業や経営は単純ではありません。


むしろ、その二元論こそが院長を苦しめ、判断を鈍らせ、行動を止めてしまうことさえあります。
このページでは、なぜ私たちは「成功か失敗か」に縛られてしまうのか。そして、その枠の外に出るために“整理”がどのように役立つのか。その理由をできるだけ具体的にお伝えします。



本記事は、「情報と考えを整える」シリーズ(全3回)第2回です。
第1回では、情報過多の時代における「まず整理から始める理由」を、全体像からお伝えしています。
第1回:なぜ“整理”から始めるのか|情報過多の時代に院長が見落としがちな最初の一歩
第3回では、「具体的に何を、どう整理していくか」をテーマに、実務への落とし込み方を扱ってます。



「成功」「失敗」というラベルの落とし穴


インターネットやセミナーでは、「成功事例」「失敗しないためのポイント」「やってはいけない〇選」といった言葉が多く語られています。


もちろん、それらが役に立つ場面もあります。ただ、その裏側には「焦り」と「比較」を生みやすい構造があります。


同じ“成功”でも中身はまったく違う


例えば、年商が大きいクリニックを「成功」と呼ぶことがあります。しかし、その裏側で、



  • 院長が疲弊している

  • スタッフとの関係がぎくしゃくしている

  • 家族の時間が奪われている

  • 地域とのつながりが弱い


といった現象が起きていたらどうでしょうか。それでも本当に“成功”と言えるのでしょうか。


一方で、収益は控えめでも、



  • 自分の診療スタイルを大切にできている

  • 患者とゆっくり向き合えている

  • 家庭とのバランスも保てている


そんな院長もいます。「成功」は数字だけでは測り切れず、「失敗」も単純な結果では断定できません。 なのに、二元論のラベルに従うほど、本来は迷う必要のないところで悩みが生まれてしまいます。



開業の成功は“登山”に似ている


開業や経営を例えるとき、私はよく「登山」の比喩を使います。山にはいろいろな種類があります。



  • 高い山に挑む人

  • 低い山でも景色を楽しみながら歩きたい人

  • 一気に頂上を目指す人

  • ゆるやかなルートで着実に進みたい人


どれも間違いではありません。にもかかわらず、「富士山に登れなければ失敗」と言われたら、おかしいですよね。


クリニック開業も同じです。



  • 地域密着を優先したい院長

  • 回転効率と収益性を重視したい院長

  • 患者との関係性を大切にしたい院長


それぞれ“目指す山”が違います。だからこそ、他人の基準を借りた瞬間に無理が生まれるのです。



経営には必ず「揺れ」が起きる


どれだけしっかり準備しても、開業後には必ず揺れが発生します。



  • スタッフの急な退職

  • 診療報酬改定による点数変動

  • 想定外の患者数の増減

  • 近隣クリニックの動き


これらは多くの場合、誰のせいでもありません。しかし、心は揺れます。


「これは失敗なのか?」「うまくいっていないのでは?」
もし“成功/失敗”の2つだけで評価してしまうと、こうした揺れがすべて「失敗」に見えてしまいます。


しかし経営とは、短期の点ではなく、長い線で見るべきものです。揺れは“自然な現象”であり、院長の能力とイコールではありません。



他院比較は迷いを加速させる


開業の相談現場でもよく聞くのが、 「他院はどうしているのか?」「あの先生はもっと患者が多い」「うちは負けているのでは?」といった声です。


比較が悪いわけではありません。ただし、判断基準が外側に置かれると軸がブレます。その結果、



  • 行動が鈍る

  • 判断が遅れる

  • 必要以上に落ち込む


という悪循環が起きます。皮肉なことに、「成功しなければ」という焦りこそが、成功から遠ざけてしまいます。



失敗が怖い理由は“才能不足”ではない


多くの先生が抱える「失敗したら怖い」「間違えたくない」という感覚。 実はこれは、才能不足でも経験不足でもありません。


怖さの正体は——“自分の基準が曖昧”であることです。


行き先が見えない登山は不安です。逆に、



  • 何を大切にするのか

  • どんな医療を届けたいのか

  • どんな働き方を望むのか


これらが言語化されていれば、多少の揺れがあっても判断は安定し、行動は止まりません。



その基準をつくるのが「整理」


整理とは、自分の頭の中にある価値観・願い・優先順位を言葉にしていくプロセスです。



  • 他人の基準で走らされない

  • 判断がぶれにくくなる

  • 迷いが減る

  • 行動が前に進める


これらはすべて、「整理」という下支えがあるからこそ生まれます。そして結果として、他人ではなく“自分にとっての成功”に近づいていきます。



最後にひとつの問いを


あなたにとっての「成功」とは何でしょうか。



  • 数字

  • 来院患者数

  • 家族との時間

  • 地域への貢献


どれも正解です。しかし、本当の答えは「あなたの中」にしかありません。
成功は結果ではなく、基準で決まります。その基準を整えることから、開業の一歩は軽くなります。



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