開業や経営の“もやもや”を整理し、 自分なりの「納得解」で進むために。 ――医師の考えに伴走する、対話型の経営支援。

クリニック開業・経営コラム

「細く長く続ける」クリニック経営という考え方(情報と考えを整えるシリーズ 第3回)


開業を考え始めた先生とお話ししていると、ときどきこんな言葉がこぼれます。


「どうせやるなら、一気に伸ばしたいんですよね」「◯◯クリニックくらいの規模を目指したくて…」


そこにはきっと、「今の勤務を手放してまで開業するのだから、失敗はできない」という覚悟と不安が同時にあるのだと思います。


一方で、すでに開業して数年が経った院長先生からは、こんな本音もうかがいます。


「もう少し落ち着いて診療したいんです」「患者さんは増えたけれど、自分の余白がなくなってしまって…」


同じ“伸ばしたい・続けたい”という言葉でも、その内側にある思いは、開業前と開業後で大きく変わっていきます。


「派手に伸ばす」より、「細く長く続ける」


まえやまだ純商店として、私はつねに


「派手に伸ばすより、無理なく長く続けるほうが強い」


とお伝えしています。


もちろん、成長そのものを否定したいわけではありません。設備投資や人員体制の強化が必要なタイミングも、どこかで必ず訪れます。


ただ、クリニック経営は短距離走ではなく、どちらかといえば「持久戦」に近いと感じています。


診療報酬制度は数年ごとに変わり、地域の人口構造や競合状況もじわじわと変化していきます。スタッフのライフステージも変わり、院長ご自身の体力や家族の状況も変わっていきます。


こうした「変化の波」の中で、一時的に大きく伸ばすことよりも、


「無理を重ねずに、診療と経営を続けられること」


こそが、患者さんと地域にとってのいちばんの安心になるのではないでしょうか。


「細く長く」の土台になる2つの整理


では、「細く長く続ける」ためには何が必要なのでしょうか。


私は、それを次の二つに分けて考えています。



  • 自分の軸の整理

  • 地域の文脈の整理


1. 自分の軸の整理


たとえば、こんな問いにすぐ答えられる先生は多くありません。



  • 自分は、どんな患者さんの力になりたいのか

  • どこまで診療し、どこからは連携に委ねたいのか

  • どんな働き方なら、10年後も続けていられそうか

  • 何を優先し、何は手放してもよいのか


これらは数値化できない「自分の軸」です。そして、この軸があいまいなまま走り続けるほど、どこかで大きな歪みが生まれます。



  • 患者数は増えているのに、毎日が「こなす診療」になってしまう

  • スタッフがいても、チームとしての一体感が感じられない

  • 家族との時間や自分の学びが削られ、心がすり減っていく


「細く長く続ける」とは、決して「がんばらない」「手を抜く」という意味ではありません。


「自分の軸に合わない無理を、きちんと手放していく」


という姿勢に近いのだと感じています。


2. 地域の文脈の整理


もう一つ忘れてはならないのが、「地域の文脈」です。


同じ診療科・同じ規模のクリニックであっても、



  • 都市部の駅前

  • 車社会のベッドタウン

  • 高齢化が進む地方都市


では、求められる役割も、続けやすい診療スタイルもまったく違います。


似た診療科が多いエリアで「その延長線上」を目指すのか。あえて角度を変えてポジションを取るのか。地域包括ケアの中で、病院や他院とどう役割分担していくのか。


地域の中での自院の立ち位置を整理することは、長期的に無理のない経営を続けるうえで欠かせない視点です。


軸があるクリニックは、迷い方が変わる


自分の軸と地域の文脈が整理されていると、外側の変化に対する「迷い方」が変わります。



  • 新しい加算ができたとき

  • 周辺に競合が増えたとき

  • 人件費・光熱費が上がったとき

  • スタッフが産休・退職で抜けるとき


こうした出来事は、どのクリニックにも起こります。


軸がないまま向き合うと、トレンドや周囲の動きに流されやすくなります。


一方で軸があるクリニックは、



  • うちの診療スタイルと合うか

  • 地域で担いたい役割に沿っているか

  • 10年後の自分が見て納得できるか


という問いで判断できます。


結果として、「やらない」ことを選ぶ勇気が持てる。
それが持久戦としての経営を支える力になります。


「整理セッション」は、その軸づくりの入り口


このシリーズ第1回では、情報過多の時代だからこそ思考を整える必要性についてお話ししました。第2回では、「成功/失敗」という二元論では測れないグラデーションについて触れました。


そして第3回の今回は、


「細く長く続ける」クリニック経営のために、自分の軸と地域の文脈をどう整理するか


という視点で、まえやまだ純商店の価値観を少し深くお伝えしました。


私がお手伝いしている初回整理セッション(60分)は、まさにこの


自分の軸を言葉にし、地域の中での立ち位置を一緒に見つめ直す時間


として位置づけています。


派手な答えや「必ず伸びる処方箋」をお渡しする場ではありません。


むしろ、院長先生の経験や迷いをすべてテーブルに並べ、


「自分はどうありたいのか」「この地域でどんな役割を担いたいのか」


を一緒に確かめていく時間です。


「続けていく」ために、いま立ち止まる


もし今、



  • 数字や制度の変化に追われて、立ち止まる余裕がない先生

  • このままの働き方で10年後も笑って診療できるか不安な先生

  • 開業前に、自分の軸を言葉にしておきたいと感じている先生


がいらっしゃったら。


「どう伸ばすか」より先に、「どう続けたいのか」。
そしてそのために、何を手放してよいのか。


一度、一緒に整理してみませんか。


医療は、人の人生に寄り添う仕事です。だからこそ、院長先生ご自身が無理なく診療を続けられることが、患者さんと地域にとってのいちばんの安心につながると、私は思っています。


クリニックの経営に正解の図面はありません。ときに迷い、ときに立ち止まりながら、それでも前に進んでいくものだと感じています。



「なぜ“整理”から始めるのか」シリーズ一覧




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