生活習慣病管理加算・充実管理加算をどう受け止めるか──“正解”ではなく“納得解”で考える
2026年診療報酬改定で、生活習慣病管理料の評価体系が見直されました。
これまでの外来データ提出加算は見直され、生活習慣病管理料の中に、充実管理加算(30・20・10点)という段階評価が設けられています。
あわせて、生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)そのものについても、包括範囲や療養計画書、連携評価などの整理が進められました。
今回の改定は、単純に「点数が上がった・下がった」で終わる話ではなく、生活習慣病外来をどう設計するかが問われている改定のように感じます。
生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)はどう見直されたのか
生活習慣病管理料は、今回の改定でも、検査や注射などを包括評価する「管理料(Ⅰ)」と、検査等を出来高算定とする「管理料(Ⅱ)」の2区分が維持されています。
大枠としては、高血圧症・糖尿病・脂質異常症に対する継続的な疾病管理を評価する制度ですが、今回の改定では、その運用の中身が少し整理されました。
特に管理料(Ⅱ)については、生活習慣病とは直接関係の乏しい医学管理料や情報提供料の一部が包括範囲から除外され、出来高で算定できるようになります。
たとえば、特定薬剤治療管理料、救急外来医学管理料、傷病手当金意見書交付料などが挙げられています。
これは、生活習慣病に関連する総合的な管理の範囲を超えるものについては、別途適切に評価していく方向と見ることができそうです。
生活習慣病管理料(Ⅰ)では、定期検査の要件がより明確になった
今回の見直しでは、生活習慣病管理料(Ⅰ)について、原則として、必要な血液検査等を少なくとも6月に1回以上行うことが要件とされました。
この一文は小さく見えて、実は大きいと思います。
なぜなら、生活習慣病管理料(Ⅰ)は、単に「管理料を算定する制度」ではなく、定期的な検査と継続的な受診を前提とした制度であることが、より明確になったからです。
生活習慣病は、高血圧症・糖尿病・脂質異常症のように、短期ではなく長期で見ていく必要がある疾患です。
今回の改定は、その前提を制度上もはっきりさせた、と受け止めています。
療養計画書の負担軽減は、現場には大きい
生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)をめぐって、現場で関心が高いのは療養計画書だと思います。
これまで、療養計画書は「説明する」「交付する」だけでなく、患者署名まで含めて負担感が大きいと感じていた医療機関も少なくなかったのではないでしょうか。
今回の見直しでは、患者の署名を受けることが不要とされました。
制度の思想を大きく変えるものではありませんが、外来の流れの中で考えると、この変更は小さくないと思います。
生活習慣病管理料の見直しは、「厳しくなった」だけではなく、「続けやすくする工夫」も同時に入っていると見ることができます。
療養計画書は、外来設計の見直しで負担を下げられるかもしれない
療養計画書の負担を考えるとき、制度だけを見ると「また仕事が増える」と感じやすいかもしれません。
ただ、ここは外来の設計として考える余地もあります。
業務改善の考え方として、ECRS(イクルス)の法則という整理があります。
- Eliminate(そもそも無くせないか)
- Combine(一緒にできないか)
- Rearrange(順番を変えられないか)
- Simplify(もっと簡素化できないか)
今回の改定で患者署名が不要になったのは、まさに「Eliminate」に近い動きです。
その上で、たとえば
- 診察の横でアシスタントが作成する
- 事前のWEB問診を活用する
- 雛形を用意する
- AI補助を活用して下書きを整える
といった工夫は、「Combine」「Rearrange」「Simplify」にあたると思います。
制度対応を単なる負担増として受け止めるだけでなく、生活習慣病外来の流れを見直すきっかけにできるかどうかで、現場のしんどさは変わってくるかもしれません。
充実管理加算は、「提出」よりも「実績」を見る評価に近づいている
今回の改定で新設された充実管理加算は、従来の外来データ提出加算の見直しとして位置付けられています。
ただ、今回の資料から感じるのは、単に「データを出しているかどうか」を見る制度ではなく、生活習慣病に関連するガイドライン等に沿った診療を行い、その実績を持っているかを見る制度に近づいている、ということです。
評価指標としては、検査実施率、継続受診率、糖尿病患者の眼科・歯科連携などが示されています。
つまり、体制や提出の有無だけでなく、実際にどんな管理をしているかを見ようとしているように見えます。
糖尿病患者の眼科・歯科連携が評価される意味
今回の改定では、糖尿病患者について、眼科又は歯科を標榜する他の医療機関との連携を行う場合の評価が新設されています。
眼科医療機関連携強化加算、歯科医療機関連携強化加算が年1回60点で設けられています。
これは単なる加算の追加ではなく、糖尿病を内科単独で抱え込むのではなく、地域の中で合併症予防まで含めて支える方向を示しているように感じます。
生活習慣病管理は、治療だけでなく、重症化予防や継続支援も含めた外来へ移っていく。その象徴の一つが、この連携評価かもしれません。
ただし、評価方法の詳細はまだ見えていない
ここで注意が必要なのは、充実管理加算の評価構造が見えてきた一方で、評価方法の詳細はまだ十分には見えていないということです。
たとえば、30点・20点・10点の具体的な判定方法や、「上位20%」の考え方が、全国比較なのか、一定基準との比較なのか、現時点の説明資料だけでは断定しにくい部分があります。
そのため、今の段階で「必ず30点を狙うべき」といった断定をするのは、少し早いように思います。
今回の改定は、「体制」から「実績」へ寄っている
今回の見直し全体を通して感じるのは、評価の視点が少し変わってきていることです。
これまでは「体制があるかどうか」が中心でした。
今回はそこに加えて、「実際に継続管理できているか」「必要な検査や連携が回っているか」といった、診療の中身や積み重ねが見られ始めているように感じます。
これは、生活習慣病外来を単なる点数の話ではなく、地域医療の中で何を担う外来なのかという話に近づける動きでもあるのかもしれません。
正解はまだ示されていない
この段階で、
- 最大30点を目指すべきか
- 20点で十分と考えるか
- あえて算定しないか
制度は答えを出していません。
どれも制度上はあり得る選択です。
だからこそ問われるのは、どの選択が自院にとって納得できるかだと思います。
点数よりも、生活習慣病外来の設計
仮に30点を取れたとしても、
- 院長が疲弊し
- スタッフが入力作業に追われ
- 本来大切にしたい診療が削られている
のであれば、それは本当に質の高い外来なのか、立ち止まって考える必要があるかもしれません。
逆に、点数は高くなくても、
- 継続管理が自然に回り
- 患者との関係が安定し
- 必要な検査や連携が無理なく行われている
外来であれば、それは別の意味で質が高いと言える可能性があります。
制度の評価と、自院が目指す診療像は、必ずしも一致しません。
今できること
今の段階で急いで結論を出す必要はないように思います。
むしろ今できるのは、
- 自院の生活習慣病外来は、地域の中で何を担うのか
- どこまで制度に合わせるのか
- 何を守りたいのか
- 業務の流れをどう整えるのか
を、一度言葉にしてみることです。
制度は変わります。けれど、外来の設計思想は、そう簡単に変えるものではありません。
まとめ
- 生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)は区分を維持したまま見直された
- 管理料(Ⅰ)では、必要な血液検査等を少なくとも6月に1回以上行う要件が示された
- 療養計画書は患者署名が不要となり、負担軽減が図られた
- 管理料(Ⅱ)では、包括範囲の整理が行われた
- 充実管理加算は、提出だけでなく実績を見る評価に近づいている
- ただし、評価方法の詳細は今後の通知や疑義解釈を確認する必要がある
今回の改定も、制度に振り回される材料ではなく、自院の生活習慣病外来をどう設計するかを見直すきっかけとして使えるはずです。
制度の「正解」を探すよりも、自院の「納得解」をどう作るか。
その問いの方が、長く続く外来につながるように思います。
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