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クリニック開業・経営コラム

生活習慣病管理加算・充実管理加算をどう受け止めるか──“正解”ではなく“納得解”で考える

更新日:2026年4月22日

※本記事は2026年6月施行予定の制度内容、および2026年4月20日公表の疑義解釈資料(その3)までの内容をもとに整理しています。今後、追加の疑義解釈や事務連絡等が公表された場合は、内容を順次更新する可能性があります。制度の「正解」を断定するものではなく、自院で判断する際の材料としてお読みください。

2026年診療報酬改定で、生活習慣病管理料の評価体系が見直されました。

これまでの外来データ提出加算は見直され、生活習慣病管理料の中に、充実管理加算(30・20・10点)という段階評価が設けられています。

あわせて、生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)そのものについても、包括範囲や療養計画書、連携評価などの整理が進められました。

今回の改定は、単純に「点数が上がった・下がった」で終わる話ではなく、生活習慣病外来をどう設計し、どう運営していくかが問われている改定のように感じます。

生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)はどう見直されたのか

生活習慣病管理料は、今回の改定でも、検査や注射などを包括評価する「管理料(Ⅰ)」と、検査等を出来高算定とする「管理料(Ⅱ)」の2区分が維持されています。

大枠としては、高血圧症・糖尿病・脂質異常症に対する継続的な疾病管理を評価する制度ですが、今回の改定では、その運用の中身が少し整理されました。

特に管理料(Ⅱ)については、生活習慣病とは直接関係の乏しい医学管理料や情報提供料の一部が包括範囲から除外され、出来高で算定できるものが整理されています。

これは、生活習慣病に関連する総合的な管理の範囲を超えるものについては、別途適切に評価していく方向と見ることができそうです。

また、糖尿病を主病とする患者については、糖尿病以外の疾患に関する在宅自己注射指導管理料の扱いも見直されており、今回の改定は単なる点数調整ではなく、生活習慣病外来の実務運用そのものを整え直す改定と受け止めた方がよさそうです。

生活習慣病管理料(Ⅰ)では、定期検査の要件がより明確になった

今回の見直しでは、生活習慣病管理料(Ⅰ)について、原則として、必要な血液検査等を少なくとも6か月に1回以上行うことが要件とされました。

この一文は小さく見えて、実は大きいと思います。

なぜなら、生活習慣病管理料(Ⅰ)は、単に「管理料を算定する制度」ではなく、定期的な検査と継続的な受診を前提とした制度であることが、より明確になったからです。

生活習慣病は、高血圧症・糖尿病・脂質異常症のように、短期ではなく長期で見ていく必要がある疾患です。

今回の改定は、その前提を制度上もはっきりさせた、と受け止めています。

同時にこれは、算定の可否だけでなく、検査漏れを防ぐ運用や、継続受診を支える外来の流れまで見直す必要がある、ということでもあります。

療養計画書の負担軽減は、現場には大きい

生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)をめぐって、現場で関心が高いのは療養計画書だと思います。

これまで、療養計画書は「説明する」「交付する」だけでなく、患者署名まで含めて負担感が大きいと感じていた医療機関も少なくなかったのではないでしょうか。

今回の見直しでは、患者の署名を受けることが不要とされました。

制度の思想を大きく変えるものではありませんが、外来の流れの中で考えると、この変更は小さくないと思います。

生活習慣病管理料の見直しは、「厳しくなった」だけではなく、「続けやすくする工夫」も同時に入っていると見ることができます。

署名廃止で、診察室のフローはどう変わるか

署名が不要になると、診察室では「説明して、署名をもらい、回収する」という一連の工程がなくなります。

患者一人あたりでは数分かもしれませんが、生活習慣病患者が多い外来では、この差は小さくありません。

一方で、説明そのものが不要になるわけではありません。

療養計画書を用いて説明し、患者の同意を得ることは引き続き必要であり、署名の代わりに、説明日や説明者を診療録に残す重要性はむしろ増します。

また、患者の求めに応じて電子カルテ情報共有サービスの患者サマリーを活用し、必要事項を入力した上で診療録に記録と同意を残していれば、療養計画書の作成・交付をしているものとみなす取扱いもあります。

紙を前提にした運用だけでなく、どこまで院内フローを簡素化・標準化できるかを考える余地は以前より広がっています。

つまり、今回の見直しは単なる負担軽減ではなく、診察室の時間の使い方と、カルテ記載や作成フローをどう整えるかが問われる変更でもあります。

署名廃止で生まれた時間を、単に患者数を増やすために使うのか、それとも説明の質や継続支援に回すのか。
ここにも、院長の判断が出やすいように思います。

生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)の使い分けは、経営判断でもある

生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは、制度上は「包括か、出来高か」という整理になります。

管理料(Ⅰ)は、検査や注射なども含めた包括評価です。管理料(Ⅱ)は、管理部分を評価しつつ、検査や注射は別途出来高で算定します。

そのため、単に点数表だけを見るのではなく、自院の患者層、検査頻度、月ごとの運用のばらつきまで含めて考える必要があります。

たとえば、病状が比較的安定しており、定期検査も一定の周期で回る患者が中心なら、(Ⅰ)が合いやすいかもしれません。

一方で、検査頻度が高い患者や、月によって必要な検査・処置の差が大きい患者では、(Ⅱ)の方が実態に合う可能性があります。

さらに今回は、(Ⅰ)を算定した月から6か月間は(Ⅱ)へ移行できないというルールがあるため、患者の状態が落ち着いたからといって、短期的な判断で(Ⅰ)から(Ⅱ)へ切り替えることはできません。

つまり、これは「どちらが得か」だけの話ではなく、自院で無理なく続けられる管理の形をどうつくるかという判断でもあります。

充実管理加算は、「提出」よりも「実績」を見る評価に近づいている

今回の改定で新設された充実管理加算は、従来の外来データ提出加算の見直しとして位置付けられています。

ただ、今回の資料から感じるのは、単に「データを出しているかどうか」を見る制度ではなく、生活習慣病に関連するガイドライン等に沿った診療を行い、その実績を持っているかを見る制度に近づいている、ということです。

評価指標としては、各疾患ごとの継続受診、検査、糖尿病患者の眼科・歯科連携などが示されています。

つまり、体制や提出の有無だけでなく、実際にどんな管理をしているかを見ようとしているように見えます。

点数の算定要件を理解することは重要ですが、それ以上に重要なのは、その制度を自院の運営の中でどのように位置づけるかを考えることです。

検査実施率や継続受診率を維持するには、診察室だけでなく、予約、事務、検査案内、受診勧奨まで含めた流れが回っていなければ難しいからです。

糖尿病患者の眼科・歯科連携が評価される意味

今回の改定では、糖尿病患者について、眼科又は歯科を標榜する他の医療機関との連携を行う場合の評価が新設されています。

眼科医療機関連携強化加算、歯科医療機関連携強化加算が年1回60点で設けられています。

これは単なる加算の追加ではなく、糖尿病を内科単独で抱え込むのではなく、地域の中で合併症予防まで含めて支える方向を示しているように感じます。

さらに今回の資料では、この眼科・歯科連携の実績が、充実管理加算の評価指標の一部として位置づけられています。

つまり、眼科・歯科連携を自然に案内できる外来フローを整えることは、年1回60点の話だけではなく、生活習慣病外来全体の質をどう作るかという話にもつながっています。

一方で、年1回の紹介状発行や返書確認だけを目的化すると、現場が疲れてしまう可能性もあります。

大切なのは、連携加算を取ること自体ではなく、糖尿病患者に対して、眼科・歯科受診を自然に勧められる外来フローをどう作るかだと思います。

充実管理加算は、全国比較の相対評価として見た方がよい

ここは、改定対応の中でもかなり重要なポイントだと思います。

充実管理加算1の30点、加算2の20点は、単に一定の絶対基準を満たせば付くという整理ではなく、届出を行う保険医療機関全体の中での相対評価として示されています。

つまり、自院が現状維持でも、他院の実績が上がれば、自院の位置づけは相対的に下がり得ます。

この構造だけを見ると、「とにかく数字を取りに行く」方向へ現場が振れやすくなります。

ただ、だからこそ重要なのは、自院としてどこまでこの評価を追うのかを先に決めることです。

なお、令和8年3月31日時点で外来データ提出加算の届出を行っている医療機関には、充実管理加算1の実績要件を満たすものとする経過措置が設けられています。

さらに、2026年4月20日公表の疑義解釈資料(その3)では、この経過措置について、3月31日時点で実際に外来データ提出加算を算定していなくても、4月1日から算定できるよう試行データが適切に提出されているものとして厚生労働省保険局医療課から通知を受けていた場合は、要件を満たすという取扱いが示されました。

届出実務に関わる方は、自院がこの救済ルールに該当するかどうか、改めて確認しておいた方がよいと思います。

そのため、現時点で必要なのは、焦って「上位20%」を追いかけることというより、今の外来フローをどう維持・改善するかを冷静に整理することではないかと思います。

今回の改定は、「体制」から「実績」へ寄っている

今回の見直し全体を通して感じるのは、評価の視点が少し変わってきていることです。

これまでは「体制があるかどうか」が中心でした。

今回はそこに加えて、「実際に継続管理できているか」「必要な検査や連携が回っているか」といった、診療の中身や積み重ねが見られ始めているように感じます。

これは、生活習慣病外来を単なる点数の話ではなく、地域医療の中で何を担う外来なのかという話に近づける動きでもあるのかもしれません。

診療の「質」を数値で見る流れが強まる中で、院内では、検査実施率や継続受診率を単に事務作業として追うのではなく、どの患者に何が抜けやすいのかを見える化していく必要も出てきそうです。

点数を取るかより、どう運営するか

仮に30点を取れたとしても、

  • 院長が疲弊し
  • スタッフが制度対応だけに追われ
  • 本来大切にしたい診療が削られている

のであれば、それは本当に質の高い外来なのか、立ち止まって考える必要があるかもしれません。

逆に、点数は高くなくても、

  • 継続管理が自然に回り
  • 患者との関係が安定し
  • 必要な検査や連携が無理なく行われている

外来であれば、それは別の意味で質が高いと言える可能性があります。

制度の評価と、自院が目指す診療像は、必ずしも一致しません。

制度の理解だけでは判断は決まりません。
実際には、自院としてどう受け止めるか、どこまで整えるかを整理する時間が必要になります。

だからこそ、「上位20%に入るか」だけでなく、

  • 検査漏れを防ぐ体制をどう作るか
  • 受診が途切れやすい患者をどう支えるか
  • 眼科・歯科連携を誰がどのタイミングで案内するか
  • スタッフに何を共有するか

といった、運営の話に落とし込んで考えることが必要になります。

今できること

今の段階で急いで結論を出す必要はないように思います。

むしろ今できるのは、

  • 自院の生活習慣病外来は、地域の中で何を担うのか
  • どこまで制度に合わせるのか
  • 何を守りたいのか
  • 業務の流れをどう整えるのか

を、一度言葉にしてみることです。

具体的には、たとえば次のような整理から始めるのが現実的です。

  • 生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)の患者像をどう分けるか
  • 6か月検査の漏れを誰がどこで確認するか
  • 療養計画書の作成・説明・カルテ記載の流れをどう簡素化するか
  • 糖尿病患者への眼科・歯科案内をどのタイミングで行うか
  • 継続受診率や検査率を、院内でどこまで見える化するか

制度は変わります。けれど、外来の設計思想は、そう簡単に変えるものではありません。

生活習慣病管理料の見直しは、単独の制度変更として見るよりも、外来機能分化という構造の中で理解すると整理しやすくなります。
また、制度変更を踏まえて診療所として実務面で何を整えておくべきかについては、こちらの記事でも整理しています。
外来機能・生活習慣病・OTC薬、診療所が備えるべき実務ポイント

※紹介患者受入加算や逆紹介割合、紹介状なし受診減算なども含めた外来全体の役割整理については、こちらの記事でまとめています。
2026年診療報酬改定で外来の役割はどう変わるのか?|外来機能分化という構造から読み解くクリニックの役割

まとめ

  • 生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)は区分を維持したまま見直された
  • 管理料(Ⅰ)では、必要な血液検査等を少なくとも6か月に1回以上行う要件が示された
  • 療養計画書は患者署名が不要となり、運用の簡素化が進められた
  • 管理料(Ⅰ)を算定した後は、6か月間(Ⅱ)へ移行できない点に注意が必要である
  • 充実管理加算は、提出だけでなく実績を見る評価に近づいている
  • 糖尿病患者の眼科・歯科連携は、外来全体の評価構造の中でも意味を持ち始めている
  • 充実管理加算1の経過措置については、試行データ提出に関する救済ルールも確認しておきたい

今回の改定も、制度に振り回される材料ではなく、自院の生活習慣病外来をどう設計するかを見直すきっかけとして使えるはずです。

制度の「正解」を探すよりも、自院の「納得解」をどう作るか

その問いの方が、長く続く外来につながるように思います。

制度判断が重くなり始めた院長へ

生活習慣病外来をどう設計するか迷い始めた段階で、相談されることがあります

生活習慣病管理料や充実管理加算のような制度改定では、要件の確認だけでなく、どこまで制度に合わせるか、何を優先するか、院内でどう回すかの整理が必要になることがあります。

こちらで行っているのは、正解を提示することではなく、論点と優先順位を整理し、自院としての判断の前提を整える支援です。

相談内容が整理できていない段階でも問題ありません。
むしろ、何から考えるべきかを整理するところから始まることが多くあります。

臨床と同じように、経営判断も「症状が出てから」ではなく、「違和感の段階」で整理することに意味があります。

※相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。
※実務代行や御用聞き型の支援は行っていません。

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