糖尿病内科経営シリーズ 第3回|再診率と通院継続が、経営と働き方を安定させる
糖尿病内科外来は、忙しさそのものよりも、「1日が読めないこと」で消耗が積み重なりやすい領域です。
初診が重い日が続いたり、説明が長引いたり、急な相談が重なったり。
結果として、外来は「詰まる」。そして、詰まった日の疲れは、翌日に持ち越されます。
前回(第2回)では、糖尿病外来が回らなくなる3つの理由として、
- 初診が重い
- 再診の幅が広い
- 指導・説明が院長に集中しやすい
という構造を整理しました。
今回はその続きとして、詰まりを「減らす方法」ではなく、外来が揺れにくくなる側の構造を整理します。
外来が安定しているときの「共通する感覚」
外来が安定しているクリニックでは、患者数が少ないわけでも、院長が暇なわけでもありません。
それでも、多くの場合、院長の中にはこんな感覚があります。
「今日はだいたい、こんな1日になりそうだ」
急に混み合うことはあっても、それが想定外ではなく、想定の範囲内に収まっている。
この感覚があるかどうかで、1日の疲れ方は大きく変わります。
ここで言う「安定」とは、患者数が増えることでも、忙しさが減ることでもなく、
外来の1日が大きく外れない状態を指しています。
再診率は「目標」ではなく、外来の性質として現れる
再診率という言葉は、しばしば経営指標として語られます。
ただ、再診率を「上げるべき数値」として扱い始めると、外来の見え方は一気に歪みやすくなります。
本来、再診率は外来の構造がどうなっているかを、結果として映し出しているにすぎません。
- 外来の流れが、毎回大きく変わらないか
- 説明や判断が、その場対応になり続けていないか
- 通院が、外来の流れの中に自然に組み込まれているか
こうした要素が積み重なった結果として、「再診が多い外来」になります。
再診率は、操作する対象というより、外来の性質がにじみ出た結果と捉えたほうが、実態に近いように思います。
再診が読めると、外来の何が変わるのか
再診がある程度見通せるようになると、外来は少しずつ、静かに揺れにくくなっていきます。
それは、患者数が増えるからでも、外来が楽になるからでもありません。
変わるのは、1日の外来数の「振れ幅」です。
日によって極端に多い日と少ない日が続く状態は、院長にも、スタッフにも、想像以上の負荷をかけます。
一方で、外来数の振れ幅が小さくなると、次のような変化が積み重なっていきます。
- スタッフ配置の見通しが立ちやすくなる
- 説明や対応のリズムが整ってくる
- 「今日はどうなるか分からない」という消耗感が減る
忙しいままでも、揺れにくい。
この状態が、結果として「続けられる外来」を支えます。
通院が続く外来は、「努力」よりも「設計」の結果
通院が続くかどうかは、患者さんの意識やモチベーションの問題として語られがちです。
しかし実際には、院長がどれだけ丁寧に説明していても、通院が途切れることはあります。
逆に、特別な工夫をしている意識がなくても、自然と通院が続く外来もあります。
その違いは、個々の努力というより、外来全体の設計の中にあります。
- 外来の流れが、毎回大きく変わらない
- 判断や説明が、院長一人に集中しすぎない
- 「次に何が起きるか」が、外来側である程度整理されている
こうした状態が整ってくると、通院継続は「頑張ってつくるもの」ではなく、外来の構造として自然に現れるものになっていきます。
揺れにくさが見えてきたとき、次に立ち上がる問い
再診が読みやすくなり、外来の振れ幅が小さくなると、経営面でも、働き方の面でも、見通しは立ちやすくなります。
ただし、その状態を院長一人で支え続けるのは、決して楽なことではありません。
糖尿病外来は、説明・判断・継続支援が重なりやすい領域です。
外来が揺れにくくなってきたときこそ、次の問いが自然に浮かびます。
「この安定は、誰が支えているのか」
「どこまでを院長が持ち、どこからをチームで担うのか」
まとめ|安定とは「増える」ことではなく、「揺れにくくなる」こと
再診や通院継続は、外来を安定させるための手段でも目標でもありません。
外来の構造が整った結果として、静かに現れてくるものです。
第2回で整理した「詰まりやすい外来」の反対側には、こうした揺れにくい外来の姿があります。
次回(第4回)予告|多職種・チーム設計へ
第3回では、再診や通院継続を「増やすための施策」ではなく、外来が揺れにくくなる構造の結果として整理しました。
ただ、この揺れにくさを院長一人で支え続けるのは、現実的には簡単ではありません。
次回の第4回では、糖尿病外来をチームで支える設計(多職種連携・役割の分担・院内の動き方)について、制度解説ではなく「外来が回る構造」という視点から整理していく予定です。
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