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クリニック開業・経営コラム

【2026年度診療報酬改定・骨子案】クリニックが今から整えるべき“3つの重点テーマ”

2026年度診療報酬改定の骨子案が公表され、クリニックに求められる方向性が、以前よりも“読み取りやすい形”で示されてきました。
今回の改定は単なる点数調整ではなく、「地域で役割を果たし、持続的に機能するクリニックをどう支えるか」という構造的なテーマが背景にあります。

本記事では、骨子案を踏まえ、クリニックが今後、診療報酬上の評価を受けながら地域医療の一員として機能し続けるために、今から整えておきたいことを
①地域医療・かかりつけ医機能 ②医療DX ③人材・業務改善による経営基盤の安定の3つに整理してお伝えします。

開業前〜5年以内の院長先生が「今から何を整えておくべきか」を考えるうえでの、整理材料としてご活用いただければ幸いです。
※診療報酬改定を“点数の上下”ではなく「政策意図」として読む視点は、「診療報酬改定を“読み解く力”を持つ|2026年に向けて院長が備えるべき経営視点」でも詳しく扱っています。


🏥 1. 地域医療・かかりつけ医機能の強化

まず最も強く求められるのは、地域での役割を明確にし、患者を継続的に支える体制を“仕組みとして”整えることです。
「何でも屋」として抱え込むのではなく、地域の中での立ち位置を丁寧に整理することが、改定後の評価にも直結していきます。
関連する考え方は、「すべてを抱え込まない医療へ ― 地域包括ケアと“続けられる”クリニック経営」でも整理しています。

👨‍⚕️ 継続診療・相談の体制を整える

生活習慣病などの慢性疾患を中心に、
「この人の健康は、このクリニックが観ている」と言える継続管理が、診療の質だけでなく、経営の安定にもつながります。

  • 健康相談・生活習慣病管理を、計画的かつ継続的にフォローする
  • 必要時には専門医・病院へ迅速に紹介し、治療後は逆紹介を受けて外来フォローへつなげる
  • 夜間・休日の連絡方法や、いざというときの相談導線を“患者に伝わる形”で明確にする

「一見の外来」を増やす発想よりも、継続フォロー型の医療をどれだけ設計できるかが問われる流れになっています。

🏡 在宅医療・介護連携の強化

骨子案では、在宅医療・介護との連携も明確に位置づけられています。
在宅医療をすべて自院で担う必要はありませんが、「自院が在宅・介護とどう関わるのか」を言語化しておくことは避けられません。

  • 訪問診療や施設連携を、どの範囲・頻度まで担うかを整理する
  • 急変時の入院受け入れ先(後方支援病院)をあらかじめ決め、家族・施設とも共有する
  • 訪問看護・ケアマネとの情報共有方法(連絡手段・タイミング・記録)を整える

🤝 病院との機能分化・連携

高度な検査・専門治療は病院、診断後の外来フォローや慢性期管理はクリニック。
こうした「病院と診療所の役割分担」は、今後さらに明確に求められます。

  • 紹介・逆紹介のフローを明文化し、スタッフも含めて共有する
  • 地域医療連携室との連絡ルール(誰が・いつ・どう連絡するか)を決める
  • 退院後のフォロー(受診タイミング・検査間隔・生活指導)を“運用”として設計する

「とにかく患者数を増やす」ではなく、「地域の中で自院がどんな役割を担うのか」を出発点にすることが、改定後も評価され続けるクリニックの共通点になっていきます。


💻 2. 医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入

DXは単なる“便利ツール”ではなく、診療報酬上の評価を受け、持続的に機能していくための前提条件になりつつあります。
ただし、最初から難しく捉える必要はありません。現場の詰まりをほどく手段として、段階的に整えるのが現実的です。
「DXを難しくとらえないためのステップ」は、「院長が設計する、現場から始める医療DX|“持続可能な経営”を実現する5ステップ」でも整理しています。

📱 ICT活用による業務効率化

  • 電子カルテ・予約システムの導入/見直し
  • オンライン診療・オンライン再診の活用(運用設計を含む)
  • AI問診・タブレット問診などによる事前情報収集

ポイントは、「人を増やす前に、業務を整理し、ICTで減らせるものを減らす」という順番です。
医師が「医師でなければできない仕事」に集中できる設計が、結果として診療の質と経営の安定につながります。

📜 電子処方箋と薬局連携

電子処方箋は国が普及を進める仕組みであり、医薬品の適正使用・患者の利便性・情報連携を同時に高める手段です。

  • 処方歴・服薬状況を薬局と共有しやすくなる
  • リフィル処方との組み合わせで慢性疾患フォローの効率化が期待できる
  • 重複投薬や相互作用のチェックに役立つ

🔗 医療機関・薬局・介護との情報連携

“地域で患者情報をつなぐ”仕組みを整えることも重要です。
電話・FAXを完全にゼロにする必要はありませんが、依存度を下げる設計が、スタッフ負担やミスの予防につながります。

  • 検査結果・紹介状・退院サマリーの共有をスムーズにする
  • 在宅・介護との連絡を、手段・タイミング・記録の観点で見直す
  • 院内の記録様式を統一し、連携先から読まれやすい情報に整える

👩‍⚕️ 3. 人材確保と業務改善による経営基盤の安定

骨子案では、物価・人件費・光熱費の高騰に触れつつ、「賃上げ」「人材確保」「働き方の見直し」が明確に位置づけられています。
収入(売上)だけでなく、「働き方とコスト構造そのものを見直すこと」が、クリニック経営の中心テーマになりました。

💵 医療従事者の処遇改善(賃上げ)

スタッフの処遇をどう整えるかは、採用・定着の両面で大きな影響があります。

  • 地域相場と比べた給与水準の確認・見直し
  • 昇給・賞与だけでなく、「役割」に応じた手当や評価の仕組みを整える
  • 勤務時間・シフト・有給取得の実態を見える化し、働きやすさを高める

「人が集まらない/続かない」を“気合い”で解決しないための考え方は、「スタッフが定着しない時代に、“仕組みで支える”クリニック経営とは」でも整理しています。

🔄 タスク・シフティング/シェアリングとクラーク活用

医師・看護師の負担を減らすには、「誰が・どの仕事を・どこまで担うのか」を整理し直すことが欠かせません。
ただし、人材不足の中で新たにクラークを採用することが難しいクリニックも少なくありません。

そこで、「外部リソースやDXも含めて業務を組み替え、その一手段としてクラーク活用を検討する」という順番が現実的です。

  • まず医師業務を棚卸しし、「医師でなくてもできる仕事」を洗い出す
  • 説明補助・入力補助・書類準備など、クラークが担える業務を切り出す
  • フルタイム雇用が難しければ、スポット勤務・外部委託・オンライン代行を組み合わせる
  • AI問診やテンプレート化などDXを併用し、「人を増やさずに楽にする」余地を探る

クラークを増やすこと自体が目的ではなく、「医師が診療に集中できるよう、チームと仕組みを再設計する」ことが本来の目的です。

💡 コスト増への対策と経営効率の向上

光熱費・材料費・委託費が上昇する中で、改定だけでコスト増を吸収するのは難しくなっています。

  • 固定費(家賃・機器リース・人件費)と変動費(材料費・検査委託費など)の構造を把握する
  • DXや業務見直しで「時間」と「残業」を削減し、ムリなく回る運用を優先する
  • 外来の“数”だけに依存しない、慢性疾患フォローや連携を含めた収益設計を検討する

物価高時代の備え方は、「電気代・人件費・材料費…上がり続けるコストにどう備えるか|物価高時代の医療経営」でも取り上げています。
改定に翻弄されるのではなく、「変化が来ても続けられる土台」を先に整えておくことが重要です。


📌 まとめ ― 改定を“きっかけ”に、続けるための土台を先に整える

2026年度診療報酬改定の骨子案は、クリニックに対して次の3つを強く求めているように見えます。

  • 地域での役割をはっきり示すこと(かかりつけ医機能・在宅・病診連携)
  • ICT・DXを前提にした診療体制をつくること
  • 人材と業務の“持続可能な構造”を整えること

いずれも、「改定が確定してから急いで対応する」には重すぎるテーマです。
だからこそ、今のうちから

  • 自院の強み・弱みの棚卸し
  • 地域連携・在宅との関わり方の整理
  • DX導入・クラーク活用を含めた、業務と人の再設計

といった「土台づくり」を進めておくことで、改定をきっかけに“続けられるクリニック”を育てることができます。

※なお、骨子案の次に「基本方針(案)」「点数(個別改定項目)」へと議論が進みます。
“何が変わるか”だけでなく、自院の優先順位(どこまで・何から)を先に整えておくと、後から慌てにくくなります。

参考資料

本稿で参照した資料: 令和8年度 診療報酬改定に関する基本方針(骨子案)- 厚生労働省

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