書く・言葉にする・振り返る――シンプルな行動を積み重ね、チームの自律を育てます。
本記事は、教育・企業・スポーツの現場で成果を上げてきた「原田メソッド」を、クリニックに実装するための実践手順です。
参考: 原田教育研究所 / 第1編(インシデントを“学びの材料”に変える) / 第2編(“続ける仕組み”のつくり方)
原田メソッドとは
「目標は“目的”とセットで言語化し、日々の行動に落とし込む」。原田メソッドは、教育現場から生まれ、現在ではスポーツ・企業経営・医療まで広く応用されるセルフマネジメントの体系です。
開発者の原田隆史氏(原田教育研究所代表)は、荒れていた学校の立て直しと陸上部の全国優勝の経験をもとに体系化。以後、大谷翔平選手(MLB)や柳井正氏(ユニクロ)をはじめ、カルビー・味の素・ANAなど、多くの組織・個人に広がっています。
クリニックでは、患者・地域・チームのための“目的”を言葉にし、承認・セルフトーク・振り返りを仕組みとして回すことで、現場の自律と継続的な改善を促します。精神論ではなく、設計と習慣でチームを変えていく点が特徴です。
コア要素(クリニック実装の観点)
- 目標×目的の言語化:「何を達成するか」だけでなく「誰のため・何のため」を明確に。
- オープンウィンドウ64:中心に目標、周囲に必要要素と具体行動を書き出す思考整理の型。
- 承認(4種):結果/プロセス/成長/存在を意図して増やし、心理的安全性を育てる。
- セルフトーク:良い出来は「よし」、失敗は「切替→次」と言語化して前向きな内的対話を習慣化。
- 振り返り:「もしもう一度やるなら?」で反省を学びに置き換え、90日単位で定着を確認。
1.なぜ今、原田メソッドか
2026年改定と人手不足のもと、情緒的価値(安心・わかりやすさ)と効率(再発防止・時間短縮)の両立が求められます。原田メソッドは、目標×目的の言語化と承認・セルフトーク・振り返りにより、現場の自律を高め、小さな改善を続ける土台を整えます。
2.クリニックでの導入ステップ(全3段階)
STEP1:共通言語をつくる(週1ミニ振り返り)
まずは共通の言葉と型から。週1回15分、全員で「良かったこと/学び/次やるなら」を共有。院内にプラス50語/マイナス50語を掲示し、言い換えを揃えます(例:「無理」→「今の体制だと難しい。こうすれば可能」)。
STEP2:目標×目的+「1つだけ改善」
年間テーマ(例:待ち時間体験の向上)を決め、目的(誰のために/何のために)まで言語化。各部署は月1で「1つだけ改善」を起案し、担当・期限・評価指標をセットします。数字ではなく「誰の行動がどう変わるか」に焦点を当てます。
STEP3:習慣化と可視化(90日)
90日ごとに改善実施率・再発率・安全感スコアを確認。良い承認や良い言葉の実例を可視化し、職種横断のペア振り返りを月2回実施して学びを固定化します。
3.医師・看護師・医療事務の実践例
医師の実践
外来の合間にセルフトーク(「今ここから」「次やるなら」)で思考を整える。診察後30秒メモで、患者説明の言い換え改善や再発予防の気づきを記録。会議では存在承認→事実確認→問いかけの順で対話を促進します。
看護師の実践
指示の受け渡しは復唱+ダブルチェックを標準に。新人には良かったことの共有を日次で行い、問題が起きた際は「もしもう一度やり直せるなら?」で改善思考を引き出します。
医療事務の実践
受付〜会計の滞留ポイントを毎週確認し、表示改善や声かけの言葉を磨く。クレーム対応は行動に限定して振り返り、次回の一言や導線変更を小さな実験として試します。
4.よくあるつまずきと回避策
- × 最初から完璧を目指す → ○ 小さな実験を2週間単位で回す。
- × 強い言葉で統制 → ○ 承認(結果・プロセス・成長・存在)を意図して増やす。
- × 報告数で評価 → ○ 改善実施率・再発率・安全感でチームの成熟度を確認。
- × 個人責任で終わる → ○ 仕組みの改善に置き換える(標準・掲示・導線)。
5.おわりに ― 自律は設計から生まれる
自律は意志ではなく設計で育ちます。言葉・承認・振り返り・小さな実験――これらを90日サイクルで回すことで、日常は「指摘の場」から「学びの場」へと変わります。原田メソッドは、組織を“管理する”ための手法ではなく、一人ひとりの「考える力」と「続ける力」を育てる仕組みです。
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