インシデントレポートの位置づけ
医療機関におけるインシデント/アクシデントレポートは、医療法で提出が直接義務づけられているわけではありません。 しかし厚生労働省のガイドラインや診療報酬制度の中で、「報告体制を整え、収集・分析・改善に活かすこと」 が強く求められています。
とくに医療安全対策加算の算定では、レポート運用が施設基準として必須です。単に「用紙を置いてある」だけでは不十分で、実際に報告が集まり、分析され、改善につながっていること が確認されなければなりません。 罰則を伴う法的義務ではなくとも、診療報酬算定の観点と医療安全・信頼性の確保の観点から、実質的に不可欠な仕組みと言えます。
ヒヤリとした出来事を表に出すことは、患者さんの安全を守るだけでなく、スタッフの安心感も生みます。「事故にならなくて良かった」で済ませず、小さな兆候を拾い、組織全体で改善する文化を育てることが大切です。
医師にとっての馴染み度
- 病院勤務医出身の院長先生
中規模以上の病院では医療安全管理部門・委員会が整備され、研修医からベテランまで日常的に「ヒヤリ・ハット報告」を求められます。馴染みは深い一方で、過去の経験から「やらされ感」が残っている場合もあります。 - クリニック勤務・開業歴が長い院長先生
小規模クリニックでは専任の医療安全管理者が不在で、レポート提出の体制自体がないことも。用語は知っていても、自院の経営にどう結びつくかまでは意識されていないケースが少なくありません。
言葉としての理解は広がっていても、「クリニック経営の文化として根づかせる」という発想は、まだ十分とは言えません。
経営者に求められる姿勢
インシデントレポートへの向き合い方は、院長先生が「勤務医的発想」にとどまるのか、「経営者としての覚悟」を持つのかを映す分岐点になります。具体的には——
- 院長先生ご自身が率先して記録・承認・確認に関与する
- 提出された報告を読み、改善アクションまで落とし込む
- 報告を歓迎する姿勢を明確にし、安心して声を上げられる環境をつくる
これらの振る舞いはスタッフの心理的安全性を高め、改善の循環を生み出します。すなわち、インシデントへの関与は経営姿勢そのものの表明です。
当社と取引いただく際の立ち位置
当社が提供するのは伴走型支援です。コンサルタントがすべてを肩代わりするのではなく、院長先生が経営者として課題を整理し、改善を求めることを前提に、意思決定と実行を並走します。
課題整理を外部に丸投げすると、短期的には楽でも自走力が損なわれがちです。私たちは依存関係ではなく、双方が成長するパートナーシップを重視します。院長先生が覚悟を持って課題を投げかけ、私たちが具体策を提示・実行を伴走する——その積み重ねが、持続可能な経営をつくります。
経営者の覚悟が組織を変える
インシデントレポートは書類業務ではありません。そこには経営者としての覚悟と姿勢が映ります。
- 報告を恐れず、改善に活かす文化を築くのか
- 形式にとどめ、形骸化させてしまうのか
- 経営責任を果たすのか、現場任せにしてしまうのか
この分岐点が、数年後のクリニックの姿を決めます。信頼される医療機関として地域に根差すのか、それとも安全や働きやすさの課題を抱え続けるのか——。
院長先生が経営者の覚悟を持ち、インシデントを「改善の起点」と位置づけることこそ、最初の一歩です。
結びに
私たちは、経営者としての責任を自覚し、課題を自ら整理しようとされる院長先生とともに、医療安全と組織改善を進めます。インシデントレポートは、覚悟を示し、組織を成長させる出発点です。
その覚悟に対し、当社は伴走型で全力を尽くします。ともに歩み、持続可能なクリニック経営を実現していきましょう。
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