糖尿病内科経営シリーズ第2回|糖尿病外来が回らなくなる3つの理由と整理ポイント
前回の記事(糖尿病内科経営シリーズ第1回|糖尿病内科は「治療」よりも「設計」で差がつく)では、糖尿病内科は「治療」よりも「設計」で差がつきやすく、真面目に診療に向き合うほど院長が消耗しやすい構造を持っている、という前提を整理しました。
今回はその続きとして、糖尿病外来が「なぜ回らなくなるのか」を、努力や姿勢の問題ではなく、外来の構造として整理していきます。
ここで扱うのは、売上や点数の話ではありません。
「なぜか外来が詰まる」「忙しいのに安定している感覚がない」「頑張っているほど余裕がなくなる」。
多くの先生が一度は感じたことのある、こうした感覚がどこから生まれているのかを言語化することが、今回の目的です。
「外来が詰まる」ときに起きていること
糖尿病外来では、一人ひとりの診療が丁寧になりやすく、その分、外来が押しやすい傾向があります。
ただ、問題は「忙しいこと」そのものではありません。
- 待ち時間が日によって大きく変わる
- 診療時間の見通しが立たない
- 1日の外来数が安定しない
- 診療後の疲労感が抜けない
こうした状態が続くと、外来は「回っているようで、実は不安定」な状態になります。
外来が詰まることは、そのまま経営が不安定になりやすいサインでもあります。
それは点数や収益の問題というより、「この形で続けられるのか」という不安定さです。
糖尿病外来が回らなくなる3つの理由
糖尿病外来が詰まりやすい背景には、いくつか共通する構造があります。ここでは、特に起きやすい3つのポイントを整理します。
いずれも、能力や熱意の問題ではありません。
理由① 初診が“重くなりすぎる”
糖尿病の初診は、どうしても情報量が多くなります。
これまでの経過、生活背景、合併症の確認、今後の見通し。どれも必要な確認であり、説明です。
その結果、初診1人に時間がかかり、外来全体が押してしまう。多くの先生が経験されている光景でしょう。
問題は、初診が重いこと自体ではありません。
「初診はこういうものだ」と受け止めたまま、外来全体が設計されていないことが、詰まりやすさにつながります。
すると無意識のうちに、「初診は院長が全部対応するもの」という構造が固定されていきます。
理由② 再診患者の“幅”が広すぎる
糖尿病外来の再診には、非常に幅があります。
数値が安定している患者さんもいれば、調整が必要な患者さん、生活背景に課題を抱える患者さんもいます。
本来であれば診療の重さは大きく異なるはずですが、多くの場合、これらがすべて「再診」という一つの枠に入っています。
その結果、
- 診療時間が読めない
- 外来数の見込みが立たない
- 「今日はたまたま大変だった」が続く
という状態が生まれます。
ここでも問題は患者さん側ではありません。
再診の中にある“層”が整理されていないことが、外来の不安定さを生んでいます。
理由③ 指導・説明・判断が院長に集中する
糖尿病診療では、治療方針だけでなく、「なぜ必要なのか」「どう向き合っていくのか」といった説明や判断が重要になります。
その重要性ゆえに、「自分でやった方が早い」「院長が説明した方が伝わる」という判断が積み重なりやすい領域です。
結果として、
- 外来が詰まる
- 院長の判断負荷が増える
- チームに役割が分かれない
という循環が生まれます。これは責任感が強い先生ほど、無意識に抱え込みやすい構造です。
問題は「3つが重なって起きる」こと
ここまで挙げた3つの理由は、それぞれ単独で起きているわけではありません。
初診が重く、再診の幅が広く、指導や説明が院長に集中する。これらが同時に起きることで、外来は一気に詰まりやすくなります。
そして気づかないうちに、「頑張るほど忙しくなる糖尿病外来」という構造が出来上がっていきます。
ここで大切なのは、これは誰かの努力不足ではなく、外来の設計として起きている現象だという点です。
だからこそ、責めるのではなく、整理するところから始められます。
次回に向けて|設計は分解できる
今回の記事では、何を改善すべきか、どうすればよいか、といった話にはあえて踏み込みませんでした。
ただ一つ共有したい視点があります。
それは、糖尿病外来は「設計の問題として分解できる」ということです。
- 初診をどう位置づけるか
- 再診の幅をどう捉えるか
- 指導や説明をどこに置くか
これらは一気に解決するものではありませんが、順番に整理していくことは可能です。
次回はまず、外来の安定性に大きく関わる再診率と通院継続という視点から、糖尿病外来の構造をもう一段整理していきます。
まとめ
糖尿病外来が回らなくなるとき、そこには共通する構造があります。
努力や覚悟の話にする前に、一度、外来を「設計」として眺め直す。
今回の整理が、そのための一助になれば幸いです。
次回予告:次回は、外来の安定性に直結しやすい「再診率と通院継続」という視点から、患者数の見通しや外来の“振れ幅”をどう捉えるかを整理していきます。
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