正解を急がず、納得して続けるために。 クリニック開業・経営の判断の前提を、静かに整える時間。

クリニック開業・経営コラム

診療と経営は、少し違う前提で考えてみる ── 正解を探し続けるほど、経営は不安定になる

これまで、開業を考えている医師や、開業直後の院長と、
相談や面談の機会を多く持ってきました。

制度や立地、資金計画など、
お伝えしている情報自体は、決して特別なものではありません。
それでも、その後の動きには、はっきりとした差が生まれることがありました。

話を聞いたあと、
すっと次の一歩を踏み出していく医師がいる一方で、
同じ説明を受けたはずなのに、
かえって不安が強くなってしまう医師もいる。

当初は、その違いを
「準備量の差なのか」
「覚悟の差なのか」
そんなふうに捉えていた時期もありました。

ただ、相談を重ねるうちに、
少しずつ別の整理に行き着くようになりました。

それは、診療と経営を、同じ前提で考えているかどうか
という違いです。

診療は「正解を当てにいく行為」だろうか

診療の世界には、確かに「正解」があります。
診断基準、ガイドライン、エビデンス、安全性。
これらを踏まえない診療は成り立ちません。

この意味で、
診療は「正解を求める行為」であることは間違いありません。

ただ、日々の診療を振り返ったとき、
本当にそれだけで完結しているでしょうか。

同じ病態であっても、
医学的に妥当な選択肢が複数並ぶ場面は、決して少なくありません。

薬の選択、検査の進め方、経過観察という判断。
その中から一つを選ぶとき、
医師は必ずしも「正解を一つ当てにいっている」わけではありません。

正解は「一つ」ではなく、「範囲」として存在している

診療の現場では、
医学的に許容される選択肢の幅があります。

その幅の中で、安全性を確保しながら、
どこに重心を置くかを考えている。

ここで扱われているのは、
正解そのものというより、
正解をどう適用するかという判断です。

患者さんの生活背景、仕事、通院のしやすさ、
治療を続けられるかどうか。

患者さんの要望は、
医学的な正解を壊すものではありません。
正解を現実にどう当てはめるかを示す条件として、
診療の中に組み込まれています。

診療とは、
正解を提示して終わる行為ではなく、
正解の範囲の中で、その人にとって続けられる形を
一緒につくっていく行為だと言えるのかもしれません。

診療でやっていることが、経営では見えなくなる

ここから話題を、経営に移します。

経営について考え始めたとき、
多くの院長は自然と「正解」を探します。

他院の成功事例、制度の情報、専門家の意見。
それ自体は、とても自然な姿勢です。

ただ、ここで一つ不思議なことが起こります。

診療では、
正解の範囲を理解したうえで、
納得できる形を組み立てている。

にもかかわらず、経営になると、
「正解を一つ見つけなければならない」
という感覚に引き戻されてしまう。

この切り替えが、
経営を急に難しく感じさせる理由の一つです。

判断が分かれるテーマほど、「正解」は見えにくい

経営の中には、
人によって判断が分かれやすいテーマがあります。

たとえばスタッフ採用のように、
「今の体制を維持するか」
「人を増やすか」
「今なのか、少し先なのか」
といった選択が並ぶ場面です。

こうした問いに、
一つの正解があるように感じてしまうことがあります。

けれど、同じ情報を前にしても、
院長ごとに選ぶ判断は異なります。

それは能力の差ではありません。
どんな前提を置き、
何を大切にしているかが違うだけです。

診療で、
患者ごとに正解の当てはめ方が変わるのと、
よく似た構造です。

情報を集めても、判断が軽くならないとき

経営判断に迷うとき、
「もう少し情報があれば決められる」
と感じることがあります。

しかし、情報が増えるほど、
かえって決めにくくなる場面も少なくありません。

このとき起きているのは、
情報不足ではなく、
判断の前提が整理されていない状態です。

診療では、
医学的な前提がある程度共有されています。
だから、選択肢を並べやすい。

一方で経営では、
前提は人によって、地域によって、
置かれている状況によって異なります。

前提が揃わないまま正解を探し続けると、
判断は自然と重くなっていきます。

経営もまた、「正解の範囲」を扱っている

経営に、
完全に自由な判断があるわけではありません。

制度、数字、法律、地域の状況。
経営にも、守るべき前提や制約があります。

その意味で、
経営にも「正解の範囲」は存在します。

ただ、その範囲の中で、
どこに重心を置くかは、
院長自身が引き受ける判断になります。

ここでも扱われているのは、
正解を当てにいくことではなく、
正解の範囲をどう使うかという問題です。

おわりに

診療と経営は、
役割や扱う対象こそ違いますが、
まったく異なる世界の話ではありません。

診療では、
正解の範囲を踏まえたうえで、
患者さんの生活や価値観を考慮し、
「続けられる形」を一緒につくってきました。

経営もまた、
制度や数字という前提の中で、
どの選択を引き受け、
どの選択を引き受けないかを考える営みです。

正解を一つに絞ろうとすると、
判断は重くなり、
決めきれない状態が続きやすくなります。

一方で、
正解の範囲を理解したうえで、
自分が引き受けられる形を選ぶと、
判断は少しずつ軽くなっていきます。

最近のあなたの判断は、
「余白のある状態」で下したものが多いでしょうか。
それとも「追い込まれた状態」で選んだものが多いでしょうか。

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「正解より、納得解を大切にする」── まえやまだ純商店の考え方

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