需要と供給というレンズで、これからのクリニック経営を眺め直す
ここ数年、
「クリニック経営は厳しい」「外来が減っている」「人もコストも上がる一方だ」
そんな声を耳にする機会が増えました。
一方で、外来が常に詰まっているクリニックがあるのも事実です。
同じ地域、同じ診療科でも、状況が分かれている場面も少なくありません。
この差を「努力の差」といった言葉で片付けてしまうと、少し息苦しくなります。
ここでは一度、評価や結論から距離を取り、「需要と供給」という言葉を“考えるためのレンズ”として医療の状況を眺め直してみます。
※本記事は、三井住友銀行の「2025年の回顧と2026年の展望」レポートを整理した記事の“次の一段”として、前提条件を踏まえたうえで執筆しています(レポート自体の解説は行いません)。
なぜ、いま「需要と供給」という言葉が医療で語られるのか
需要と供給という言葉は、医療に持ち込むと少し乱暴に聞こえるかもしれません。
ただ、ここで言いたいのは「医療も結局は市場だ」という単純化ではありません。
いま起きている変化は、需要が減った/供給が増えたという二択では捉えきれないものが多い印象です。
だからこそ、評価や正解探しの前に、前提を読み直すための“レンズ”として「需要と供給」を置いてみます。
需要が減っているのではなく、見えにくくなっているだけかもしれない
医療の「需要」という言葉は、患者数や受診回数といった数字で語られがちです。
ただ実際には、もう少し立体的です。
- 誰が、どんな不安や困りごとを抱え
- どこに、どんな順番で相談しようとしているのか
- 受診という行動の手前で、何を“ためらっている”のか
たとえば、症状が軽いうちは受診を控える。
まずはドラッグストアや薬局で相談する。
検体測定やセルフチェックで様子を見る。
こうした行動は、「医療が不要になった」というより、医療に入ってくる手前の動き方が変わったとも読めます。
需要そのものが消えたのではなく、見えにくい場所に移動している。
そう捉える余地は、まだありそうです。
供給が過剰なのではなく、ズレているだけかもしれない
医師偏在・診療科偏在という言葉は、ときに「需要不足/供給過多」といった表現で語られます。
ただ、実態は“需要と供給の位置ズレ”として整理すると、見通しが良くなる場面があります。
たとえば、地域が求めている役割と、院内で提供している医療の役割が噛み合わないとき、
「忙しさ」や「空き」が生まれやすくなります。
外来が「詰まる/空く」は、単純な人気の問題というより、
“どこで・誰の・どの相談を受け止めているか”の配置の問題として現れていることがあります。
外来が詰まるクリニックは、患者数が多いというより、
「相談の入口」として選ばれている/役割が地域と一致している状態に近いことがあります。
逆に、空きが目立つ場合も、診療の質や姿勢だけで説明しきれないことがあります。
供給の場所が、需要の位置と少しずれているだけかもしれません。
ドラッグストア・薬局の動きは「供給増」ではなく“入口の分散”
ドラッグストアや薬局が、健康相談や検体測定、生活習慣への助言などを担い始めています。
これは医療の供給が一気に増えた、というよりも、「需要の入口が分かれた」現象として見るほうが自然かもしれません。
いきなり医療機関に行くのではなく、ワンクッション置く選択肢が増えた。
その結果、クリニックに来る患者さんは「より医療を必要としている状態」に寄ってきているとも考えられます。
診療報酬改定は、需給を“整えようとしている仕組み”とも読める
診療報酬改定は、理念やメッセージとして語られることが多い制度です。
ただ、需要と供給の視点で見ると、少し違った輪郭が浮かびます。
それは、医療資源の向きを調整しようとする仕組みという側面です。
- どこに医療資源を残したいのか
- どの役割を継続させたいのか
- どこに重心を移したいのか
こうした意図が、点数という形で表現されている。
この意味では、改定は善悪を決める制度というより、需給のズレを少しずつ直そうとする調整装置とも捉えられます。
需要と供給で考えると、「急がなくていい判断」が見えてくる
需要と供給という言葉は、経営戦略や結論そのものではありません。
ただ、前提を読み直すための整理軸にはなります。
たとえば、こんな問いが立ち上がります
- 「需要が減った」のではなく、入口が変わっただけではないか
- 「供給が多い」のではなく、地域の役割配置がズレているだけではないか
- 外来の詰まりは、診療の量ではなく“受け止め方の設計”の問題ではないか
すぐに答えを出さなくてもよい。
今の判断を、急いで変えなくてもよい。
ただ、見ている地図を一枚増やす。それだけでも、経営の見え方は少し変わります。
おわりに:正解ではなく、考える軸としての需要と供給
医療は単純な市場ではありません。
同時に、完全に市場原理と無関係でもありません。
だからこそ「需要と供給」という言葉も、答えではなく、考えるための軸として静かに置いておくくらいが、ちょうどいいのだと思います。
判断を急がなくてもいい。
不安を無理に解消しなくてもいい。
ただ、「そういう見方もあるのか」と一息つける余白が残れば。
それが、これからのクリニック経営を考える一つの支えになれば幸いです。
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