2026年に向けて、何が変わりつつあるのか|三井住友銀行レポートから見るクリニック経営の前提
※本記事は「こうすべき」を断定するものではなく、外部レポートを手がかりに前提条件を整理するためのメモです。
三井住友銀行が公表している「2025年の回顧と2026年の展望」は、特定業界向けの指南というより、日本経済全体の変化を俯瞰して整理したレポートです。
これをクリニック経営の視点で読み直すと、2026年に向けて「結論を急がなくてもよいが、前提として受け止めておきたい変化」がいくつか見えてきます。
1. 人件費上昇は「戻らない前提」になりつつある
レポートを読んでまず感じるのは、賃上げの動きが一時的なものではなく、構造的な流れとして定着しつつあるという点です。
クリニックの現場に置き換えると、「今まで通り求人を出して待つ」だけでは、採用が成立しにくくなる可能性があります。
ここで大切なのは、募集条件を足し算することより先に、
- 院内でどの業務に負荷が偏っているか
- その負荷は「人を増やす」以外に軽くする方法があるか
- 「何が足りないから、どんな人が必要か」を言葉にできているか
たとえば、受付・会計・予約調整・問い合わせ対応など、負荷が集中しやすい領域は、業務の再設計だけで体感が大きく変わることがあります。
必要に応じて、DXの導入や、外部業者への部分委託(レセプト点検・電話代行・予約システム運用など)も、「人を減らす」ためではなく「人が無理をしない構造をつくる」ための選択肢として検討されやすくなります。
また、年収の壁(103万円・106万円・130万円)といった条件が、パートスタッフの働き方に影響します。
「働く意思はあるが、働ける時間に制約がある」という状況も前提に置いたうえで、シフト設計や役割の切り分けを整えていく必要が出てきます。
2. 物価上昇は、患者の受診行動にも静かに影響する
レポートは物価上昇が家計に与える影響にも触れています。賃上げが進んでも、生活者の実感として「余裕が増えた」と感じにくい状況が続くなら、受診行動は自然に変化します。
- 受診間隔をあける
- 自費診療を慎重に検討する
- 「今回は様子を見る」という判断が増える
ここでのポイントは、短期の患者数増減に一喜一憂することよりも、自院の医療が「どんな価値」として受け取られているかを院長自身が把握しているか、です。
財布の紐が固いほど、患者さんは「安心できる理由」を求めます。
診療内容だけでなく、説明の分かりやすさ、導線の迷いにくさ、予約や受付の体験など、日常の小さな不安が減るかどうかが受診行動に影響しやすくなります。
3. コスト増は「削減」ではなく「選び直し」の段階へ
人件費・光熱費・材料費など、複数のコストが同時に上がる前提が続くなら、診療報酬という公定価格のなかで経営するクリニックでは、単純なコストカットだけでは限界が出やすくなります。
そこで必要になるのが、「何を削るか」よりも、
- どの業務に時間とコストをかけるか
- どこは仕組み化・標準化できるか
- 何をやらないと決めるか
コスト管理は節約の話というより、経営としての優先順位を言語化する作業に近づいていきます。
そして財布の紐が固い時代ほど、「患者さんにとって価値のある部分」に資源を残すために、院内の運用を整理する重要性が増します。
4. 医薬品・周辺業界の動きは、すでに前提条件になっている
レポートは製薬業界や流通、周辺サービスの変化にも触れています。医薬品供給の不安定さは、現場の「やりくり」で吸収しきれない局面が出ることもあり、薬局との連携や代替薬の説明など、診療を止めないための準備が求められます。
さらに近年、薬局やドラッグストアでは、従来の薬剤提供に留まらず、
- 店舗内に検体測定室を設置し、HbA1cや脂質などを簡易に測定できるサービス
- 血圧・体組成測定など、日常的な健康チェックの提供
- 薬剤師・管理栄養士による、生活習慣や服薬に関する健康相談
といった、予防や日常管理を支援する取り組みが広がっています。
これは「医療機関の代替」というより、患者さんの健康行動の入口が増え、日常の選択肢が広がっている現象として捉えることができます。
クリニック側は、こうした外部の動きを「脅威」か「無関係」と切り分けるより、前提条件として織り込むことで、説明や役割整理がしやすくなります。
5. レポートが示しているのは「急いで決めよ」ではない
三井住友銀行レポート全体から受ける印象は、「今すぐ決断せよ」という強いメッセージではありません。
むしろ、前提が変わっていること、元に戻らない可能性が高いこと、判断を誤ると負荷が偏ることを、淡々と整理しているように読めます。
クリニック経営でも同じで、答えを急ぐより先に、前提条件を把握し直すことが、結果的に判断を楽にしてくれます。
おわりに|前提を把握することで、判断は少し楽になる
今回は、三井住友銀行レポートを手がかりに、2026年に向けたクリニック経営の前提条件を整理しました。
ここで大切なのは、正解を急ぐことではなく、 何が変わっているのか/何は急がなくてよいのか/どこから考え始めるかを落ち着いて把握することです。
前提が言葉になると、次の判断は、少しだけ楽になります。
参考資料
- 三井住友銀行『2025年の回顧と2026年の展望』 (PDF) こちら
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