2026年診療報酬改定は、クリニック経営の前提を見直す節目になる ── 2025年の現場から見えた、これからの開業と経営の考え方
※本記事は、「開業準備」「経営トピックス」「まえやまだ純商店の考え方」に共通する、前提整理を目的とした内容です。
2026年診療報酬改定を目前に、2025年は、クリニック経営を支えてきた前提が静かにズレ始めた一年でした。
採用難で人が集まりにくい、物価高・賃上げでコストが上がる、生活習慣病(糖尿病・高血圧など)の慢性疾患管理が外来の中心になる──。
こうした変化の中で、2026年(令和8年度)診療報酬改定は、点数の増減以上に、かかりつけ医機能/地域連携/医療DXを軸とした「地域で支える医療」への移行をいっそう明確にしました。
本記事では、相談現場での実感と制度動向(2025年12月24日通達を含む)を踏まえながら、開業判断と、すでに開業している院長の運営判断に効く形で、「これからの開業と経営の考え方」を整理します。
- 採用難・物価高の時代に、「院長一人で背負う運営」が限界に近づく理由
- 生活習慣病外来を“続けられる形”にするための、仕組みと地域連携の考え方
- かかりつけ医機能・医療DXの流れを、院内の負担を増やさずに整える優先順位
2025年の終わりに、現場で強く感じた「言葉にならない違和感」
外来が回っていても、「このままでいいのか」と感じる院長先生が増えています。
2025年も終わりが近づいてきました。
私は日々、クリニック開業・経営に関するご相談を受ける立場として、院長先生の「言葉になりきらない違和感」に触れる機会があります。
外来は回っている。患者さんも一定数来ている。
それでも、ふとしたタイミングで「このままでいいのだろうか」「先のことを考えると、少し不安が残る」
と、言葉を選びながら口にされます。
これは、先生方の努力不足ではありません。むしろ、これまで当たり前だとされてきた「開業・経営の成功モデル」そのものが、静かに、しかし確実に変わりつつある。
2025年は、その変化が“実感”として表れ始めた一年だったのではないでしょうか。
もしお忙しければ、まずは見出しだけ追ってください。
「開業検討中の方」は第5章(通達の使い方)の上段、「すでに開業中の院長」は第6章(小さな一手)から読んでも理解できるようにしています。
これまでの前提:「開業すれば何とかなる」という時代が続いてきた
これまで、開業には比較的わかりやすい「成功の階段」がありました。
- 勤務医から独立し、自分の裁量で診療を行う
- 努力(診療件数)が、ダイレクトに収入や自由につながる
- 医師として一人前になる一つの「到達点」としての開業
もちろん、資金調達や採用の苦労はありましたが、根底には「開業して、一生懸命診察すれば、何とか形になる」という前提が共有されていました。
ただ、その前提がいま、少しずつ噛み合わなくなっています。
問題は「頑張りが足りないこと」ではなく、頑張り方(=成功モデル)が時代に合いづらくなっていることです。
前提が噛み合わなくなってきた背景:「院長一人で背負う」モデルの限界
2025年を通じて、その前提が現実と噛み合わなくなってきている場面を多く目にしました。
特に次の要因が、経営のあり方を“じわじわ”変えています。
- 診療報酬の構造変化:「量(件数)」から「質(継続的な関わり)」への評価シフト
- コスト構造の悪化:人件費・物価上昇により、同じ患者数でも利益が残りにくい
- 人材確保の難化:院長の気合や背中だけでは回らない採用環境
「院長一人の頑張り」に依存したモデルは、制度面でも運営面でも持続しにくくなっています。
診療時間を延ばし、責任感と気合で乗り切る。こうした従来のやり方が、以前よりも通用しにくくなっているのが2025年以降のリアルです。
現場では「忙しい=必要とされている」と感じやすい一方で、経営は「忙しさ」だけでは守れない(人・仕組み・地域連携)という局面が増えています。
だからこそ、行動を増やす前に“判断の前提”を整えることが効きます。
私が関わる相談でも、「何かやらなきゃ」という焦りの裏側に、どこが論点なのかが整理されていない状態がよくあります。
本記事は、その整理を先に行うための材料として書いています。
制度が示す方向性:「外来中心で完結する」から「地域や生活とつながる」へ
こうした現場の変化は、国の制度設計とも一致しています。
2026年度(令和8年度)診療報酬改定の議論では、「地域で患者を支える医療」「かかりつけ医機能」が、これまで以上に明確に打ち出されています。
制度の骨子(方向性)については、以下で整理しています。
2026年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)の概要― クリニック経営をどう読み解くか
重要なのは、点数の増減そのものよりも、国が「外来中心で完結するクリニック」から「地域や生活とつながるクリニック」への移行を求めているという点です。
DX対応“そのもの”よりも、「地域連携を整え、院長が不在でも回る仕組み」を、無理のない形で持てているかが問われていきます。
ここで大切なのは、「何でもかんでも取りに行く」ではなく、自院が続く形に整える順番です。
次章では、その判断を助ける材料として、2025年12月24日の通達の位置づけを整理します。
2025年12月24日通達で、変化の輪郭が“はっきり”してきた
そして、2025年12月24日の通達は、これまで「方向性」として語られていたものを、もう一段、現実の判断に近づけました。
ここで大切なのは、細かな点数を追うことよりも、“院長の判断に影響するテーマ”がどこに集約されているかを掴むことです。
- 開業を検討中:「どこで/どういう形で/何を強みに」開業するかの前提に、制度の流れ(医師偏在対策など)を織り込む
- すでに開業中:「今すぐ決めなくていいこと」と「考えておいた方がいいこと」を分け、院内の負担が増えない順序で整える
それぞれの論点整理は、以下の記事にまとめています(どちらも短時間で見返せるように書いています)。
・ 医師偏在対策は「開業判断」にどう影響するのか ──2025年12月24日通達から考える、これからの開業準備
・ 2026年度診療報酬改定(2025年12月24日通達)── すでに開業している院長が「今すぐ決めなくていいこと/考えておくこと」
なお、「通達を読んだから答えが出る」わけではありません。
ただ、通達が示すのは“判断に影響する変数が増えている”という事実です。
だからこそ、次に必要なのは「追加の情報」よりも、自院に合う前提を整えることだと考えています。
持続可能な経営の軸:「三者のバランス」を崩さない
医療は、誰か一人の正しさや犠牲だけでは持続しません。
私は、次の三者のバランスを整えることが、これからの経営整理の軸になると考えています。
- 患者:安心と納得の医療
- 医療者:やりがいと健康(持続性)
- 制度・経営:持続可能な収益構造
理念だけで頑張れば医療者が疲弊し、利益だけを追えば信頼が揺らぎます。
「理念」と「経営」は対立するものではなく、同時に整えていくべき両輪です。
2026年改定は、このバランスが崩れやすい院ほど、「忙しいのに苦しい」という形で表面化しやすくなります。
だからこそ、次章の「小さな一手」は、やることを増やすためではなく、崩れない順番を作るために置きました。
2026年改定までにできる「小さな一手」
改定に向けて考え始めると、どうしても「やること」が増えがちです。
ただ、実際には行動を増やす前に、「判断の前提」を整えておくほうが、結果的に負担は軽くなります。
- 外来の「詰まり」を一つだけ見える化する(院内向け)
診察開始から会計までの流れで、どこに待ち時間が溜まっているかを、スタッフと一緒に書き出す。 - 地域連携を「名刺交換」ではなく“運用”として整理する(院外との接続)
紹介・逆紹介について、誰が・いつ・どのように動くのかを1枚にまとめる。 - DXは「導入」ではなく、“使い方”を一つだけ整える(負担を増やさない)
受付・予約・問診・会計の中で、一番ムダが出ている部分を一つ選び、やり方を固定する。
すべてを整える必要はありません。
一つ決めて、一つだけ進める。それだけでも、改定後の負担は大きく変わります。
「何からやればいいか分からない」状態は、能力の問題というより、優先順位(=前提)がまだ整っていないことが多いです。
その場合は、いきなり施策に入るより、先に論点を1枚に並べたほうが早く進みます。
まとめ:2026年を「判断の前提」を整える節目にする
多くの院長先生が感じている不安は、能力の問題ではなく、古い前提と新しい現実のズレが整理されていないことから生じています。
- 自分にとって、開業の目的は何か
- 何を担い、何を担わないのか
- どんな形なら、無理なく地域と関わり続けられるのか
答えを急ぐ必要はありません。
2026年診療報酬改定までの時間を、自分なりの「判断の前提」を整える期間として使ってみてはいかがでしょうか。
関連記事(あわせて読むと、整理が早い3本)
最後に
「整理する時間」を先に確保できるかが、開業準備にも経営にも効いてきます。
一人で考え続けることに限界を感じているなら、その違和感を一度、言葉にしてみるところから始めてみてください。
私自身、正解を提示するのではなく、院長先生ご自身が「納得解」を見つけていくプロセスに伴走しています。
まずは“いま詰まっている点”がどこなのかを、一緒にほどいていくところからでも大丈夫です。
今いちど。
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よくある詰まりの例
- 選択肢が多く、何から決めるべきかが分からない
- 「制度・数字・理想」の間で、判断の軸が揺れている
- 業者や身近な人には話しづらく、頭の中だけで抱えている
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※箇条書き・数行で大丈夫です。
※まとまっていなくても、大丈夫です
※この時点で何かを決める必要はありません。
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