2026年診療報酬改定で院長が今決めること・保留してよいこと|判断の順番を整理する
※本記事は、すでに開業し、日々の診療を行っているクリニック院長向けの整理記事です。
制度を知ることと、自院として判断できることは別
2026年度診療報酬改定について、点数や施設基準、届出、算定要件など、多くの情報が公表されています。
制度の内容を理解することは必要です。しかし、制度を知っただけでは、自院として何をすべきかは決まりません。
院長が実際に迷うのは、制度の説明を読んだあとです。
- 自院は対応した方がよいのか
- 今すぐ決める必要があるのか
- スタッフへ何を説明すればよいのか
- 収支や運用への影響をどこまで確認すべきか
- 今回は見送ってもよいのか
このように、制度情報が増えるほど、判断しなければならないことも増えます。
すべてに対応しようとすると、比較や確認に時間を取られ、診療やスタッフとのやり取りに使える時間が減ってしまいます。
一方で、十分に確認しないまま急いで決めると、導入後に運用負担が増えたり、院内で説明がつかなくなったりすることもあります。
診療報酬改定への対応で大切なのは、すべてを早く決めることではありません。
何を今決めるのか、何を保留するのか、何を継続して考えるのかを分けることです。
この記事では、改定項目の解説ではなく、開業済みのクリニック院長が判断を進める順番を整理します。
2026年度診療報酬改定の全体像や、自院に関係するテーマを確認したい方は、先にこちらをご覧ください。
最初に確認したいのは「期限」と「今の運用への影響」
改定情報を見たとき、最初から大きな経営方針を考える必要はありません。
まず確認したいのは、次の2点です。
- 届出や対応に期限があるか
- 現在の診療や院内運用に直接影響するか
期限があり、現在の運用へ直接影響するものは、優先的に確認する必要があります。
一方で、将来の選択肢や中長期の運営方針に関わるものまで、同じ緊急度で決める必要はありません。
例えば、施設基準の届出期限、算定開始時期、レセプトや院内掲示への対応、患者さんへの案内変更などは、先に確認した方がよい事項です。
反対に、将来的に在宅医療へ取り組むか、診療体制を大きく変えるか、新しい設備やシステムを導入するかといったテーマは、改定情報だけで急いで決めるべきものではありません。
最初に緊急度を分けることで、制度情報に振り回されにくくなります。
院長が今決めること
「今決めること」は、すべての改定項目について結論を出すことではありません。
期限や患者対応、スタッフの運用に直接関係することから、必要な範囲で決めていきます。
1.届出や施設基準への対応
まず確認したいのは、自院で算定する可能性がある項目について、届出や施設基準への対応が必要かどうかです。
ここでは、単に「算定できるか」だけでなく、次の点を確認します。
- 期限までに必要書類を準備できるか
- 施設基準を継続して満たせるか
- 日々の記録や説明を無理なく続けられるか
- スタッフの業務が過度に増えないか
- 算定額と運用負担が見合うか
一度算定を始めると、記録や院内運用を継続する必要があります。
そのため、取得できる加算をすべて取るのではなく、自院で続けられるかまで確認して決めることが重要です。
2.患者さんへの説明や案内を変える必要があるか
改定によって、窓口負担、診療の流れ、処方、予約、院内掲示などが変わる場合は、患者さんへの説明方法も決める必要があります。
院長だけが理解していても、受付や看護師が説明できなければ、現場では混乱が生じます。
最低限、次の点を院内で共有しておくとよいでしょう。
- 何が変わるのか
- いつから変わるのか
- 患者さんへどう説明するのか
- 判断に迷ったとき、誰に確認するのか
制度を詳しく説明する資料を作ることより、スタッフが同じ説明をできる状態をつくる方が重要です。
3.当面の運用ルール
制度上の選択肢が増えた場合でも、すぐに恒久的な方針を決める必要はありません。
まずは、当面の運用ルールを決める方法があります。
例えば、長期処方やリフィル処方であれば、すべての患者さんに広げるのではなく、対象となる患者さんの条件や、医師が個別に判断する基準を仮に決めます。
そのうえで、患者さんへの影響やスタッフの負担を見ながら、必要に応じて修正します。
最初から完成したルールをつくるのではなく、見直す前提で小さく始めることも、現実的な判断です。
今は保留してよいこと
改定情報に含まれているからといって、すべてを今すぐ自院の方針に落とし込む必要はありません。
判断材料が不足しているものや、運用への影響が大きいものは、保留することも一つの判断です。
1.大きな設備投資やシステム変更
制度改定をきっかけに、新しいシステムや機器の導入を検討することがあります。
しかし、「今後必要になりそうだから」という理由だけで進めると、自院の運用に合わなかったり、スタッフの負担がかえって増えたりすることがあります。
設備やシステムは、制度対応だけでなく、現在の課題や今後の診療方針と合わせて判断する必要があります。
期限がないのであれば、導入目的、費用、既存業務への影響、代替手段を整理してから決めても遅くありません。
2.診療体制を大きく変えること
在宅医療、訪問診療、診療時間の変更、対象患者層の拡大などは、制度上の評価だけで決めるものではありません。
院長の考え、スタッフ体制、地域の医療資源、患者さんから求められていることを踏まえる必要があります。
改定を読んで必要性を感じたとしても、すぐに始めるかどうかまで決めず、選択肢として残しておく段階があってもよいでしょう。
3.将来の収益予測だけを根拠にした判断
新しい加算や制度項目を見ると、増収につながる可能性に目が向きます。
しかし、実際には、記録、説明、スタッフ教育、システム設定、患者対応などの負担が発生します。
制度上の点数だけでは、実際の収支や運用負担は分かりません。
算定件数や必要な人員、作業時間が見えない段階では、結論を急がず、一定期間の運用状況を確認してから判断する方法もあります。
保留することは、判断を放棄することではありません。
何が分かれば決められるのかを明確にしたうえで、決める時期を後ろへ置くことです。
継続して考えること
改定のたびに短期間で答えを出すのではなく、日々の運営を通じて継続的に考えた方がよいテーマもあります。
1.自院は地域でどのような役割を担うのか
制度改定では、地域連携、かかりつけ医機能、在宅医療、医療機関同士の役割分担などが繰り返し示されます。
ただし、すべてのクリニックが同じ役割を担う必要はありません。
大切なのは、自院がどの患者さんを支え、どこまで対応し、どこから先は他の医療機関や介護事業所と連携するのかを考えることです。
この整理があると、新しい制度が出たときも、制度に自院を合わせるのではなく、自院の役割に照らして必要性を判断しやすくなります。
2.現在のスタッフ体制で続けられるか
制度対応を考えるとき、院長が一人で頑張れば何とかなるように見えることがあります。
しかし、実際の運用は、受付、看護師、医療事務など、スタッフの業務とつながっています。
新しい取り組みを増やす前に、現在の業務量、役割分担、属人化している仕事、スタッフが困っていることを確認する必要があります。
目先では対応できても、数年続けることが難しい運用であれば、見直しが必要です。
3.患者さんにとって不便や不安が生じていないか
制度対応や業務効率化が進んでも、患者さんが通いにくくなったり、説明不足で不安を感じたりすれば、自院の役割を果たしにくくなります。
予約、受付、待ち時間、処方、会計、検査、他院との連携など、患者さんがどこで困っているかは、制度改定とは別に継続して確認する必要があります。
制度上できることと、患者さんにとって必要なことが一致しているかを確かめる視点が重要です。
4.収支だけでなく、運用全体が無理なく続くか
制度対応では、増収や減収の見込みだけで判断しがちです。
しかし、院長やスタッフの時間、説明の負担、管理の複雑さまで含めると、必ずしも収支だけでは評価できません。
目先の応急処置として必要なことと、数年先も続けられる運用は分けて考える必要があります。
そのうえで、自院が地域で役割を果たし続けられる形になっているかを、定期的に確認していくことが大切です。
中長期の医療・クリニック経営の変化を確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。
迷ったときに確認したい判断の順番
複数の改定項目が重なり、どこから考えればよいか分からなくなったときは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
- 期限があるか
届出、掲示、システム設定、患者さんへの案内など、期限があるものを先に確認します。 - 患者さんへの影響があるか
診療内容、処方、負担額、受診方法、安全性などに直接影響する場合は、優先して方針を決めます。 - スタッフの業務へ影響するか
説明、記録、受付、請求、院内連携など、誰の業務がどの程度変わるかを確認します。 - 収支と運用負担が見合うか
点数や算定件数だけでなく、必要な作業時間や管理負担も含めて判断します。 - 自院が地域で担いたい役割と合っているか
制度上できるかではなく、自院として続けたい診療や支えたい患者さんに合っているかを確認します。
この順番で確認すると、制度項目を一つずつ比較する時間が減り、院長が判断すべき論点を絞りやすくなります。
また、スタッフへ説明するときも、「なぜ今回この対応をするのか」「なぜ今回は見送るのか」を共有しやすくなります。
すぐに答えが出ない場合は、次のように整理しておく方法もあります。
今決めること
期限があり、現在の診療や患者対応に直接影響すること
今は保留すること
判断材料が不足していること、運用への影響が大きいこと
継続して考えること
地域での役割、スタッフ体制、患者さんのニーズ、持続可能な運営
判断が進まないときは、情報が足りないのではなく、複数の論点が混ざっていることがあります。
現状、論点、選択肢、優先順位を分けることで、自院として次に確認すべきことが見えやすくなります。
まとめ|すべてを決めるのではなく、決める順番を整える
2026年度診療報酬改定では、多くの制度情報が示されています。
しかし、すべての項目について、すぐに自院の方針を確定する必要はありません。
まずは、期限があるものや、患者さん・スタッフの運用へ直接影響するものを確認します。
そのうえで、大きな設備投資や診療体制の変更などは、判断材料がそろうまで保留してもよいでしょう。
地域での役割、スタッフ体制、患者さんから求められていること、無理なく続けられる運用については、改定時だけでなく継続して考えていく必要があります。
制度対応で大切なのは、すべてに対応することではなく、自院として決める順番を整えることです。
何を今決めるのか。何を保留するのか。何を継続して考えるのか。
この3つを分けることで、比較や迷いに使う時間が減り、診療やスタッフとの対話に時間を使いやすくなります。
目先の制度対応だけでなく、地域で役割を果たし続けられる運営につながっているかを確認しながら、自院として納得できる判断を進めることが大切です。
制度情報は分かったものの、自院としての優先順位が決まらない院長先生へ
制度の説明ではなく、判断する順番を整理することもできます
診療報酬改定では、制度そのものよりも、自院では何を優先し、何を保留するのかで迷うことがあります。
当事者だけで考えていると、目の前の課題に引っ張られたり、複数の論点が混ざったりして、判断がまとまりにくくなることもあります。
まえやまだ純商店では、正解を押し付けたり、院長先生の代わりに経営判断をしたりするのではなく、クリニック外の第三者として、現状・論点・選択肢・優先順位・次の一歩を整理します。
その結果として、比較や迷いに使う時間を減らし、自院として判断しやすい状態を整えることを目指しています。
例えば、このような場面でご相談いただけます
- 複数の制度項目があり、どこから確認すればよいか分からない
- 今決めることと、保留してよいことを分けたい
- 算定できるかだけでなく、自院で続けられるかを整理したい
- 院長の考えをスタッフへどう説明するか整理したい
- 目先の制度対応と、中長期の運営を分けて考えたい
まずは、どのような相談で利用されているのかをご覧ください。ご自身の状況に近い相談があるかもしれません。
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※状況確認面談では、相談を勧めることを前提とせず、現在の状況や整理したいことを確認します。