令和8年度診療報酬改定|クリニック院長が今すぐ決めなくていいこと・今から考えておきたいこと
※本記事は「既に開業して日々の診療を行っている院長先生」向けの整理記事です。
なお、開業準備中・これから開業を検討している先生向けには別記事で整理しています:
▶ 医師偏在対策は「開業判断」にどう影響するのか ── これからの開業準備をどう考えるか
導入
令和8年度診療報酬改定は、クリニック経営にとって、単に点数の増減だけを確認すればよい改定ではありません。
賃上げ対応、人材確保、長期処方・リフィル、かかりつけ医機能、在宅医療、地域連携など、日々の診療体制や経営判断に関わるテーマが含まれています。
一方で、すべてを一度に決める必要はありません。
診療報酬改定の情報に触れると、「すぐに何か対応しなければならないのではないか」「今の運営のままで大丈夫だろうか」と不安になることがあります。
ただ、制度対応で大切なのは、情報を追いかけることそのものではなく、自院として何を優先し、何を保留するのかを整理することです。
この記事では、開業済みのクリニック院長が、令和8年度診療報酬改定をどう受け止め、何を今すぐ決めなくてよいのか、何を今から考えておくとよいのかを、経営判断の視点から整理します。
まず押さえておきたい全体像
診療報酬改定というと、どうしても「どの点数が上がったか」「どの加算を取るべきか」という話に目が向きます。
もちろん、算定要件や施設基準を確認することは重要です。ただ、クリニック経営の視点では、それだけでは不十分です。
今回の改定は、物価高、人件費の上昇、人材不足、地域医療の担い手不足、医療提供体制の再設計といった大きな流れの中で捉える必要があります。
クリニック院長が意識したい4つの視点
- 物価や賃金、人手不足など、医療機関を取り巻く環境変化への対応
- 地域における医療機関の役割分担と連携
- 安心・安全で質の高い医療の提供
- 効率化・適正化を通じた、持続可能な運営体制づくり
賃上げ、長期処方・リフィル、在宅医療、かかりつけ医機能などは、これらの流れと切り離して考えることはできません。
つまり、制度項目を一つひとつ追うだけではなく、自院が地域でどのような役割を担い、どのような体制で続けていくのかを考える必要があります。
この前提を押さえないまま細かな制度項目だけを追うと、必要以上に不安が膨らみやすくなります。まずは、改定が求めているものの重心を見誤らないことが大切です。
診療所の院長が「今すぐ決めなくていいこと」
診療報酬改定の内容を見ると、「早く判断しないと不利になるのでは」と感じることがあります。
しかし、すべての項目について、すぐに自院の方針を確定する必要はありません。むしろ、急いで決めることで、後から運用が苦しくなることもあります。
賃上げ・ベースアップ評価料について
賃上げは、今回の改定における大きなテーマの一つです。
ただし、ここで重要なのは、賃上げ分を単なる増収として捉えないことです。
ベースアップ評価料などの制度対応は、人材確保や職員の定着と関係します。制度として算定できるかどうかだけでなく、自院としてどの職種に、どのような考え方で処遇改善を行うのかを整理する必要があります。
制度に合わせて対応する部分と、自院の判断で上乗せする部分を切り分けないまま進めると、「賃上げはしたが、経営は楽にならない」「職員への説明が難しい」という状態になりやすくなります。
そのため、賃上げやベースアップ評価料については、制度対応を急ぐ前に、人材確保・定着のために自院として何を守りたいのかを整理することが大切です。
長期処方・リフィルについて
長期処方やリフィル処方も、外来運営に影響するテーマです。
ただし、制度上の選択肢があることと、自院で一律に広げることは別です。
患者さんの状態、フォロー体制、再診間隔、急変時の対応、院内オペレーションまで含めて、どの患者さんなら安全に運用できるのかを考える必要があります。
長期処方・リフィルは、単なる回数調整ではなく、外来設計そのものに関わるテーマです。今すぐ一律の方針を決めるよりも、まずは自院の患者層と診療体制に照らして整理することが先です。
在宅医療・連携について
在宅医療や多職種連携も、地域医療の中で重要性が高まっているテーマです。
しかし、すべてのクリニックがすぐに在宅医療へ大きく踏み出すべき、という話ではありません。
まずは、今の診療内容、スタッフ体制、地域の医療資源、患者層を踏まえ、どこまでなら自院の現実に合うのかを見極めることが大切です。
一方で、今から「考えておいた方がいいこと」
今すぐ結論を出さなくてよい項目がある一方で、早めに考えておくと後の負担が軽くなるテーマもあります。
人件費と職員体制の見える化
賃上げ対応や制度評価の前提として、職種別の人数、給与水準、賃上げ実績などを把握できているかは重要です。
完璧な管理体制を最初からつくる必要はありません。
ただ、院長の頭の中だけで管理している状態だと、制度対応が細かくなったときに判断が難しくなります。
特に、賃上げや人材確保は、今後のクリニック経営において避けて通れないテーマです。制度対応としてではなく、経営管理の一部として、少しずつ見える化しておくことが大切です。
かかりつけ医機能をめぐる流れを理解しておく
かかりつけ医機能をめぐる制度の流れは、今後の診療所経営に影響していく可能性があります。
ここで重要なのは、特定の施設基準や加算を取るかどうかだけではありません。
自院は地域でどのような役割を担うのか。どの患者層を支えるのか。どこまでを自院で対応し、どこから先を連携で補うのか。
こうした考え方を整理しておくことで、制度が変わったときにも、慌てて方針を決める必要が少なくなります。
防御的対応として現実的に取り得る4点
- ベースアップ評価料を取りこぼさないことを前提に情報を確認する
- 長期処方・リフィル前提の外来設計を少しずつ考える
- かかりつけ医機能を見据えた体制を整理する
- 在宅・訪問診療を将来の選択肢として残せるかを考えておく
いずれも、今すぐ大きく変える話ではありません。
重要なのは、選択肢を持ったまま、確定情報や運用状況を見ながら判断できる状態をつくることです。
まとめ|令和8年度改定は「判断軸を整える機会」として捉える
令和8年度診療報酬改定は、点数対応だけで終わるものではありません。
賃上げ、物価高、人材不足、地域での役割整理、外来運営の見直しなど、クリニック経営全体に関わるテーマが含まれています。
だからこそ、目先の制度対応だけを先回りするのではなく、変化が来ても崩れにくい、持続可能な経営体制を整えることに意味があります。
決めなくていいことは無理に決めない。一方で、今から考えておくべきことは少しずつ整理しておく。
令和8年度診療報酬改定を、自院の判断軸を整えるきっかけとして活用してみてはいかがでしょうか。
制度対応や経営判断が少し重くなってきた院長先生へ
制度対応で迷ったとき、相談の形に整理することもできます
診療報酬改定や制度対応は、情報を追うだけでも負担がかかります。
実際には、制度の内容そのものよりも、自院としてどう受け止め、何を優先するかで迷うことがあります。
まえやまだ純商店では、正解を提示するのではなく、院長先生の状況や考えを伺いながら、判断の前提や論点・優先順位を整理する支援を行っています。
たとえば、このような相談があります
- 診療報酬改定を、自院としてどう受け止めればよいか整理したい
- ベースアップ評価料や賃上げ対応を、院内でどう説明するか悩んでいる
- 長期処方・リフィル、かかりつけ医機能、在宅医療など複数の論点が重なっている
- 何を今決めて、何を保留してよいかを整理したい
まずは、どのような場面で判断整理が使われているのかをご覧ください。
ご自身の状況に近い相談があるかもしれません。
はじめて相談を検討される方は、入口ページもご確認ください。
はじめて利用される方へ
※実務代行や御用聞き型の支援ではありません。
※売り込みを前提としたご案内は行っていません。