医療法改正でクリニック開業はどう変わる?|外来医師過多区域で確認したいこと
更新日:2026年8月9日
医療法改正や医師偏在対策を見て、「これからクリニックは開業しづらくなるのか」と気になる先生もいると思います。
今回の制度変更で、全国一律にクリニックを開業できなくなったわけではありません。一方、外来医師過多区域で無床診療所を新規開設する場合には、開設前の届出や地域で不足する医療機能等について確認が必要になります。
大切なのは、「規制があるから開業を諦める」「問題ないだろうとそのまま進める」と先に結論を出さず、開業を検討している地域について行政に確認し、その事実を開業計画へ反映することです。
この記事で整理すること
- 医療法改正で何が変わったのか
- 外来医師過多区域で何を確認するのか
- 地域で不足する医療機能とは何か
- 提供しない場合にどのような手続きがあるのか
- 確認した内容を自院の開業計画へどうつなげるか
医療法改正でクリニック開業はどう変わるのか
今回の制度変更で分けて考えたいのは、「開業できるか」と「開業前に確認することが増えた」は別という点です。
2026年4月から、都道府県が指定する外来医師過多区域で無床診療所を新規開設する場合には、原則として開設予定日の6か月前までに都道府県知事へ事前届出を行う仕組みが始まっています。
届出では、所在地や診療科などに加え、地域外来医療を提供する意向の有無なども確認されます。
「開業規制」という言葉だけで判断しないことが大切です。
まず、開業を検討している地域が外来医師過多区域に該当するか、該当する場合には何をいつまでに確認・届出するのかを整理します。
まず開業を検討している地域を確認する
制度の概要を読んだだけで、物件や開業計画を変更する必要があるとは限りません。先に、開業を検討している地域で実際にどの制度・手続きが関係するのかを確認します。
確認したいこと
- 外来医師過多区域に該当するか
- 事前届出は必要か、期限はいつか
- 地域で不足すると整理されている医療機能は何か
- 自院が予定する診療との関係はどうか
- 開業時期や準備スケジュールに影響するか
指定状況や具体的な運用は都道府県ごとに異なります。開業予定地が絞られている場合は、管轄する都道府県の担当部署や保健所等へ確認します。保険医療機関の指定や診療報酬上の取扱いについては、必要に応じて地方厚生(支)局にも確認します。
地域で不足する医療機能とは
外来医師過多区域では、その地域で不足する医療機能等が整理されます。国のガイドラインでは、例えば次のような内容が示されています。
- 夜間・休日等の初期救急医療:夜間・休日診療、在宅当番医、夜間休日急患センター等への出務
- 在宅医療:訪問診療・往診など
- 公衆衛生に関する医療:学校医、予防接種など
- 発熱外来、乳幼児健診、地域で不足する特定の診療科
医師不足地域での定期的な外来診療や、救急外来への出務などが想定される場合もあります。ただし、これらすべてを一つのクリニックが担うという意味ではありません。
実際に何が求められるかは地域によって異なるため、開業を検討している地域について公表内容を確認します。
求められることと、自院で担えることを分ける
地域で不足する医療機能が分かっても、それだけで自院の診療内容を決めることはできません。院長の経験や専門性、スタッフ数、診療時間、設備などから、現実的に継続できるかを確認します。
地域で求められているから何でも引き受けるのではなく、制度上の条件と自院の体制を照らし合わせることが重要です。
提供しない場合はどうなるか
地域で不足する医療機能等を提供しない意向だからといって、直ちに開業できなくなるわけではありません。一方、理由を確認・協議する仕組みがあります。
- 開設前に地域外来医療の提供意向等を届け出る
- 提供しない場合は理由を届け出る
- 必要に応じて協議の場で理由等を説明する
- 理由がやむを得ないと認められない場合、医療提供を要請されることがある
- 要請・勧告に従わない場合、保険医療機関の指定期間に影響することがある
- 必要に応じて説明・勧告・公表へ進む場合がある
要請・勧告に従わない場合、保険医療機関の指定が通常の6年ではなく3年以内の期限付き指定となることがあります。
制度上の流れを確認したうえで、自院の事情を整理します。
該当する可能性がある場合は、都道府県・保健所等や地方厚生(支)局へ最新の取扱いを確認しておくことが大切です。
制度上の事実と自院の判断を分ける
制度上確認する内容と、自院として決める内容を分けると、開業判断を整理しやすくなります。
制度上確認すること
- 対象区域への該当状況
- 事前届出の時期と内容
- 地域で不足する医療機能
- 提供しない場合の協議・要請等
- 保険医療機関指定等への影響
自院として判断すること
- どのような患者さんを診たいのか
- 経験や専門性をどう生かすのか
- 無理なく担える医療は何か
- 担わない、または担えない医療は何か
- 自院で完結しない医療をどこへつなぐのか
- その条件でもこの地域で開業するのか
「規制があるから諦める」「求められたことはすべて行う」という二択ではありません。確認した事実から、自院として続けられる計画を組み立てます。
診療圏もあわせて確認する
制度上の条件が分かっても、それだけで開業場所の判断は決まりません。開業を検討している地域の需要・供給・競合・地域連携も確認します。
- 需要:どのような患者さんや医療ニーズがあるか
- 供給:すでにどのような医療が提供されているか
- 競合:自院の予定する診療と周辺医療機関がどの程度重なるか
- 地域連携:自院で完結しない医療をどこへつなげるか
制度上の「外来医師過多区域」という位置付けと、個別の診療科や患者層の需要は同じではありません。制度と診療圏は別の情報として確認し、自院の計画と照らし合わせます。
担う・担わない・連携するを整理する
地域の状況を確認したら、自院の診療を「担う」「担わない」「連携する」の3つに分けて考えます。
自院で担う
経験や専門性を生かせ、現在の人員・設備で無理なく続けられる診療。
自院では担わない、または現時点では担えない
専門性、人員、設備、診療時間などから継続が難しい医療。
地域と連携する
専門医療、入院、高度な検査・治療など、自院の診療範囲を超える患者さんを適切な医療機関へつなぐこと。
担わないことを決めることも開業計画の一部です。一つのクリニックですべてを完結させず、自院で診る範囲と他院へつなぐ範囲を整理します。
クリニック開業準備は何から始める?物件・資金計画の前に整理したい判断軸
確認した事実を開業計画へつなげる
最後に、制度、診療圏、自院の診療方針、スタッフ体制、物件、資金計画を並べ、開業計画全体として無理がないかを確認します。
- 開業を検討している地域の制度上の条件を確認する
- 需要・供給・競合・地域連携を確認する
- 自院で提供したい診療を整理する
- 人員・時間・設備・資金から担える範囲を確認する
- 担わない部分と連携先を整理する
- 物件、開業時期、採用、資金計画へ反映する
行政への確認は、届出を間違えないためだけではありません。開業計画の前提条件を確定するための確認でもあります。
大切なのは、「なぜこの地域で、どのような診療を、どのような体制で行うのか」を自院として説明できる状態にすることです。
開業する・しないを先に決めるのではなく、確認してから計画を立てる。
制度を過度に恐れる必要はありませんが、確認せずに進めることも避けたいところです。開業を検討している地域について確認できた事実を、一つずつ開業計画へ反映していきます。
参考資料
制度や地域ごとの運用は更新される可能性があります。実際の開業準備では最新の公表資料と管轄行政への確認を行ってください。
制度を確認したあと、開業計画をどう整理するか迷うときに
まえやまだ純商店では、確認できた事実、論点、選択肢を整理し、院長ご自身が自院として判断しやすい状態を整えます。
