診療圏調査シリーズ⑤:数字と背景をどう組み合わせるか

これまでのシリーズで「需要」「供給」「競合」「協業」という4つの切り口から診療圏調査を見てきました。最終回では、それらをどのように組み合わせて意思決定につなげるのかを考えます。
診療圏調査は“血液検査”のようなもの
診療圏調査は人口統計や競合状況などを数値で示すものですが、それはあくまで 血液検査のデータ のようなものです。血液検査の結果は診断に欠かせない指標ですが、それだけで治療方針を決めることはありません。患者さんの症状や生活背景を重ねてこそ、正しい診断に至ります。
同じように、診療圏調査の数字も重要ですが、それだけで「開業の成否」を決めることはできません。
数字に背景を重ねる
診療圏調査で得られた数字に対して、次のような背景を重ねることが欠かせません。
- 先生ご自身のビジョン
どんな医療を提供したいのか。どんな働き方を望むのか。 - 地域の特徴
将来人口の推移、生活環境、患者さんの価値観。 - 医療ネットワーク
競合だけでなく協業できる医療機関や施設の存在。
数字に背景を重ねることで、診療圏調査は単なる「立地の良し悪し」ではなく、「自分が地域でどう存在できるか」を考えるための道具になります。
「三方よし」の視点でまとめる
ここで役立つのが、近江商人の「三方よし」の考え方です。
- 売り手よし:先生自身がやりたい医療、望む働き方
- 買い手よし:患者さんが安心して通える診療体験
- 世間よし:地域にとって必要とされる医療機能
診療圏調査の数字に「三方よし」の視点を重ねることで、開業場所の選定は単なるビジネス判断ではなく、理念と現実を結びつけるプロセスに変わります。
詳しくはこちらの記事 → クリニック開業と地域医療 ― 「三方よし」の視点で考える
おわりに
診療圏調査は、開業準備の中で欠かせない作業ですが、数字そのものが答えを示してくれるわけではありません。
大切なのは、
- 需要──地域がどんな医療を求めているか → 診療圏調査シリーズ①:需要編
- 供給──すでにどんな医療が提供されているのか → 診療圏調査シリーズ②:供給編
- 競合──どう差別化して選ばれるか → 診療圏調査シリーズ③:競合編
- 協業──どう連携して地域を支えるか → 診療圏調査シリーズ④:協業編
- 背景──先生のビジョンや診療スタイル
これらを総合的に重ね合わせて考えることです。
診療圏調査はそのための“血液検査”であり、道しるべであり、未来を描くための道具です。数字に寄りかかりすぎず、背景を丁寧に重ねながら、一歩ずつ開業の形を固めていくことが大切だと私は考えています。
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→診療圏調査シリーズ|まとめページ
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