診療圏調査シリーズ②:クリニックにおける「供給」を考える

前回の記事では「需要」、つまり 地域の人々がどんな医療を求めているのか について考えました。
詳しくはこちら → 診療圏調査シリーズ①:クリニックにおける「需要」を考える
今回はその需要に対して「すでにどんな医療が提供されているのか」──つまり 供給 について整理してみます。
供給とは何か
医療における供給とは、「その地域で既にどのような医療機関やサービスが提供されているか」を意味します。小売業でいえば「近くにどんな店があり、どんな商品を扱っているか」にあたります。
供給を確認するには、次のような視点があります。
- 診療科目
近隣に内科、小児科、皮膚科など、どんな診療科のクリニックがあるか。 - 診療スタイル
午前のみ診療なのか、夜間まで診ているのか、予約制かどうか。 - 規模や強み
検査機器が充実している、専門外来を持っている、在宅医療も行っている…など。
競合だけでなく「協業」の視点も大切
供給を考えるとき、多くの先生は「競合=ライバル」として捉えがちです。もちろん同じ診療科のクリニックは競争相手になりますが、それだけではありません。
- 内科と耳鼻科が連携することで、かぜやアレルギーの患者さんを相互に紹介できる。
- 泌尿器科と皮膚科が連携することで、患者さんの生活の質を幅広く支えられる。
- 在宅医療を担うクリニックと協力することで、地域包括ケアに貢献できる。
供給の把握は「敵を知るため」だけでなく、「協力できる仲間を知るため」にも意味があります。
勤務医と開業医の視点の違い
勤務医の先生は、病院内で患者さんを診ることが中心であり、地域にどんなクリニックがあるかを意識する機会は少ないかもしれません。
しかし開業を考えるときには、自分の診療が地域でどう位置づけられるのか を考える必要があります。これは「競争に勝つ」ためだけではなく、地域医療のネットワークの一員になる ための視点でもあります。
数字と現場感覚を重ね合わせる
供給を調べるときには、診療圏調査で示される「競合クリニックの数」などの数字も役立ちます。ただし、それは血液検査の数値と同じで、数字だけでは診断はできません。
- 実際にそのクリニックにどれくらい患者さんが集まっているのか
- どんな評判があるのか
- 院長先生がどんな診療スタイルを大切にしているのか
こうした“現場感覚”を組み合わせることで、供給の姿が立体的に見えてきます。
おわりに
供給を把握することは、開業するクリニックの立ち位置を考えるうえで欠かせません。競合を知ることはもちろん大事ですが、同時に「協業できる医療機関を見つけること」も大切です。
まとめると、供給を見るときのポイントは、
- どんな診療科・スタイルのクリニックがあるかを調べる
- 数字だけでなく現場の様子や評判も確認する
- ライバルだけでなく協力できるパートナーの可能性を探す
こうした視点を持つことで、自分のクリニックが地域でどのような役割を果たせるのかが、より具体的に見えてくるはずです。
次回は、需要と供給を踏まえた上で注目されやすい「競合」をテーマに考えていきます。
関連記事
→診療圏調査シリーズ①:クリニックにおける「需要」を考える
→診療圏調査シリーズ③:クリニックにおける「競合」を考える
→診療圏調査シリーズ④:クリニックにおける「協業」を考える
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