診療圏調査シリーズ②:クリニックにおける「供給」を考える
前回の記事では「需要」──つまり地域の人々がどんな医療を求めているのかを考えました。
詳しくはこちら → 診療圏調査シリーズ①:クリニックにおける「需要」を考える
今回は、その需要に対してすでにどんな医療が提供されているのか──つまり供給について整理してみます。
なお、2026年度診療報酬改定では、外来医師過多区域での新規開業にあたり、 「地域でどの医療機能を担うのか」がより明確に問われる仕組みが導入されます。
供給を把握することは、単なる競合分析ではなく、 地域の中で自院がどんな役割を担うのかを考える作業にもつながります。
詳しくは → 診療圏調査シリーズ⑥:「役割」を考える をご覧ください。
診療圏調査における「供給」とは
医療における供給とは、「その地域でどのような医療機関やサービスが提供されているか」を意味します。
小売業でいえば「近くにどんな店があり、どんな商品を扱っているか」にあたります。
供給を確認する際の主な視点は、次の通りです。
- 診療科目:内科、小児科、皮膚科など、近隣にどんな診療科があるか。
- 診療スタイル:午前のみ診療、夜間診療、予約制の有無など。
- 規模や強み:検査機器の充実度、専門外来の有無、在宅医療の提供など。
供給=「競合」だけでなく「協業」の視点も
供給を考えるとき、多くの先生は「競合=ライバル」として捉えがちです。 もちろん同じ診療科のクリニックは競争相手になりますが、それだけではありません。
- 内科と耳鼻科が連携し、かぜやアレルギーの患者さんを相互に紹介できる
- 泌尿器科と皮膚科が協力して、患者さんの生活の質を支える
- 在宅医療を担うクリニックと協力し、地域包括ケアを推進する
供給の把握は「敵を知るため」だけでなく、「協力できる仲間を知るため」にも大きな意味があります。
勤務医と開業医で異なる「供給」の見え方
勤務医の先生は、病院という枠の中で患者さんを診ることが中心です。 そのため、地域にどんなクリニックがあるかを意識する機会は少ないかもしれません。
一方、開業を考えるときには 自分の診療が地域でどう位置づけられるのかを考える必要があります。
これは単に「競争に勝つ」ためではなく、 地域医療ネットワークの一員としてどう関わるかを考えるための重要な視点です。
数字と現場感覚を重ね合わせる
供給を把握する際には、「競合クリニックの数」などの診療圏データが役立ちます。
ただしそれは血液検査の数値のようなもので、数字だけでは全体像を判断できません。
- 実際にどれくらい患者さんが集まっているか
- どんな評判があるか
- 院長先生が大切にしている診療スタイル
こうした“現場感覚”を組み合わせることで、供給の姿がより立体的に見えてきます。
そして今後は、単に「競合が多い・少ない」ではなく、 その地域で不足している医療機能は何かという問いも重なってきます。
供給を読むことは、地域の医療構造を理解すること。 そのうえで、自院がどの位置に立つのかを考える作業でもあります。
おわりに
地域の供給状況を把握することは、開業するクリニックの立ち位置を考えるうえで欠かせません。
競合を知ることはもちろん大切ですが、同時に「協業できる医療機関を見つけること」も重要です。
- どんな診療科・スタイルのクリニックがあるかを把握する
- 数字だけでなく現場の評判や特徴を確認する
- ライバルだけでなく協力できるパートナーの可能性を探す
こうした視点を持つことで、自院が地域の中で果たすべき役割がより明確になります。
次回は、需要と供給を踏まえた上で注目されやすい「競合」をテーマに考えていきます。
📘 診療圏調査シリーズ
開業前に、供給構造と「役割」を整理する時間を
競合の数は分かる。けれど、「その地域で何を担うのか」は一人では整理しづらいテーマです。
開業準備・経営整理セッションでは、数値・現場感覚・理念を重ねながら、 先生ご自身の立ち位置を言語化していきます。