診療圏調査シリーズ④:クリニックにおける「協業」を考える

これまで「需要」「供給」「競合」について整理してきました。
前回の記事では「競合」、つまり同じ診療科を持つクリニックとの関わりについて考えました。
詳しくはこちら → 診療圏調査シリーズ③:クリニックにおける「競合」を考える
今回は少し視点を変えて、「協業」──地域で連携できる医療機関や施設との関わり を取り上げます。
協業とは何か
協業とは、「地域の医療機関や関連施設と協力して患者さんを支えること」です。競合が多い・少ないといった発想だけでなく、どう地域で役割を分担し合えるか という視点が重要になります。
協業が生まれる具体例
- 診診連携
例:内科と耳鼻科が連携し、かぜやアレルギーの患者さんを相互に紹介する。 - 病診連携
例:開業医が地域の基幹病院と連携し、必要に応じて検査や入院をスムーズに依頼する。 - 在宅医療との連携
外来診療が中心のクリニックでも、在宅医療クリニックと協力することで患者さんを地域で支えられる。 - 介護・福祉との協業
ケアマネジャーや訪問看護ステーションと連携し、医療と生活をつなぐ。
勤務医と開業医の視点の違い
勤務医の先生は、病院内で診療を完結させることが多く、協業を意識する機会は限られているかもしれません。
一方、開業医になると「患者さんを地域全体で支える」ことが求められます。これは「すべて自分で診る」から「必要に応じてつなぐ」へと役割が変化するイメージです。協業を意識することは、先生ご自身の負担を軽くすることにもつながります。
診療圏調査にどう生かすか
診療圏調査の過程で「周囲にどんな医療機関や施設があるか」を調べます。このとき、競合の数を数えるだけではなく、
- 「このクリニックとは連携できそうだ」
- 「この施設と組めば患者さんの生活を支えられる」
といった 協業の可能性 を探す視点を持つことが大切です。数値データだけでは見えてこない部分ですが、地域を歩き、実際に話を聞くことで新たなネットワークが広がります。
おわりに
開業を考えるとき、「競合に勝つ」ことだけに目を向けてしまいがちです。しかし、地域で長く続くクリニックを目指すなら、競合と同時に協業をどう築くか が欠かせません。
まとめると、協業を考えるポイントは、
- 診診連携・病診連携・在宅や介護との協力を意識する
- 競合調査の際に「協業の候補」としても見てみる
- 地域医療ネットワークの一員としての役割を考える
協業を前提にすることで、先生のクリニックは「患者さんの診療所」であると同時に、「地域を支える拠点」として位置づけられるでしょう。
次回は、これまでの「需要・供給・競合・協業」をふまえ、診療圏調査の活かし方をまとめていきます。
関連記事
→診療圏調査シリーズ①:クリニックにおける「需要」を考える
→診療圏調査シリーズ②:クリニックにおける「供給」を考える
→診療圏調査シリーズ③:クリニックにおける「競合」を考える
→診療圏調査シリーズ⑤:数字と背景をどう組み合わせるか
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