正解を急がず、 クリニック経営で重なりやすい論点を整理するために。 患者さんの視点も踏まえながら、 開業準備や日々の経営で迷いやすい場面の前提を整える時間です。

クリニック開業・経営コラム

診療圏調査シリーズ③:クリニックにおける「競合」を考える

これまで「需要」「供給」について見てきました。前回の記事では「供給」──地域でどんな医療が提供されているのかを整理しました。
詳しくはこちら → 診療圏調査シリーズ②:クリニックにおける「供給」を考える

今回は、多くの先生が最も気にされるテーマ──競合──について考えていきます。

なお、2026年度診療報酬改定では、外来医師過多区域での新規開業にあたり、 「地域で不足している医療機能の中で、どの機能を担うのか」を事前に示す仕組みが導入されます。
競合を読むことは、単に「勝てるかどうか」を見極める作業ではなく、 地域の中で自院がどんな役割を担うのかを具体化する作業にもつながります。
詳しくは → 診療圏調査シリーズ⑥:「役割」を考える をご覧ください。

診療圏調査における「競合」とは

競合とは、その地域で自院と同じ診療科を標榜する医療機関のことです。 「どれくらいの数があるか」「どの距離にあるか」は、診療圏調査で必ず確認される要素です。

ただし、競合を単純に「多い=リスク」「少ない=チャンス」と判断するのは危険です。

競合に関するよくある誤解

  • 誤解①:競合が少なければ成功する
    競合が少ないのは、「そもそもニーズが小さい地域」だからという可能性もあります。
  • 誤解②:競合が多ければ失敗する
    競合が多い背景に「需要の大きさ」がある場合もあります。差別化できれば十分に患者さんは来院されます。
  • 誤解③:競合=敵
    実際には、地域で役割を分担し合い、相互紹介や連携が成り立つことがあります。

競合との差別化ポイント

競合を把握したうえで重要になるのは、「自院は何で価値を出すのか」を明確にすることです。

  • 診療時間:夜間・土日診療など利便性の強化
  • 診療スタイル:予約制で待ち時間を短縮、専門外来の設置
  • 診療体験:丁寧な説明、院内導線・雰囲気、スタッフ対応
  • 提供機能:検査機器の充実、在宅医療や訪問診療との組み合わせ

競合の存在は脅威ではなく、自院の価値がどこにあるかを具体化するヒントになります。

ここでポイントになるのが「差別化=目立つこと」ではなく、役割の明確化という考え方です。
同じ診療科が並ぶ地域ほど、患者さんは「どこが良いか」だけでなく、 「どこが何を担っているか」を無意識に見ています。
自院が引き受ける範囲を言語化できるほど、競合の中でも立ち位置が作りやすくなります。

勤務医と開業医で見える景色の違い

勤務医の先生は、病院に来られる患者さんを診ることが日常で、競合を意識する機会は多くありません。

一方で開業時は、同じ診療科のクリニックが近隣にあるかどうかが、患者さんの選択に直結します。
これは「ライバルを気にする」というよりも、患者さんの立場で比較・選択を受け止める視点と捉えるとわかりやすいでしょう。

数字は「血液検査」のように扱う

診療圏調査では、競合の数や位置が地図・数値で示されます。ただしそれは血液検査の数値と同様の“指標”にすぎません。

  • 競合数だけで判断しない
  • 実際の患者集まり具合(混雑・待ち時間など)を観察する
  • 評判・診療スタイル・強みの違いを把握する

こうした背景情報を重ねることで、競合状況を立体的に理解できます。

そして今後は、競合の多寡だけでなく、地域で不足している医療機能は何かという問いも重なってきます。
競合分析は「勝てるかどうか」だけではなく、 地域の医療構造の中で自院が引き受ける役割を定めるための材料にもなります。

おわりに

競合は「敵」ではなく、地域の需要をどう分け合い、どう差別化していくかを考えるための存在です。

  1. 競合が少ない=好条件、多い=悪条件と単純化しない
  2. 自院の差別化ポイント(=役割と価値)を明確にする
  3. 数字だけでなく、現場の評判や診療スタイルを合わせて把握する

次回は、競合の先にある「協業」──地域で連携できる医療機関について考えていきます。

📘 診療圏調査シリーズ

開業前に、競合と「役割」を整理する時間を

競合の数は見える。けれど、「この地域で何を担うのか」は一人では整理しづらいテーマです。

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