診療圏調査シリーズ③:クリニックにおける「競合」を考える

これまで「需要」「供給」について見てきました。前回の記事では「供給」、つまり地域にどんな医療が提供されているのかを整理しました。
詳しくはこちら → 診療圏調査シリーズ②:クリニックにおける「供給」を考える
今回は、多くの先生が最も気にされるテーマ──競合──について考えていきます。
競合とは何か
競合とは、その地域で 自分と同じ診療科を標榜しているクリニックや病院 のことを指します。「どれくらいの数があるか」「どの距離にあるか」は診療圏調査でも必ず示される要素です。
ただし、競合を単純に「多いからリスク」「少ないからチャンス」と判断してしまうのは危険です。
よくある誤解
- 誤解①:競合が少なければ成功する
実際には「ニーズ自体が少ない地域」だから競合がいない場合もあります。 - 誤解②:競合が多ければ失敗する
競合が多いのは「需要も多いから」という可能性があります。その中で差別化できれば十分に患者さんは来院されます。 - 誤解③:競合=敵
実際には同じ地域で役割を分担し合える関係もありえます。
差別化のポイント
競合を把握した上で重要になるのは、どう違いを打ち出すか です。
- 診療時間:夜間や土日診療で利便性を高める
- 診療スタイル:予約制で待ち時間を短縮、専門外来を設ける
- 診療体験:丁寧な説明、院内の雰囲気づくり、スタッフ教育
- 提供機能:検査機器の充実、在宅医療や訪問診療との組み合わせ
競合の存在は脅威ではなく、「自分のクリニックがどこで価値を出せるか」を考えるきっかけになります。
勤務医と開業医で見える景色
勤務医の先生は、病院に来られる患者さんを診ることが日常であり、競合を意識する場面はほとんどありません。
しかし開業すると、同じ診療科のクリニックが近隣にあるかどうかは、患者さんが「どのクリニックに行くか」を決める大きな要因になります。これは「ライバルを気にする」というよりも、患者さんが選ぶ立場に立って考える視点だと捉えると分かりやすいかもしれません。
数字は血液検査のように扱う
診療圏調査では「競合クリニックの数と場所」が数字や地図で示されます。しかし、それは血液検査の数値と同じです。
- 数字としての競合数だけで判断するのではなく、
- 実際にそのクリニックに患者さんがどのくらい集まっているか、
- どんな評判や特色があるか、
といった背景情報を合わせて見ることが不可欠です。
おわりに
競合は「敵」ではなく、「地域の需要をどう分け合い、どう差別化していくか」を考えるための存在です。
まとめると、競合を考えるときのポイントは、
- 競合が少ない=チャンス、競合が多い=リスク、と単純に決めつけない
- 競合を踏まえて、自分のクリニックの差別化ポイントを明確にする
- 数字だけでなく、現場の評判や診療スタイルも合わせて把握する
こうした視点を持つことで、競合の有無を正しく解釈し、自分のクリニックの戦略に活かすことができます。
次回は、競合の先にある「協業」──すなわち地域で連携できる医療機関について考えていきます。
関連記事
→診療圏調査シリーズ①:クリニックにおける「需要」を考える
→診療圏調査シリーズ②:クリニックにおける「供給」を考える
→診療圏調査シリーズ④:クリニックにおける「協業」を考える
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