まえやまだ純商店

クリニック開業・経営コラム

開業して3〜5年。うまく回っているのに次が見えないとき、院長が整理したいこと【クリニック経営相談Q&A】

開業して3〜5年ほど経つと、診療も院内の流れも一通り形になり、日々の運営は大きな問題なく回るようになってきます。

一方で、院長からはこのような相談を受けることがあります。

「患者数が大きく減っているわけではないけれど、次が見えない」
「今のやり方を続けていてよいのか分からない」
「スタッフの退職や属人化が気になり始めた」

これは、必ずしも失速や失敗のサインではありません。

開業時から続けてきたやり方が一度落ち着き、これからの診療体制やスタッフ体制、院長自身の働き方について考える余地が生まれている可能性があります。

開業3〜5年目に次が見えないと感じたときは、新しい施策を探す前に、患者数、診療体制、スタッフ体制、院長自身の働き方を分けて確認することが大切です。

この記事では、開業して3〜5年目の院長から実際によく相談される内容をもとに、今のクリニックで何が起きているのか、どのような順番で確認すると次の判断につながりやすいのかをQ&A形式で整理します。

Q1. うまく回っているのに違和感があるときは、どう考えますか

A. すぐに問題と決めつけず、今のやり方と今後の方向性が合っているかを確認します。

開業直後は、目の前のことを一つずつ形にしていく時期です。

診療の流れを整え、予約や受付の運用を決め、スタッフと一緒に院内の動きをつくっていきます。

多少の無理があっても、立ち上げ期の勢いで前に進めることがあります。

しかし、3〜5年ほど経つと、日常業務はある程度安定してきます。

大きなトラブルがあるわけではない一方で、開業当初のように、目の前の課題を解決するだけでは次の方向が見えにくくなることがあります。

このときに出てくる「このままでよいのだろうか」という感覚は、気持ちの弱さではありません。

今の診療体制や院内運用をこれからも続けたいのか、それとも少し変えたいのかを考える余地が生まれている状態とも言えます。

整理の視点:
「現在うまく回っているか」だけでなく、「今のやり方が、院長やスタッフにとってこの先も無理なく続けられるか」を確認します。

Q2. 患者数は大きく減っていないのに、次が見えません

A. 患者数を増やすことだけでなく、今の体制や今後の方向性を確認します。

開業直後は、地域での認知が広がることで患者数が増えやすい時期があります。

一方で、数年経つと、患者数や売上が急激に増えるわけではないけれど、大きく落ちているわけでもない状態になることがあります。

この状態になると、院長としては「天井が見えた」ように感じることがあります。

ただし、それだけで限界や停滞と判断する必要はありません。

この時期に確認したいのは、単に「もっと患者数を増やすにはどうするか」だけではありません。

  • 今後、どのような患者さんへ医療を届けたいのか
  • 現在の診療体制で無理なく受け入れられるのか
  • 院長自身がどこまで診療量を増やしたいのか
  • スタッフ体制や院内運用は、その方向性に合っているのか
  • 地域の中で、どのような役割を果たしていきたいのか

患者数だけを見ると、「増やすか、現状を維持するか」という話になりがちです。

けれど実際には、診療方針、スタッフ体制、院長の働き方、地域で担いたい役割まで含めて考えることで、自院に合った方向性が見えやすくなります。

Q3. スタッフ退職や属人化が気になります

A. 目の前の採用だけでなく、業務や判断がどこまで個人に支えられているかを確認します。

開業から数年経つと、オープニングから勤務していたスタッフの退職が出てくることがあります。

妊娠・出産、家族の事情、引越し、働き方の見直しなど、理由はさまざまです。

院長としては、信頼していたスタッフが抜けることで不安が大きくなるかもしれません。

特に、その人がいないと回らない業務が多い場合、退職は単なる人員減ではなく、院内運用そのものへの不安として表れます。

もちろん、診療を続けるために早急な採用が必要な場合もあります。

一方で、採用を進める前後で、次の点も確認しておく必要があります。

  • そのスタッフが担っていた業務は何か
  • 他のスタッフでも代替できる状態か
  • 院長だけが把握している判断が多すぎないか
  • マニュアルや業務フローに落とし込めているか
  • 現在の業務量に対して、本当に同じ人数や役割が必要か
  • 目の前の退職対応と、今後も続けられる運用を分けて考えられているか

スタッフ退職はつらい出来事ですが、院内のどこが特定の人の経験や頑張りに支えられていたのかを見えるようにする機会にもなります。

目の前の人員不足へ対応しながら、人が変わっても大きく崩れにくい運用を考えることで、同じ不安を繰り返しにくい院内体制へ近づけます。

整理の視点:
属人化の見直しは、誰かを責めるための作業ではありません。目の前の応急的な対応と、数年先も続けられる運用の両方から考えます。

Q4. 何から整理すればよいですか

A. いきなり施策を決めるのではなく、気になっていることを分け、事実と不安を区別します。

開業して数年経つと、院長の頭の中には複数のテーマが同時に浮かびます。

患者数、診療時間、予約枠、スタッフ体制、業務フロー、マニュアル、システム導入、設備投資、外部から受けた提案。

どれも大切ですが、一度に考えると、かえって判断しづらくなります。

また、診療の合間に資料を確認し、診療後にスタッフへ対応し、帰宅後も採用や今後の運用について考え続けていると、判断するための時間そのものが不足します。

最初に行うべきことは、すべての施策を比較して「正しい答え」を決めることではありません。

まずは、今どこに違和感があるのかを分けて考えます。

  • 患者数や収支など、数字に関する違和感なのか
  • スタッフ体制や役割分担に関する違和感なのか
  • 診療や院内運用の流れに関する違和感なのか
  • 院長自身の時間や働き方に関する違和感なのか
  • 将来の方向性に関する違和感なのか
  • 外部から受けた提案や選択肢が増えすぎていることへの違和感なのか

自分で整理するときの5つの順番

  1. 気になっていることを、一度すべて書き出す
    まとまった文章にする必要はありません。患者数、スタッフ、院長自身の負担など、思い浮かぶことを書き出します。
  2. テーマごとに分ける
    患者数、診療体制、スタッフ体制、院内運用、費用、院長の働き方などに分けます。
  3. 確認できている事実と、心配していることを分ける
    実際に起きていることと、「このままではこうなるかもしれない」という予測を区別します。
  4. 今、判断する必要があることを一つ選ぶ
    すべてを一度に決めず、期限や院内への影響を踏まえて優先順位を付けます。
  5. 必要な情報と確認先を決める
    誰に何を確認すれば判断できるのか、確認後に何を決めるのかを整理します。

違和感の正体が分からないまま施策を選ぶと、患者さんへの認知や来院につながる施策、採用、システム導入、マニュアル整備などが、それぞれ別の目的で進んでしまうことがあります。

反対に、今判断することと、まだ決めなくてよいことを分けられると、比較や迷いに使う時間を減らしやすくなります。

その分、院長が本来向き合いたい診療、スタッフとの対話、患者さんへの対応に時間を使いやすくなります。

Q5. 自分で整理しても次の判断が見えないときは、どう考えますか

A. 自分だけでは分けにくい論点や、確認できていない前提が残っていないかを見直します。

開業して3〜5年ほど経つと、考えるテーマが一つではなくなってきます。

患者数、スタッフ体制、院内運用、設備投資、システム導入、制度対応、今後の働き方。

それぞれが関係し合っているため、一つの課題だけを見ても、納得できる判断につながらないことがあります。

例えば、「スタッフを採用するか」という一つの相談でも、患者数の変化、現在の業務量、特定スタッフへの業務の偏り、院長が担っている業務、今後増やしたい診療内容によって、確認する論点は変わります。

このようなときは、すぐに新しい施策や正解を探すのではなく、次の点を確認します。

  • 現在、実際に何が起きているのか
  • これまでに何を行い、どのような変化があったのか
  • 本当に判断する必要がある課題は何か
  • 自院として何を大切にして判断するのか
  • 考えられる選択肢には何があるのか
  • それぞれの利点、懸念点、院内への影響は何か
  • 今決めることと、後で決めることは何か
  • 誰に何を確認する必要があるのか
  • スタッフや関係者へ、判断理由をどのように説明するのか

選択肢を増やすことよりも、自院の前提に照らして比べやすい状態にすることが、次の判断につながります。

また、判断の理由まで言葉にできると、スタッフや関係者へ「なぜこの方向に進むのか」を説明しやすくなり、院内の認識のずれも減らしやすくなります。

院内や外部から提案を受けた相手とは利害関係の少ない立場へ考えを出すことで、前提や判断基準を見直しやすくなることもあります。

その際は、院長の話を聞くだけで終わらず、これまでの経緯や確認できた事実、医療機関の開業・経営支援の経験を踏まえ、見落としている可能性のある論点や懸念点があれば率直に確認することも必要です。

整理の視点:
相談は、院長の代わりに答えを決めてもらうためのものではありません。判断理由を持ち、自院として納得して次の一手を決めやすい状態を整えるための選択肢の一つです。

まとめ

開業して3〜5年目に感じる違和感は、必ずしも失速のサインではありません。

診療が回るようになったからこそ、次の課題が見えてくることがあります。

患者数が安定してきたからこそ、今後の診療体制や地域で担う役割を考える余地が生まれることもあります。

スタッフ体制が変わり始めたからこそ、属人化や業務の見える化が必要になる場合もあります。

この時期に大切なのは、焦って新しい施策を始めることではありません。

今起きていることを分け、確認できている事実と不安を整理し、今判断することを一つ決めることです。

判断の前提や基準が整理されると、比較に使う時間が減り、迷う時間も減っていきます。

また、自分の判断理由を持てることで、スタッフや関係者へ説明しやすくなり、次の一手へ進みやすくなります。

その分、院長は診療、スタッフとの対話、患者さんへの対応など、本来向き合いたいことへ意識を戻しやすくなります。

まずは、すべてを一度に変えようとするのではなく、「今、何に違和感があるのか」「何を今判断する必要があるのか」を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

自分で整理してみても、次の判断が見えない院長へ

何を整理する必要があるのかを確認するところから始めます

患者数、スタッフ体制、院内運用、制度対応、設備投資、外部から受けた提案など、複数のテーマが重なると、自分だけでは論点や優先順位を分けにくくなることがあります。

また、選択肢を比較できても、スタッフへどのように説明するのか、次に誰へ何を確認するのかまで考えると、判断が止まることもあります。

状況確認面談(無料)では、現在気になっていることや、これまでの経緯を伺います。

無料で課題を解決したり、その場で答えや結論を提示したりする面談ではありません。

どのようなことで判断が止まっているのか、何を整理する必要がありそうか、まえやまだ純商店の支援がお役に立てそうかを双方で確認します。

そのうえで継続的な経営相談をご希望の場合は、現状、背景、論点、判断基準、選択肢、優先順位を整理します。

院長の話を聞くだけで終わらず、確認できた制度・公開情報やこれまでの医療機関支援の経験を踏まえ、見落としている可能性のある論点や懸念点についても率直にお伝えします。

誰に何を確認するのか、スタッフや関係者へどのように説明するのか、次に何を行うのかまで具体化し、院長ご自身が判断理由を持って次の一手を決めやすい状態を整えます。

※状況確認面談は初回のみ無料です。
※原則オンラインで、30〜60分程度です。
※この時点で契約を決めていただく必要はありません。

まえやまだ純商店 前山田純

この記事を書いた人

前山田 純 まえやまだ純商店

2011年から医療機関の開業・経営支援に従事。院長が一人では整理しきれない経営課題について、現状や背景、論点、判断基準、選択肢を整理し、自院として納得して判断できる状態づくりを支援しています。正解を押し付けるのではなく、院長自身が判断理由を持ち、次の一手を決められる状態づくりを大切にしています。

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