2026年診療報酬改定|施行直前に整理しておきたい届出と院内運用のポイント
※本記事は、2026年5月1日時点で公表されている令和8年度診療報酬改定の告示・通知・疑義解釈、および施設基準届出に関する情報をもとに、クリニック経営の観点から整理したものです。
はじめに|2026年診療報酬改定は「理解」から「対応」の段階へ
2026年(令和8年)診療報酬改定は、2026年6月1日の施行が目前に迫っています。
告示・通知・疑義解釈が出揃った現在は、「何が変わるのか」を読む段階から、自院としてどの届出が必要か、どの運用を変える必要があるかを整理する段階に入っています。
特に重要になるのが、5月7日から始まる施設基準の届出と、6月1日以降の院内運用の準備です。本記事では、直前期に確認しておきたいポイントを、クリニック経営の実務に引き寄せて整理します。
1.2026年5月時点で確認しておきたい前提
令和8年度診療報酬改定は、すでに「予測」ではなく「対応」の段階に入っています。
改定内容そのものを理解することも大切ですが、クリニック経営の実務では、次のような問いに落とし込む必要があります。
自院は、6月1日から何を算定し、何を見送り、どの運用を変えるのか。
ここが整理されていないと、届出書類の準備、ベンダー確認、院内掲示、ホームページ掲載、スタッフへの共有、患者説明が後手に回りやすくなります。
2.今回の改定でクリニックが見落としやすい論点
① ベースアップ評価料|対象者と報告スケジュールの確認が必要
今回の改定では、医療従事者の処遇改善が大きな柱のひとつです。ベースアップ評価料は、単に「算定できるか」を見るだけでなく、対象職員、届出様式、提出先、今後の報告スケジュールまで含めて確認する必要があります。
令和8年度改定では、届出時の賃金改善計画書の作成は不要となりました。その一方で、毎年8月に提出する報告書への対応が必要となるため、届出だけで終わりにせず、8月以降の報告スケジュールも社労士等と共有しておくことが重要です。
また、事務職員等も対象職員に含まれるようになったため、自院の対象者を改めて整理し直す必要があります。人件費に関わる項目であるため、院長だけで抱え込まず、社労士や税理士とも早めに確認しておきたい論点です。
なお、賃上げ目標の数値を達成できない場合でも、ベースアップ評価料自体は算定可能とされています。ただし、加算によって得られた収入は対象職員の賃金改善に充てる必要があるため、自院の人件費構造とあわせて整理しておくことが重要です。
② 医療DX関連加算|「導入済み」ではなく「届出・登録まで完了しているか」
医療DX関連の評価は、従来の医療DX推進体制整備加算から、電子的診療情報連携体制整備加算などへと再編されています。
ここで大切なのは、「オンライン資格確認を導入しているか」だけではありません。マイナ保険証の利用率、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスなど、複数の要件を組み合わせて、自院がどの区分に該当するのかを確認する必要があります。
すでに旧加算を算定しているクリニックであっても、令和8年6月以降に新たな加算を算定する場合は、改めて施設基準の届出が必要となる点に注意が必要です。
また、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスについては、システム導入だけでなく、医療機関等向け総合ポータルサイトでの運用開始日の登録が完了し、対応施設として公表されている状態であることが求められます。ベンダー側の対応状況とあわせて、自院側の登録状況も確認しておくことが重要です。
電子カルテ情報共有サービス等の対応が6月時点で間に合わない場合でも、マイナ保険証利用率などの基本要件を満たしていれば、まずは加算3の算定を検討することができます。ベンダー側の対応状況を踏まえながら、段階的に対応していくという整理も現実的な選択肢になります。
③ 生活習慣病管理・充実管理加算|経過措置と実績値の確認が必要
生活習慣病管理に関連する評価では、外来データ提出加算の流れを受けて、充実管理加算への移行が重要な論点になります。
令和8年3月末時点で旧・外来データ提出加算(生活習慣病管理料)の届出を行っていたクリニックは、経過措置により令和9年3月末まで「充実管理加算1」の要件を満たすものとみなされます。そのため、6月以降の算定にあたって改めての届出は不要となります。
一方で、これから新たにデータ提出を開始する場合や、区分変更が必要となる場合は、厚生労働省から通知される実績値を確認したうえで、様式7の11などの届出が必要になります。すでに取り組んでいる場合でも、自院が経過措置の対象なのか、今後どのタイミングで届出が必要になるのかを整理しておくことが大切です。
また、生活習慣病管理料の療養計画書については、患者の署名は不要となりました。ただし、療養計画書の作成・交付、患者への説明、診療録への記載は引き続き必要です。診察室や受付での運用負担に影響する変更点であるため、院内で共有しておきたいポイントです。
生活習慣病外来は、単に算定項目を確認するだけでなく、検査、説明、記録、継続受診、データ提出といった一連の流れを院内でどう回すかが問われます。
④ 小さな加算ほど、現場では負担になりやすい
診療報酬改定では、点数の大きな項目に目が向きがちです。しかし現場で負担になりやすいのは、むしろ小さな加算や細かな施設基準です。届出、掲示、記録、説明、患者対応、ホームページ掲載が増えると、受付・事務・看護師の動きにも影響します。
3.施設基準届出で注意したいスケジュール
令和8年6月1日から新たな施設基準に基づいて算定するためには、原則として、指定された期間内に届出を行う必要があります。
施設基準届出の基本スケジュール
- 2026年5月7日(木):届出受付開始
- 2026年5月18日(月)まで:可能な限り早期提出が推奨される目安
- 2026年5月25日(月):電子申請の受付開始
- 2026年6月1日(月):届出期限・新診療報酬施行
注意したいのは、郵送等の届出と電子申請で、実務上の動き出しが異なる点です。オンラインでの届出を予定している場合、電子申請の受付開始が5月25日からとなるため、提出時期が直前になりやすい点にも注意が必要です。
可能な限り5月18日までの提出が推奨されている一方で、電子申請を利用する場合は5月25日以降の受付となります。そのため、電子申請を待つのか、郵送等で早めに提出するのかを、事務担当者と早めにすり合わせておくことが重要です。
地方厚生局ごとに案内や提出先が異なる場合があります。そのため、厚生労働省の資料だけでなく、自院所在地を管轄する地方厚生局のページも確認しておくことが重要です。
5月下旬に入ってから確認を始めると、様式の準備、院内確認、ベンダー確認、ホームページ更新、郵送・電子申請の段取りが重なり、現場に負荷がかかりやすくなります。
4.5月中に確認したい実務チェックリスト
ここからは、院長・事務長・受付・看護師・外部専門家と共有しやすい形で、確認項目を整理します。
5月1日版|クリニックの実務チェックリスト
- ベースアップ評価料:事務職員等も対象に含まれることを踏まえ、対象者を再確認し、新様式での届出と8月以降の報告の段取りを社労士等と共有しているか
- ベースアップ評価料の賃上げ原資:賃上げ目標に届かない場合でも、加算収入を対象職員の賃金改善に充てる前提で算定可否を整理しているか
- 医療DX関連加算:旧加算を算定済みでも改めて届出が必要となることを理解し、自院がどの区分に該当するか確認しているか
- 電子的診療情報連携体制整備加算:マイナ保険証利用率、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス等の要件に加え、ポータルサイトでの運用開始日の登録状況を確認しているか
- 医療DXの段階的対応:電子カルテ情報共有サービス等が6月に間に合わない場合でも、まず加算3を確保できるか確認しているか
- 生活習慣病管理・充実管理加算:旧・外来データ提出加算の届出済み医療機関として経過措置の対象になるか、また新規・区分変更時に様式7の11などの届出が必要かを確認しているか
- 療養計画書の運用:患者署名が不要となった一方で、作成・交付・説明・診療録記載が引き続き必要であることを院内で共有しているか
- ウェブサイト掲載と院内掲示:各加算の算定に必要な事項について、院内掲示だけでなく、ホームページの更新手配も済ませているか
- 届出スケジュールと提出方法:5月7日から6月1日必着、可能な限り5月18日までの早期提出、電子申請は5月25日受付開始という日程を事務担当者と共有しているか
- スタッフ共有:受付・看護師・事務担当者が、6月1日以降に変わる運用を理解しているか
- 外部連携:社労士、税理士、レセコン会社、電子カルテベンダー、ホームページ管理会社など、確認先が明確になっているか
すべてを院長ひとりで抱える必要はありません。ただし、最終的に「自院として何を算定し、どこまで対応するか」を決めるのは経営判断です。
5.院長が見るべきポイントは「算定できるか」だけではない
診療報酬改定の直前期になると、どうしても「算定できるか」「届出が必要か」という確認に意識が向きます。もちろん、それは重要です。
ただ、クリニック経営としては、その先にある運用まで見ておく必要があります。
算定できることと、無理なく続けられることは、必ずしも同じではありません。
たとえば、届出はできても、記録や説明の負担が現場に偏る場合があります。点数は取れても、受付や看護師の業務が複雑になり、患者対応に影響する場合もあります。
一方で、療養計画書の患者署名が不要になるように、現場負担が軽くなる変更もあります。制度対応は「負担が増えるもの」と一括りにせず、自院にとって何が負担になり、何が運用改善につながるのかを分けて見ることが大切です。
また、院内掲示やホームページ掲載のように、診療そのものではない周辺業務が増えることで、誰が確認し、誰が更新し、誰が最終確認するのかが曖昧になりやすい場面もあります。
だからこそ、制度対応では「取れる点数」を見るだけでなく、自院の診療体制・スタッフ体制・患者層に合っているかを一度整理しておくことが大切です。
まとめ|2026年診療報酬改定は、直前の「棚卸し」が大切になる
2026年診療報酬改定は、すでに内容を理解する段階から、届出と運用を整える段階に移っています。
5月中に確認したいのは、単に「どの点数が取れるか」ではありません。自院がどの施設基準に該当し、どの届出が必要で、6月1日以降にどの運用を変える必要があるのか。その全体像を整理することです。
改定対応は、制度を追いかける作業であると同時に、クリニックの診療体制や役割分担を見直す機会でもあります。直前に慌てないためにも、まずは自院に関係する論点を棚卸ししておくことが大切です。
※本記事は、2026年5月1日時点で確認できる情報をもとに整理しています。実際の届出要否や提出方法は、必ず厚生労働省および管轄の地方厚生局の最新情報をご確認ください。
制度対応や届出判断で、考えることが増えてきた院長へ
判断が重くなり始めた段階で、制度対応の論点を整理する伴走を行っています
診療報酬改定や施設基準の届出では、点数や要件を確認するだけでなく、自院として何を優先し、どこまで対応するかを考える場面が増えていきます。
まえやまだ純商店では、正解を提示するのではなく、院長が自院の状況に照らして判断できるように、論点と優先順位を整理する支援を行っています。
相談内容が整理できていない段階でも問題ありません。
むしろ、何から考えるべきかを整理するところから始まることが多くあります。
臨床と同じように、経営判断も「症状が出てから」ではなく、「違和感の段階」で整理することに意味があります。
※実務代行ではなく、判断の前提を整理するための相談です。
※合わないと感じた場合は、その時点で終了していただいて構いません。