患者対応が噛み合いにくい理由|かかりつけ医機能と患者行動の変化から考える経営判断
本記事は、2026年4月22日時点の告示・通知・疑義解釈(その4:2026年4月21日発出)をもとに整理しています。医療DX関連施設基準については、その後に追加の疑義解釈・事務連絡等が示される可能性があるため、実際の算定や届出にあたっては最新の案内を必ずご確認ください。
2026年度診療報酬改定では、医療DX関連の評価が見直され、クリニックとしても「どこまで対応するか」を整理しておきたい局面になっています。
この記事では、加算3 → 加算2 → 加算1の順に整理しながら、自院の現在地と判断ポイントを見ていきます。
今回の改定では、従来の医療DX推進体制整備加算や医療情報取得加算などの評価体系が整理され、その流れの中で電子的診療情報連携体制整備加算が新設されています。
電子的診療情報連携体制整備加算は、従来の医療DX推進体制整備加算や医療情報取得加算、診療録管理体制加算の評価の見直しの流れの中で新設された加算です。制度全体の位置づけについては、厚生労働省の改定説明資料でも整理されていますので、背景を確認したい場合は下記資料も参考になります。
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2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称での届出を改めて行う必要があります。
目次
1.まず整理しておきたい全体像
今回の見直しでは、医療DXに関する体制を段階的に評価する考え方がより明確になりました。実務上は、いきなり最上位を目指すのではなく、まず自院がどの段階にいるかを把握し、そのうえで上位区分を検討していく方が現実的です。
| 区分 | 点数 | 位置づけ | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 加算3 | 4点 | 基本対応 | まず確実に整えたい土台 |
| 加算2 | 9点 | 中間対応 | 現実的に一段上を目指すライン |
| 加算1 | 15点 | 高度対応 | 設備・運用・今後の方向性まで含めて検討するライン |
すべてのクリニックが最初から加算1を目指すべき、という整理ではありません。まずは加算3を含めた現在地の確認から始める方が現実的です。
2.まず現実的な出発点になる「加算3」
まだ大きなシステム更新を予定していないクリニックや、まず制度対応の土台を整えたいクリニックにとって、検討しやすいのが加算3です。オンライン請求、オンライン資格確認、診察室等での情報閲覧体制、明細書の無償交付、健康相談体制、院内掲示やホームページ掲載といった基本対応が中心になります。
※要件となるマイナ保険証利用率30%以上の判定は、原則として算定月の3か月前のレセプト件数ベースで行われます。これに代えて前月または前々月の値を用いることもできますが、6月算定開始を目指す場合は、原則として3月実績を基準とし、これに代えて2月または1月の値を用いることになります。
加算3を考えやすいクリニックの例
・まずは届出漏れなく基本対応を整えたい
・紙カルテまたは現行システムを当面維持する予定である
・電子処方箋や大きなシステム更新は、まだ今すぐではない
・まず算定できる区分を安定して押さえたい
自院の現在地チェック(加算3)
□ オンライン請求を実施している
□ オンライン資格確認を導入している
□ 診察室等で必要な診療情報を閲覧できる体制がある
□ 明細書の無償交付を行っている
□ マイナポータル等の医療情報に基づく健康相談に対応できる体制がある
□ 院内掲示に加えて、ホームページ掲載にも対応できる
□ まずは基本対応を確実に整える方針である
3.次に現実的な上位ラインとして考えやすい「加算2」
加算2は、多くのクリニックにとって「現実的な上位ライン」として検討しやすい区分です。加算3の基本要件に加えて、電子処方箋、要件を満たす電子カルテ、情報共有ネットワーク等の追加要件のうち、いずれか1つを満たせばよいためです。
そのため、例えば先に電子処方箋を導入することで、一段上の区分を現実的に狙えるケースがあります。なお、接続要件については、単にシステムを導入するだけではなく、「医療機関等向け総合ポータルサイト」から運用開始日の登録を行い、厚生労働省のウェブサイト上で対応施設として公表されている状態であることが求められます。
なお、疑義解釈(その4)時点では、同サイト上での登録機能の詳細は今後案内される前提となっており、実際の登録方法や開始時期については最新の公表内容を確認する必要があります。
加算2を考えやすいクリニックの例
・電子処方箋の導入を現実的に進められる
・電子カルテを導入済み、または更新を検討している
・マイナ保険証の利用が少しずつ定着してきている
・加算3で止まるより、現実的に一段上を目指したい
4.加算1は「取れるかどうか」より「取る意味があるか」で考える
加算1は最上位の評価です。ただし、クリニックにとっては、「最上位だから目指す」というより、「自院の今後の方向性に合っているか」で考える方が実務的です。
なお、電子カルテ情報共有サービスに関する要件のうち、「接続インターフェースを有していること」については、国のシステムが本格稼働するまでの当面の間は満たしているものとみなすとされています。ただし、「取得される情報を活用する体制」や「地域の医療機関間での情報共有ネットワークを活用する体制」については別途要件が求められるため、加算1の算定可否は個別に確認が必要です。
2026年6月時点で加算1の対応が難しい理由
① 電子処方箋の導入が前提になる
加算1(および加算2の選択要件)の算定には、電子処方箋を発行する体制、または調剤結果情報を電子処方箋管理サービスへ登録できる体制が必要になります。院外処方・院内処方で求められる実務も異なるため、自院の処方形態に合わせた確認が必要です。
② 標準規格に対応した電子カルテが必要になる
加算1では、接続インターフェースを備えた電子カルテ、または厚生労働省が認証する電子カルテ製品の導入が求められます。現時点ではメーカー側の対応待ちとなるケースも少なくありません。
③ マイナ保険証利用率30%以上は直前対応では間に合わない
加算1〜3の共通要件であるマイナ保険証利用率30%以上は、原則として算定月の3か月前のレセプト件数ベースで判定されます。6月算定開始を目指す場合は、原則として3月実績を基準とし、これに代えて2月または1月の値を用いることになります。
④ 既存の地域医療情報ネットワークへの参加実績が求められる
国の電子カルテ情報共有サービスが本格稼働していない現時点では、既存の地域医療情報ネットワークに参加し、実際に情報共有を行っている体制が求められる場面があります。地域によって状況は異なり、2026年6月時点から一気に対応するのは難しい医療機関も少なくありません。
このため実務上は、まず加算3、次いで電子処方箋導入等を踏まえた加算2を現実的な着地点として整理し、その後の動向を見ながら加算1への移行可能性を検討する流れが分かりやすいと思います。
5.順番としては「3 → 2 → 1」で考える方が整理しやすい
| 考え方 | 向いているケース |
|---|---|
| まず加算3(4点)を確実に押さえる | 基本対応の整理を優先したい、設備投資は最小限にしたい |
| 次に加算2(9点)を現実的に目指す | 電子処方箋などを活用しながら無理なく一段上を検討したい |
| 必要なら加算1(15点)を戦略的に考える | 電子処方箋や中長期のDX投資まで視野に入っている |
この順番で整理すると、「うちは今どこにいるのか」「次に何を判断すればよいのか」が見えやすくなります。
6.見落としやすい実務上の注意点
制度の読み方として見落としやすいのが、院内掲示だけでなく、ホームページ掲載も含めて対応が必要になる点です。
また、「マイナ保険証利用率30%以上」や「マイナポータルを通じた健康相談体制」などについては、要件を満たしていればよく、地方厚生(支)局長へ個別に証明書類を提出する必要はありません。
なお、本加算を算定する場合、明細書発行体制等加算(1点)は併算定できません。たとえば加算3(4点)を算定する場合でも、これまで明細書発行体制等加算を算定していた医療機関では、実質的な増点は3点として捉える方が実務上は分かりやすい場面があります。
7.特に注意したいのは「再届出」です
今回、実務上とても大事なのは、2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称で改めて届出を行う必要がある点です。
再届出の対象として特に確認したい医療機関
・2026年5月31日時点で医療DX推進体制整備加算を届け出ている医療機関
・2026年5月31日時点で診療録管理体制加算を届け出ている医療機関
・2026年6月1日以降に電子的診療情報連携体制整備加算を算定したい医療機関
6月1日から算定を開始するための届出期間は5月7日〜6月1日(必着)とされており、5月下旬は地方厚生(支)局等の窓口混雑が予想されるため、可能な限り5月18日までの届出に努めることとされています。
5月24日までに提出する場合は紙による届出を前提に、レターパックや簡易書留など追跡可能な方法で早めに郵送しておく方が実務上は安心です。電子申請による受付は5月25日から開始されますが、事前準備が必要になるため、自院がどの方法で提出するか早めに確認しておきたいところです。
ここで迷いやすいのは、「どの加算を取るか」よりも「自院ではどこまで対応するか」です。
電子処方箋をいつ導入するか、加算3でまず整えるのか、加算2まで目指すのか、地域の情報連携ネットワークまで含めて考えるのかは、クリニックごとに判断が分かれます。
こうした判断が重くなり始めたときは、論点を一度外に出して整理するだけでも、どこから考えていけばよいかが見えやすくなります。制度を踏まえた上で、自院としての進め方を整理したい場合は、はじめて利用される方へでも考え方をまとめています。
8.まとめ
今回の医療DX関連の見直しは、「最上位を目指すかどうか」から考えるより、まず自院の現在地を確認するところから始める方が整理しやすいと思います。
加算3(4点)で基本対応を整える
加算2(9点)を、電子処方箋などを活用した現実的な上位ラインとして考える
加算1(15点)は、自院の中長期的なDX投資の方向性に合うかを見て判断する
という順番が、実務上は分かりやすいはずです。
しかも今回の改定では、本加算の届出準備に加えて、ベースアップ評価料の届出も含めて5月末に向けて複数の届出対応が重なります。限られた期間の中で優先順位を整理しながら進めていくことが重要になります。
また、医療DX対応や院内掲示・ホームページ掲載は、単なる届出対応にとどまらず、患者さんが来院前に情報を確認し、診察室に入る前の前提をそろえる意味も持ち始めています。患者対応の違和感や、診察室での前提のズレについては、最近、患者対応が噛み合いにくくなった背景を整理した記事でも別の角度からまとめています。
なお、ベースアップ評価料の届出については、今回は賃金改善計画書の作成が不要となるなど、手続きが一部簡素化されています。届出が重なる時期ではありますが、過度に構えすぎず、優先順位を整理しながら進めていくことが大切です。
判断が重くなり始めた段階で、ご相談いただくことがあります
制度対応は、要件を確認すれば終わるものではなく、自院としてどこまで対応するか、何を優先するかを考える場面で迷いやすいものです。
実際には、判断が重くなり始めた段階で、論点や優先順位を整理するためにご相談いただくことがあります。
相談内容が整理できていない段階でも問題ありません。何から考えるべきかを整理するところから始まることも多くあります。
開業準備中の先生や、開業後の体制整備の中で制度判断の前提を整理したい先生は、下記ページもご覧ください。