2025年を振り返って見えた、クリニック経営の前提変化── 2026年に向けて、今から整えておきたいこと
※本記事は、開業後3〜10年程度が経過し、忙しさは増している一方で「このままで良いのか」と一度は立ち止まり始めた院長を主な読者として想定しています。
はじめに
2025年は、派手な制度改定があった年ではありません。
しかし現場では、クリニック経営の前提条件そのものが静かに切り替わった一年でした。
団塊の世代がすべて75歳以上となる、いわゆる「2025年問題」が現実となり、医療DX、かかりつけ医機能、物価・人件費高騰、そして人手不足。これら複数の変化が、時間差なく同時に押し寄せました。
2025年は、「何か大きく変えた」というよりも、これまで通用していた前提が、少しずつ合わなくなってきた年だったのではないでしょうか。
本記事では、2025年を振り返りながら、2026年に向けて、どこを整えておくべきかを整理していきます。
1.医療DXは「導入」から「前提インフラ」へ
要点:DXは「入れたか」ではなく、「日常業務として回っているか」が問われる段階に入りました。
2025年は、医療DXが「あれば良いもの」から、なくては業務が回らない前提インフラへと位置づけが変わった年でした。
マイナ保険証への対応は、受付業務の前提となり、電子処方箋の普及により、薬局との連携は日常業務の一部として組み込まれました。
また、電子カルテ情報共有サービスを見据え、情報連携のあり方そのものを見直す必要性も高まっています。
重要なのは、DXそのものではありません。
導入後、現場で無理なく定着しているかどうかです。
ツールを入れたことで、かえってスタッフや院長の負担が増えている。業務が分断され、判断が複雑になっている。そうした声も、少なくありません。
DXは目的ではなく、業務を安定させるための土台として機能しているか。2025年は、その点が問われ始めた一年でした。
2.物価・人件費高騰がもたらした「経営の二極化」
要点:努力の差ではなく、「構造を見直せたかどうか」で明暗が分かれ始めました。
2025年は、インフレと人手不足の影響が、クリニック経営を直接圧迫した一年でもあります。
賃上げへの圧力は年々強まり、医療材料費や外注費も上昇しました。
その結果、外来が忙しくても、思うように利益が残らない構造が目立つようになっています。
ここで重要なのは、頑張っているかどうかではなく、構造が合っているかどうかです。
同じように忙しく働いていても、業務設計や役割分担を見直せたクリニックと、従来のやり方を続けたクリニックとでは、少しずつ余力に差が出始めています。
2025年は、努力が足りないから苦しいのではなく、これまでの前提が合わなくなった結果として苦しくなっている。そう感じた院長も多かったのではないでしょうか。
3.かかりつけ医機能は「名乗るもの」から「説明するもの」へ
要点:自院の役割を“言語化できるかどうか”が、選ばれる条件になりつつあります。
2025年は、かかりつけ医機能が理念やスタンスではなく、制度として可視化され始めた年でもあります。
自院が地域でどのような役割を担うのか。どこまで対応し、どこからは専門医療機関につなぐのか。
こうした点を、患者や地域に対して説明することが、徐々に求められるようになってきました。
「何でも診る」という姿勢だけでは、かえって現場が疲弊してしまう時代です。
これからは、どんな患者に、どこまで関わるのかを言語化できるかが、信頼や選択につながっていきます。
2025年は、かかりつけ医機能を「どう名乗るか」ではなく、「どう説明するか」へと切り替える準備の年だったと言えるでしょう。
4.医師以外の医療従事者の働き方が、経営の前提を変えた
要点:人手不足の本質は採用ではなく、「無理を前提にしない働き方設計」ができているかどうかです。
2025年、クリニック経営の現場で静かに、しかし確実に起きていた変化があります。
それは、医師以外の医療従事者(看護師・医療事務・スタッフ)が、これまでの前提では働き続けられなくなってきたという事実です。
これまで多くのクリニックでは、忙しい時間帯は現場で何とか回す。急な欠員やトラブルは、誰かがカバーする。最終的には院長が調整役・穴埋め役になる。
そうした善意と我慢によって、日常業務が支えられてきました。
しかし2025年は、その前提が崩れ始めた年でした。
人が足りない、という言葉で片付けられがちですが、実際に起きているのは、忙しさと納得感が一致しなくなったという変化です。
判断の境界が曖昧なまま業務が増え、「これでいいのか分からない状態」で働き続けることは、以前よりも難しくなっています。
タスク・シフトは「医師のため」ではなく「チームのため」
タスク・シフト/シェアという言葉は、医師の働き方改革の文脈で語られることが多いですが、クリニック経営においての本質は少し異なります。
重要なのは、医師を楽にすることではなく、チーム全体に無理が生じない構造をつくることです。
- どこまでを現場で判断してよいのか
- どこから先は院長判断なのか
- 迷ったときの戻り先はどこなのか
これらが整理されていないと、スタッフは常に不安を抱え、院長は常に呼び出される構造になります。
院長が「全部を見る」体制の限界
2025年、多くの院長が無意識のうちに担っていたのが、調整役、最終判断役、穴埋め役としての役割です。
短期的には回りますが、この状態が続くと、院長自身の余力が削られ、スタッフは判断力を持てず、組織としての持続性が下がっていきます。
効率化とは、回転を上げることでも、急がせることでもありません。
誰かが無理をしなくても回る構造をつくること。
2025年は、その必要性がはっきりと見えた一年でした。
補足章|2026年に向けて求められる「チーム設計」という視点
要点:制度対応より先に、「人が無理をしない構造」を整えられるかが分かれ道になります。
2026年の診療報酬改定を前に、「次は何に対応すべきか」と考え始めている院長も多いと思います。
ただ、2025年の現場を振り返ると、新しい取り組みを増やす前に、先に整えておくべき前提が見えてきます。
それが、チームの設計です。
人手不足が続く中、採用や賃上げに意識が向くのは自然な流れです。
しかし、構造が変わらないまま人を増やしても、忙しさや判断の曖昧さは残ったままになります。
まず必要なのは、誰が、どこまで判断するのかを整理することです。
ここまでは現場で判断してよい。ここから先は院長が判断する。判断に迷ったときの戻り先を決めておく。
こうした線引きがあるだけで、スタッフの不安は減り、院長が呼び出される回数も減っていきます。
「任せる」と「放任」は違う
院長がすべてを背負い続ける体制は、2026年以降、ますます維持しにくくなります。
だからといって、急に「任せる」「自走を求める」だけでは、現場は混乱します。
必要なのは、設計された任せ方です。
任せる範囲を明示し、判断基準を共有し、失敗したときの責任の所在を曖昧にしない。
これは、スタッフのためでもあり、院長自身が消耗しないためでもあります。
2026年に向けて|「何をするか」より「どう続けるか」
2026年の制度改定は、確かに経営に影響を与えます。
ただ、制度は数年ごとに変わりますが、人の疲れ方や限界は、もっと早く表に出ます。
だからこそ、制度に合わせて現場を変える前に、現場が無理なく続く形を整えておく。
この順番が、これからのクリニック経営では、より重要になります。
2025年は、制度に振り回される年ではなく、前提を整えるための一年だった。
そう振り返ることができるのではないでしょうか。
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