医療法改正でクリニック開業はしづらくなる?何が変わるのか整理
更新日:2026年4月28日
医療法改正の話を聞いて、「これからクリニックは開業しづらくなるのでは」「都市部ではもう開業できないのでは」と不安を感じた先生もいるかもしれません。
結論から言えば、今回の改正によって、クリニックの開業そのものが禁止されるわけではありません。
ただし、外来医師が特に多い地域では、無床診療所の開設前の届出や、地域で不足する医療機能に関する協議への対応が、これまで以上に重要になります。
そのため、これからの開業準備では、「この場所で開業できるか」だけでなく、地域の中で自院が何を担い、どのような診療体制なら無理なく続けられるのかを考えておくことが大切です。
この記事で整理すること
- 医療法改正でクリニック開業はできなくなるのか
- 外来医師過多区域で何が変わるのか
- 開設前の届出や協議をどう受け止めるか
- 開業準備で確認しておきたい地域での役割
- 制度改正を自院の開業判断へどうつなげるか
目次
医療法改正でクリニック開業はできなくなるのか
まず押さえておきたいのは、今回の医療法改正は、クリニックの開業を一律に禁止する制度ではないという点です。
そのため、「自由開業制が完全になくなる」「都市部では一律に開業できなくなる」と受け止めるのは行き過ぎです。
一方で、これまでとまったく同じ感覚で開業計画を考えてよいとも言い切れません。
今回の改正で押さえたい点
- クリニックの開業そのものが禁止されるわけではない
- 外来医師が特に多い地域では、無床診療所の開設前の届出が必要になる
- 地域で不足する医療機能の提供について、要請や勧告が行われる場合がある
- 正当な理由なく要請などに応じない場合、保険医療機関の指定期間短縮などの影響が生じる可能性がある
つまり、これからの開業準備では、「開業できるか、できないか」だけでなく、地域の中でどのような医療機能を担うのかを説明できることが重要になります。
制度の一般的な情報を確認しただけでは、自院の開業判断は決まりません。
開業予定地、診療科、患者さんへの認知・来院の見込み、診療時間、スタッフ体制、近隣医療機関との連携などを踏まえ、自院の計画にどのような影響があるのかを確認する必要があります。
外来医師過多区域で何が変わるのか
今回の改正で特に意識したいのが、外来医師過多区域です。
外来医師過多区域は、外来医師が特に多い地域として、一定の基準に基づき指定されます。
すべての都市部が一律に対象になるわけではありませんが、医師が集中している地域で新規開業を考える場合には、これまで以上に地域医療との関係を意識する必要があります。
外来医師過多区域で確認したいこと
- 開業予定地が対象区域に該当するのか
- 開設前に、いつまでに何を届け出る必要があるのか
- その地域で不足するとされる医療機能は何か
- 自院が担うことを想定している医療機能は何か
- 地域での協議に向けて、どのような説明を準備する必要があるのか
ここで大切なのは、「医師が多い地域では開業できない」と単純に考えないことです。
地域に医師が多くても、患者さんが必要としている医療機能が十分に提供されていない場合はあります。
反対に、立地や診療内容が地域の実情と大きくずれている場合には、開業計画の前提を見直した方がよいこともあります。
同じ制度改正でも、あるクリニックでは計画への影響が小さく、別のクリニックでは、予定地や診療体制をあらためて確認する必要が生じます。
制度の一般論だけで結論を出すのではなく、自院の予定地、診療科、対象とする患者層、診療体制と照らし合わせて考えることが必要です。
地域ごとの確認が必要です
外来医師過多区域への該当状況、地域で不足するとされる医療機能、届出や協議の具体的な運用については、開業予定地を管轄する都道府県の公表資料や担当部署へ確認してください。
開設前の届出や協議をどう受け止めるか
外来医師過多区域で無床診療所を開設する場合には、開設前の届出や、地域で必要とされる医療機能に関する協議への対応が重要になります。
届出や協議があるからといって、直ちに開業を認めてもらえなくなるという意味ではありません。
ただし、都道府県から、地域で不足する医療機能などを担うよう要請される可能性があります。
要請や勧告に正当な理由なく応じない場合には、保険医療機関の指定期間が通常より短くなるなど、開業後の運営に影響が生じる可能性があります。
届出や協議の受け止め方
- クリニックの開業を一律に止める制度ではない
- 地域医療における自院の役割について、説明する必要性が高まる
- 地域からの要請や勧告が、自院の運営に与える影響を確認する
- 制度対応だけでなく、診療体制や地域連携も含めて考える
過度に不安になる必要はありません。
一方で、「これまでと同じように、希望する場所で希望する形のクリニックをつくればよい」と軽く受け止めることもできません。
開業準備では、物件、資金、内装、採用、患者さんへの認知・来院、システム、医療機器など、複数の検討事項が同時に進みます。
その中で制度対応だけを切り離して考えると、後から診療内容やスタッフ体制、地域連携の方針を見直すことになりかねません。
まずは制度上の事実を確認したうえで、自院の計画のどこに影響するのかを分けて考えることが大切です。
制度とあわせて整理したい「地域での役割」と開業方針
今回の改正を考えるうえで重要なのは、法律の文言や手続きだけではありません。
開業を考える段階で、自院が地域の中で何を担い、何を担わないのかを考えておくことです。
例えば、次のような方向性が考えられます。
- 地域のかかりつけ医として、幅広い健康問題に対応する
- 特定領域に強みを持つクリニックとして専門性を提供する
- 病院や専門医療機関へつなぐ橋渡し役を担う
- 慢性疾患の継続管理を担う
- 在宅医療、休日・夜間対応など、地域で不足する機能の一部を担う
これらをすべて担う必要がある、という意味ではありません。
開業予定地の地域事情だけでなく、院長が提供したい医療、スタッフ体制、診療時間、資金、院長自身の生活なども考慮する必要があります。
地域で不足している機能であっても、自院の人員や設備では無理なく続けられない場合があります。
その場合は、単に「対応しない」と決めるのではなく、なぜ担うことが難しいのか、他院との連携で何を補えるのかを考えておくことが必要です。
地域での役割を整理すると、判断しやすくなること
- 複数の開業予定地を比較しやすくなる
- 標榜する診療内容や診療時間を決めやすくなる
- 必要なスタッフ数や求める役割が明確になる
- システムや医療機器の必要性を判断しやすくなる
- 近隣医療機関との連携方針を考えやすくなる
- 行政や関係者へ、自院の考えを説明しやすくなる
制度への対応は、単なる手続きではありません。
自院がどのような医療を提供し、どの患者さんを支え、どの範囲まで責任を持つのかという、クリニック経営の前提にも関わります。
この前提が曖昧なままだと、新しい制度情報や外部からの提案に触れるたびに、何を基準に判断すればよいのか分からなくなります。
反対に、自院の役割や判断基準が整理されていれば、「自院に関係すること」「今確認すること」「開業後に見直すこと」を分けて考えやすくなります。
開業準備では何をどの順番で確認するのか
医療法改正の情報に触れて不安を感じた場合でも、すぐに開業予定地や診療内容を変更する必要があるとは限りません。
まず、制度上の事実と、自院として判断する内容を分けて確認します。
1.制度上の事実を確認する
- 開業予定地は外来医師過多区域に該当するのか
- 開設前の届出は、いつまでに何を提出するのか
- その地域では、どのような医療機能が不足するとされているのか
- 要請や協議が行われる場合、どのような流れになるのか
2.自院の開業計画と照らし合わせる
- 自院が想定する患者層と地域の実情にずれはないか
- 地域の中で、どのような役割を担いたいのか
- 現在のスタッフ体制や資金で、現実的に何を担えるのか
- 担うことが難しい機能を、連携によって補えるのか
- 予定している診療時間、設備、採用計画への影響はあるか
3.今決めることと、あとで決めることを分ける
- 開業前に行政へ確認すること
- 物件契約や融資の前に決めること
- スタッフ採用前に方針を決めること
- 開業後の患者さんの状況を見ながら見直すこと
4.関係者へ説明できる言葉にする
- 自院が地域で担いたい役割
- その診療体制を選ぶ理由
- 現時点では担わない機能と、その理由
- 近隣医療機関や地域との連携方針
この順番で確認すると、制度上の事実と、自院としての希望や判断が混ざりにくくなります。
また、比較に使う時間や迷う時間を減らし、物件、資金、採用など、次に検討する課題へ進みやすくなります。
自院の判断理由を言葉にしておけば、開業後にスタッフへ方針を共有するときや、地域の医療機関と連携するときにも説明しやすくなります。
制度対応のためだけではなく、院長やスタッフが無理なく続けられ、地域で役割を果たし続けられるクリニックを考える土台になります。
まとめ
医療法改正によって、クリニックの開業そのものが禁止されるわけではありません。
ただし、外来医師過多区域では、無床診療所の開設前の届出や、地域で必要とされる医療機能に関する協議への対応が重要になります。
そのため、これからの開業準備では、「この場所で開業できるか」だけでなく、地域の中で自院がどのような医療を提供するのかを考えておくことが大切です。
制度の変化に振り回されるのではなく、制度上確認できる事実と、自院として判断する内容を分ける。
その上で、地域で担う役割、診療体制、スタッフ体制、地域連携を考えることが、開業計画を判断する土台になります。
まず確認したいこと
- 開業予定地が外来医師過多区域に該当するか
- 地域で不足するとされている医療機能は何か
- 自院としてどのような患者さんを支えたいか
- 無理なく担える役割は何か
- 担えない機能をどのような連携で補うか
- 今決めることと、開業後に見直すことは何か
正解を一つ探すよりも、確認した事実と自院の判断基準を踏まえ、院長ご自身が判断理由を持って次の一手を決められる状態をつくることが重要です。
参考資料
※実際の対象区域、届出方法、地域で不足するとされる医療機能などは、開業予定地を管轄する都道府県の最新情報をご確認ください。
制度の情報と、自院として決めることが混ざっていませんか
開業準備では、制度、地域の状況、診療内容、資金、スタッフ体制などを同時に考える必要があります。
そのため、情報が足りないからではなく、複数の論点が絡み合い、「何から考えるのか」「今何を決めるのか」「あとで見直せることは何か」を一人では分けにくくなることがあります。
まえやまだ純商店では、現在の計画やこれまでの経緯を伺い、確認できている事実、本当に判断する論点、自院としての判断基準、考えられる選択肢を整理します。
一つの正解を押し付けるのではなく、院長ご自身が判断理由を持ち、次に確認することや次の一手を決めやすい状態を整えるための支援です。
※状況確認面談は、無料で制度上の答えや解決策を提示する場ではありません。現在の状況と相談内容を確認し、支援がお役に立てそうかを双方で確認するための時間です。
