まえやまだ純商店|クリニック開業・経営相談

クリニック開業・経営コラム

2025年医療法改正でクリニック開業は何が変わった?|外来医師過多区域と開業準備のポイント

最終更新日:2026年10月15日

医療法改正の話を聞いて、 「これからクリニックは開業しづらくなるのでは」 「都市部ではもう開業できないのでは」 と不安を感じている先生もいるかもしれません。

結論から言えば、医療法改正によって、 クリニックの開業そのものが一律に禁止されたわけではありません。

一方、2026年4月1日から、 外来医師過多区域で新たに無床診療所を開設する場合には、 原則として開設6か月前までに、 地域外来医療の提供に関する意向などを 都道府県へ事前に届け出る制度が始まっています。

また、都道府県から地域で不足する医療機能について 要請・勧告を受け、それに従っていない場合には、 保険医療機関の指定期間が 通常の6年ではなく3年以内の期限付き指定となる場合があります。

そのため、これからの開業準備では、 「この場所で開業できるか」だけでなく、 地域の中で自院が何を担い、 何を連携で補い、 どのような体制なら無理なく続けられるのか まで考えておくことが大切です。

この記事で整理すること

  • 医療法改正でクリニック開業はできなくなったのか
  • 外来医師過多区域では何が変わったのか
  • 開設6か月前の事前届出とは何か
  • 地域で不足する医療機能への要請・勧告をどう考えるか
  • 保険医療機関の期限付き指定とは何か
  • 開業準備で地域の役割をどう考えるか

医療法改正でクリニック開業はできなくなったのか

まず押さえておきたいのは、 今回の医療法改正が、 クリニックの開業を全国一律に禁止する制度ではないという点です。

そのため、 「自由に開業できなくなった」 「都市部では一律に開業できない」 と受け止めるのは適切ではありません。

一方で、 これまでとまったく同じ手続きや考え方で 開業計画を進めてよいわけでもありません。

2026年4月以降に押さえておきたい点

  • クリニックの新規開業そのものが 一律に禁止されたわけではない
  • 外来医師過多区域で新たに無床診療所を開設する場合、 原則として開設6か月前までの事前届出が必要
  • 都道府県から、 地域で不足する医療機能の提供について 要請・勧告を受ける場合がある
  • 要請・勧告に従っていない場合には、 保険医療機関の指定が 3年以内の期限付き指定となる場合がある

また、事前届出など医療法上必要となる手続きを経ずに 保険医療機関の指定申請を行った場合には、 医療法上の手続きが完了するまで 保険医療機関の指定を受けられない場合があります。

つまり、 制度確認を開業直前に行うのではなく、 物件契約や開業時期を決める段階から、 開業予定地がどの区域に該当するのかを確認する必要性が高まった と考えた方がよいでしょう。

外来医師過多区域では何が変わったのか

今回の改正で特に確認しておきたいのが、 「外来医師過多区域」です。

外来医師過多区域は、 外来医療を行う医師が特に多い地域のうち、 地域外来医療を確保する必要がある区域として、 都道府県知事が指定・公示する区域です。

すべての都市部が 一律に外来医師過多区域となるわけではありません。

そのため、 開業予定地について、 都道府県が公表している最新情報を確認する必要があります。

外来医師過多区域で確認したいこと

  • 開業予定地が外来医師過多区域に該当するか
  • 事前届出をいつまでに提出する必要があるか
  • 届出書には何を記載する必要があるか
  • その地域で不足するとされる医療機能は何か
  • 自院が予定している診療内容とどう関係するか
  • 都道府県との協議が必要になる可能性があるか

ここで大切なのは、 「医師が多い地域だから開業できない」 と単純に考えないことです。

医師数が多い地域であっても、 すべての医療機能が十分に提供されているとは限りません。

反対に、 自院が予定している診療内容と 地域で求められている医療とのずれが大きい場合には、 開業計画の前提をあらためて確認した方がよいこともあります。

区域や運用は地域ごとに確認してください

外来医師過多区域への該当状況、 地域で不足するとされる医療機能、 届出書式や協議の具体的な運用については、 開業予定地を管轄する都道府県の 最新の公表資料や担当部署で確認する必要があります。

開設6か月前の事前届出と要請・勧告

2026年4月1日から、 外来医師過多区域で新たに無床診療所を開設する場合には、 やむを得ない場合を除き、 開設予定日の6か月前までに事前届出を行う こととされています。

届出では、 診療所の基本情報だけでなく、 地域外来医療の提供に関する意向などについて 確認されます。

そして、その内容を踏まえ、 都道府県知事から、 地域で不足している医療機能を担うよう 要請される場合があります。

要請に応じない場合には、 協議の場でその理由などについて 説明を求められることがあります。

さらに、 必要に応じて勧告や公表につながる仕組みも設けられています。

事前届出を「書類提出だけ」と考えない

開業予定地でどのような医療が求められているのか、 自院はそのうち何を担えるのか、 担うことが難しい場合にはその理由は何かを、 開業前から整理しておくことが重要になります。

なお、 法令上の事前届出を行わない場合や 虚偽の届出を行った場合については、 過料に関する規定も設けられています。

※6か月前までの届出には、 厚生労働省令で定める「やむを得ない場合」の例外があります。 実際の適用については、開業予定地の都道府県へ確認してください。

保険医療機関の期限付き指定とは

医療法上の要請・勧告とあわせて確認したいのが、 保険医療機関の指定です。

通常、 保険医療機関の指定期間は6年です。

一方、 外来医師過多区域で新たに無床診療所を開設し、 都道府県からの要請・勧告に従っていない場合には、 保険医療機関の指定期間が 3年以内の期限付き指定となる場合があります。

したがって、 「開業自体ができるか」だけを見ればよいわけではありません。

医療法上の手続きと、 開業後に保険診療を継続するための手続きを 一体として確認する必要があります。

開業スケジュールで早めに確認したいこと

  • 物件契約前に区域指定を確認できているか
  • 開設予定日から逆算して6か月前を確認しているか
  • 都道府県への事前届出に必要な内容を把握しているか
  • 地域で不足する医療機能を確認しているか
  • 保険医療機関の指定申請まで含めた日程になっているか

制度とあわせて考えたい「地域での役割」

今回の制度改正を考えるうえで重要なのは、 法律の文言や届出方法だけではありません。

開業するクリニックが、 地域の中でどのような役割を担うのかを 開業前に考える必要性が、これまで以上に高まっています。

そのときに整理したいのが、 次の3つです。

  • できること
    院長の経験や専門性、 スタッフ、設備などを踏まえて、 自院ではどのような医療を提供できるのか
  • 求められること
    地域や患者さんから、 どのような医療機能が求められているのか
  • 続けられること
    人員、時間、設備、資金、 院長自身の働き方を踏まえて、 無理なく継続できるのか

この3つが、 最初から完全に一致するとは限りません。

例えば、 地域で在宅医療や休日・夜間対応が求められていたとしても、 一人の院長と限られたスタッフだけで すべてを担うことが現実的とは限りません。

その場合には、 他の医療機関や専門職と連携する、 開業後に体制が整ってから対応を検討するなど、 自院だけで抱え込まない方法も考えられます。

また、 自院で持続的に担うことが難しい医療機能については、 なぜ難しいのかを整理したうえで、 その分、自院が強みを発揮できる役割に 人材や時間、資金を使うという考え方もあります。

「何を自院で担い、何を連携し、何を今は行わないのか」

制度に合わせることだけを目的にするのではなく、 地域から求められることと、 自院が無理なく続けられることを すり合わせて考えることが大切です。

地域での役割が整理されると、 次のような開業判断にもつながります。

  • 複数の開業予定地を比較する
  • 診療内容や診療時間を決める
  • 必要なスタッフ数や職種を考える
  • 必要な医療機器やシステムを考える
  • 近隣医療機関との連携を考える
  • 行政や関係者へ自院の考えを説明する

開業準備では何を確認するのか

医療法改正について知ったからといって、 すぐに開業予定地や診療内容を 変更する必要があるとは限りません。

まず、 制度上確認する事実と、 自院として判断することを分ける ことが大切です。

1.制度上の事実を確認する

  • 開業予定地が外来医師過多区域に該当するか
  • 事前届出が必要か
  • いつまでに、どの書類を提出するのか
  • 地域で不足するとされる医療機能は何か
  • 協議や要請の対象となる可能性があるか

2.自院の計画と照らし合わせる

  • 自院ではどのような患者さんを診たいのか
  • 院長の経験や専門性を生かせることは何か
  • 地域ではどのような役割が求められているのか
  • 現在の人員・設備・資金で無理なく担えるか
  • 自院だけでは難しい部分を連携で補えるか

3.開業計画への影響を確認する

  • 物件契約の時期を変更する必要があるか
  • 開業予定日を見直す必要があるか
  • 診療時間や診療内容への影響はあるか
  • スタッフ採用や設備投資への影響はあるか
  • 資金計画への影響はあるか

4.関係者へ説明できる状態にする

  • 自院が地域で担いたい役割
  • その診療体制を選ぶ理由
  • 自院で担える医療機能
  • 現時点では担うことが難しい医療機能とその理由
  • 近隣医療機関などとの連携方針

この順番で整理すると、 制度情報を見ただけで 「開業できないのでは」と不安になるのではなく、 自院の開業計画に何が関係するのかを 分けて考えやすくなります。

また、 制度への対応だけではなく、 開業後に院長やスタッフが無理なく続けられ、 地域で役割を果たしていけるクリニックを 考える土台にもなります。

まとめ|制度確認と、自院としての開業判断を分けて考える

2026年4月から、 外来医師過多区域における無床診療所の新規開業について、 事前届出などの新しい仕組みが始まっています。

ただし、 医療法改正によって クリニックの開業そのものが 一律に禁止されたわけではありません。

外来医師過多区域で新たに無床診療所を開設する場合には、 原則として開設6か月前までの事前届出が必要です。

また、 地域で不足する医療機能について 要請・勧告を受け、それに従っていない場合には、 保険医療機関の指定が 3年以内の期限付き指定となる場合があります。

そのため、 これからの開業準備では、 単に「この場所で開業できるか」だけを見るのではなく、

  • 自院には何ができるのか
  • 地域では何が求められているのか
  • 何なら無理なく続けられるのか
  • 何を自院で担うのか
  • 何を他院や専門職との連携で補うのか
  • 何を現時点では行わないのか

といったことも、 開業計画の中で整理していく必要があります。

制度の変化に合わせること自体を 開業の目的にする必要はありません。

制度上確認すべきことを確認したうえで、 自院としてどのようなクリニックをつくり、 どう続けていくのかを考えること が大切です。

参考資料

※外来医師過多区域の指定状況、 地域で不足するとされる医療機能、 届出方法や協議の運用は地域によって異なります。 実際に開業を検討する際は、 開業予定地を管轄する都道府県の最新情報をご確認ください。

制度の情報と、自院として判断することが混ざっているときに

「自院ではどうするか」を、一度整理してみませんか

開業準備では、 制度、地域の状況、物件、資金、 診療体制、スタッフ、設備などを 同時に考える必要があります。

まえやまだ純商店では、 一般的な成功パターンや一つの正解を そのまま当てはめるのではなく、 現在の計画やこれまでの経緯を伺い、 必要な情報、論点、選択肢、 リスクや注意点、優先順位を整理しながら、 「自院ではどうするのか」を一緒に考えます。

制度上確認することと、 院長ご自身が判断することを分けながら、 次に何を確認するのか、 今何を決めるのかを整理します。

無料相談は原則1回です。 まず現在の状況や気になっていることを伺い、 当方で対応できる支援がある場合は、 対応内容と費用をお見積もりします。 無料相談の時点で契約を決めていただく必要はありません。

まえやまだ純商店 前山田純

この記事を書いた人

前山田 純 まえやまだ純商店

2011年から医療機関の開業・経営支援に従事。 クリニック開業や経営で複数の判断が重なったときに、 現在の状況、必要な情報、選択肢、 リスクや注意点、優先順位を整理し、 「自院ではどうするのか」を考えるお手伝いをしています。 一つの正解を押し付けるのではなく、 院長ご自身が判断理由を持てることを大切にしています。

前山田純のプロフィールを見る →
記事一覧