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クリニック開業・経営コラム

循環器内科経営シリーズ 第6回|循環器検査の導線化と経営(心電図・エコー・ホルターの位置づけと、結果説明・再診設計)

循環器クリニックの外来では、心電図・エコー・ホルターといった検査が
診療の質を左右するだけでなく、外来全体の流れ(導線)や経営の安定性にも直結します。

しかし、多くのクリニックでは「検査そのもの」に目が向きやすく、
検査が“外来のどこに影響しているのか”という導線の視点が抜けがちです。

本記事では、

  • なぜエコーが外来を詰まらせるのか
  • 検査待ち動線をどう整えるか
  • 心電図・エコー・ホルターの役割とタイミング
  • 結果説明が再診率を安定させる理由
  • 検査→結果→再診へつながる“再診設計”のつくり方

を整理し、「検査」を経営装置として組み立てる視点を解説します。


循環器内科経営シリーズの位置づけ

本記事は、循環器内科経営シリーズの第6回です。これまでの流れの中では、

  • 第1回〜第2回:循環器クリニックを取り巻く制度・環境と、これから求められる役割
  • 第3回〜第5回:患者層・慢性期診療・継続支援を踏まえた外来の設計
  • 第6回(本記事):検査導線と結果説明・再診設計を通じた外来オペレーションの安定化

という位置づけになります。
次回の第7回では、これらを踏まえた循環器クリニックの全体戦略・これからの方向性を整理していきます。


1.検査導線が詰まる理由を整理する

循環器外来で混雑が起きるとき、その多くは検査導線の設計に理由があります。
とくにエコーは外来全体の“律速段階”になりやすく、ここがボトルネックになると一気に待ち時間が伸びていきます。

(1)エコーは「時間」と「ブレ」が大きい検査

エコーは、一般的に1件あたり15〜20分前後を想定することが多い検査です。
症例によっては30分以上かかることもあり、1人の遅れがそのまま外来全体の遅れにつながる構造があります。

心電図のように5分で終わる検査とは違い、
1件あたり何分かかるのか」「1日何件まで回せるのか」を意識せずに運用すると、
気づかないうちにキャパシティを超えてしまいやすい領域です。

(2)施行者のスキル差や人数が、外来キャパに直結する

エコーを「医師が全例施行する」のか、「技師が常勤・非常勤で入る」のか。
これにより、1日の検査回転数は大きく変わります。

例えば、

  • 15分枠で午前中に8枠確保できるのか
  • 技師がいる日だけエコー枠を増やすのか
  • 医師が施行する日は、外来人数を抑えるのか

といった設計次第で、「その日の外来の限界値」が決まっていきます。

(3)診察枠と検査枠が競合することで起きる“渋滞”

エコー時間を長く取れば診察枠が減り、短くすると診断精度や安心感に影響が出る場合があります。
つまりエコーは、

  • 医療の質
  • 院長の働き方
  • 外来キャパシティ

を同時に決めてしまう重要な検査です。

「いつの間にか外来が詰まっている」背景には、
こうした検査枠と診察枠の“取り合い”が隠れていることが少なくありません。


2.検査待ち動線をどう整えるか

外来が詰まるクリニックでは、診察そのものよりも、“検査待ちでの滞留”が原因となることが多いです。

(1)典型的な滞留パターン

  • 診察前に検査するか、診察後に検査するかが毎回ぶれる
  • スタッフ判断が属人化し、案内がその日その人によって違う
  • 患者さんが「次どこへ行けばよいのか」が分からない
  • エコーの遅れが、他の検査や診察にも波及する

こうした状態が続くと、患者さんにとってもスタッフにとってもストレスが大きい外来になってしまいます。

(2)導線が整理されているクリニックの特徴

一方で、検査と診察の導線が整理されているクリニックは、
多少混雑していても「早いのに丁寧」「安心して任せられる」という印象を持たれやすくなります。

例えば、

  • 初診の一部は「受付 → 心電図 → 診察」という標準フローが決まっている
  • ホルター返却の患者さんは「受付 → そのまま診察前で待機」が共通ルールになっている
  • エコーが遅れているときの“例外運用”も、スタッフ間で共有されている

といった状態です。

とくに循環器領域では、導線整備そのものが“ブランド”になり得ます。
「どこに行けばよいかが分かりやすい」「スタッフの案内が一貫している」ことは、患者さんにとって大きな安心材料です。


3.検査ごとの役割とタイミングを整理する

検査の性質はそれぞれ異なるため、
検査ごとに役割とタイミングを決めることが、外来安定の第一歩になります。

(1)心電図:診察前後どちらにも組み込みやすい“回転型検査”

心電図は、

  • 所要時間:おおよそ5分前後
  • スタッフ施行で回転が速い
  • 初診・再診どちらにも組み込みやすい

といった特徴があり、診察前に実施しても、診察後に回しても導線が破綻しにくい検査です。

経営的には、

  • 初診の「診断の方向付け」を助け、診察の質を底上げする
  • 不整脈の再評価などで、再診ペース調整の材料になる
  • ホルターやエコーへの説明導線として活用できる

といった役割を持ちます。

(2)エコー:外来全体の“律速段階”となる検査

エコーは、

  • 所要時間:15〜20分(症例によっては30分以上)
  • 遅れが蓄積しやすい
  • 1日の検査数の上限が外来キャパになりやすい

といった性質を持ちます。

経営視点で見ると、次の4点がポイントになります。

  1. 誰が施行するか(医師か技師か、常勤か非常勤か)
  2. 1枠を何分で設定するか(10分/15分/20分など)
  3. 初診に積極的に組み込むのか、再診中心にするのか
  4. 検査前後の案内導線をどう設計するか

この設計次第で、院長の働き方・外来の安定性・収益の見通しが大きく変わります。

(3)ホルター:再診導線を自然に作る“来院装置”

ホルター心電図は、

  • 装着で1回来院(装着時間の目安:5〜10分
  • 返却で1回来院
  • 結果説明で1回来院

といった流れを前提とするため、最低でも2〜3回の再診を生み出す検査です。

経営的には、

  • 不整脈診療の質を保つ
  • 心房細動などの管理を標準化する
  • 病診連携の説明がしやすい
  • 再診数が安定し、外来の変動幅を小さくする

といった役割を果たします。
循環器の中でも、再診設計がしやすい検査と言えるでしょう。


4.検査体制の設計が、外来の安定性を決める

検査を個別に運用するのではなく、
外来全体を“1つの流れ”として設計することで、外来は劇的に安定します。

(1)初診と再診で、検査の目的を分ける

まずは、

  • 初診:診断の方向付けが目的
  • 再診:治療効果の確認・経過観察が目的

という整理をしておくと、検査の組み込み方が明確になります。

「初診から何でもかんでも検査を行う」のではなく、
方針を決めるために必要な検査と、経過を追うための検査を分けることで、
院長の手間と患者さんの納得度がともに高まります。

(2)エコーを起点に診察スケジュールを組み立てる

外来の混雑は、医学的な問題というより“設計の問題”であることが少なくありません。
なかでもエコーは律速段階になりやすいため、

  • まずエコー枠を1日の中でどう配置するかを決める
  • その周囲に診察枠を並べていく
  • 技師の勤務日・勤務時間と外来回転数のバランスをとる

といった発想が有効です。

「何となくエコーを詰め込む」のではなく、
“エコーのキャパ=その日の外来の土台”として設計していくイメージです。

(3)スタッフ主導で案内できる導線の標準化

外来の安定には、「誰が案内しても同じ流れになる」ことが重要です。
例えば、

  • この症状の方は、まずここで心電図
  • エコーが混んでいるときは、先に診察を通す
  • ホルター返却後は、そのまま診察室前で待機してもらう

といった“外来の共通言語”があるだけで、

  • スピード
  • 安全性
  • 正確さ

が一気に高まります。
これは、スタッフにとっても「判断に迷わない外来」につながります。


5.検査後の“結果説明”が再診率を決める

循環器の慢性期診療では、再診率の安定=外来経営の安定を意味します。
その中心にあるのが、実は“結果説明”です。

(1)患者さんは「結果の意味」が分かると再診する

患者さんが知りたいのは、

  • 自分の状態はよくなっているのか
  • 悪くなっているとしたら、どの程度なのか
  • なぜ次の再診が必要なのか

という「意味」です。
これを理解している患者さんは、納得して戻ってくる=再診が安定する傾向があります。

(2)結果説明の3つのポイント

結果説明では、次の3点を意識すると、再診の納得感が高まりやすくなります。

  1. 数値の意味(改善・維持・悪化)
  2. 生活との接点(食事・活動量・睡眠など)
  3. 次回の目的(何を確認するのか)

特に③の「次回の目的」は、再診率に大きく影響します。

例えば、
「次は〇週後に、BNPの変化と心不全の兆候を確認します」
といったように、“何のために来院するのか”が患者さんの言葉でイメージできると、再診は途切れにくくなります。


6.検査ごとの“再診導線”の作り方

検査→結果説明→次回予約までを一連の流れとして設計することで、
再診率は安定しやすくなります。検査ごとに見てみます。

(1)心電図:軽い“再診理由づけ”に向いている検査

心電図は、初診・再診どちらでも組み込みやすい検査です。
不整脈の再評価を理由に2〜4週後の再診を案内しやすく、
「一度チェックして終わり」で完結させない工夫がしやすくなります。

(2)エコー:再診間隔を一定にし、外来の変動幅を小さくする

心不全や弁膜症などの評価では、
「数ヶ月ごとに心臓の状態を確認する」という目的でエコーを位置づけることができます。

経営的には、再診間隔を一定にし、1日の外来数の変動幅を小さくする効果が大きい検査です。
「いつエコーを入れるか」をパターン化することで、
院長の働き方の見通しも立てやすくなります。

(3)ホルター:3ステップで再診が安定する検査

ホルターは、

  • 装着
  • 返却
  • 結果説明

の3ステップを前提とした“再診装置”です。

不整脈管理の標準化にもつながり、
「この流れで経過を追っていきます」と説明しやすいことから、
自然な形で再診を続けていただきやすくなります。


7.まとめ|検査は“経営を支える装置”である

心電図・エコー・ホルターは、単なる検査ではありません。
外来の流れを決め、院長の働き方に影響し、患者さんの継続にも関わる
“経営装置”として機能する存在です。

あらためて、次の4つの視点で見直すことが大切です。

  • 検査案内の導線(いつ・どこで・誰が案内するか)
  • 検査体制の設計(誰が・何分で・どのくらい回すのか)
  • 結果説明の標準化(数値・生活・次回目的の3点)
  • 検査ごとの再診導線(どの検査が、どの来院サイクルを生むか)

これらを整理することで、
外来のスピード・安全性・再診率・収益の安定が同時に整う外来が実現していきます。


次回予告|第7回「循環器クリニックの全体戦略・これからの方向性」

本シリーズ第6回では、循環器検査を軸にした外来導線と再診設計を整理しました。
次回の第7回では、これまでの内容を踏まえて、

  • 循環器クリニックがこれからの制度・環境変化の中で、どんな役割を担うのか
  • 「治す医療」と「支える医療」をどう両立させていくのか
  • 院長の働き方・診療体制・地域との関係性をどう設計するか

といった全体戦略・今後の方向性を、経営の視点から整理していきます。
循環器クリニックとして「どこを目指すのか」を考えるヒントになれば幸いです。


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