AIが変える医療と、これからのクリニック経営

先日、Yahoo!ニュースで「AIの力で、すべての患者が名医の診察を受けられる時代がやってくる」という記事を読みました。記事では、AIが診断や手術の判断をサポートすることで、医療の質が均一化し、より安心できる医療が広がる可能性が紹介されていました。
その中で使われていた表現として、収益を優先した医療は淘汰されていくのではないか
という指摘がありました。必要以上の検査や投薬といった、短期的な数字を優先する医療は、AIの登場によって可視化され、患者さんから選ばれにくくなるのではないか、という趣旨です。
私自身は強い言い回しを好んで使うわけではありませんが、この見解は「経済性だけに偏った医療は持続可能ではない」という問題提起として受け止めています。
物質的な価値と情緒的な価値の両立
クリニック経営には、目に見える物質的な価値(売上・利益・業務効率など)と、数字に現れにくい情緒的な価値(患者さんの安心や信頼、スタッフの働きやすさ、地域からの期待)があります。
- 物質的な価値:経営を支える基盤。計画・投資・継続のために欠かせません。
- 情緒的な価値:通院理由・定着理由となる基盤。口コミや紹介にも直結します。
どちらか一方に偏ると不安定になります。短期の数字が伸びても信頼が失われれば長続きしませんし、情緒的価値だけで経済的な裏付けがなければ継続が難しくなります。
AI時代に求められるバランス
AIの進展で診療の質が均一化していく時代だからこそ、差がつくのは関係性の質です。患者さんが安心して通える環境、スタッフがやりがいを持てる職場、地域から必要とされる存在。その設計と運用が、結果として経営の安定にもつながります。
「三方よし」の視点
当社は、患者さん・スタッフ・地域の三方よしを軸に、依存させない伴走を大切にしています。AIで置き換わりにくい部分――人と人との信頼・手触りのある改善――を一緒に積み重ねていくことが、これからのクリニック経営の要だと考えています。
おわりに
技術が進むほど、数字だけでは測れない価値の重要性が増していきます。物質的価値と情緒的価値のバランスを意識しながら、地域で長く信頼されるクリニックづくりをご一緒できれば幸いです。
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