【生活習慣病と内科クリニック経営③】睡眠時無呼吸症候群(SAS)──生活習慣病とともに支える医療へ
「いびき」「日中の眠気」──その背後に、生活習慣病が潜んでいるかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、単なる睡眠障害ではなく、生活習慣病の増悪因子として注目されています。
2026年の診療報酬改定では、在宅医療・慢性疾患管理との統合が進む中、内科クリニックがどのようにSASを位置づけるかが問われています。
本記事では、SASの臨床的背景とともに、経営的・地域的視点からの対応ポイントを整理します。
SASの臨床的背景
SASは大きく「閉塞性(気道が狭くなるタイプ)」と「中枢性(脳の呼吸指令が出ないタイプ)」に分かれます。
特に閉塞性SASは、肥満・上気道の形態・加齢が関与し、40〜60代男性で高い有病率を示します。
夜間の低酸素状態が長期間続くことで、身体への負担は想像以上に大きくなります。
SASが生活習慣病と関わる理由
SASは、単に「眠れない病気」ではなく、生活習慣病を悪化させるトリガーとして位置づけられます。
- 高血圧患者の約3〜4割がSASを併発
- 糖尿病患者ではインスリン抵抗性が悪化し、血糖コントロールが難化
- 動脈硬化が進行し、心筋梗塞・脳卒中リスクが上昇
また、日中の眠気による交通事故や労働生産性の低下など、社会的損失の面からも注目されています。
つまりSASは、医療と社会をつなぐ慢性疾患ともいえます。
2026年診療報酬改定とSAS管理の方向性
従来からSASには「CPAP療法に関する管理料」が設定されてきましたが、今後はさらに、生活習慣病管理料との連動や、在宅医療・データ連携の評価が議論されています。
CPAPデータや血圧・体重・HbA1cなどのモニタリングが、慢性疾患管理の一部として統合される流れです。
「睡眠の質」を切り口にした慢性疾患マネジメントは、クリニック経営に新たな価値をもたらします。
内科クリニックでの実践ポイント
- 検査体制の整備: 簡易検査機器を導入し、自宅スクリーニングから開始
- 治療の継続管理: CPAP療法の導入・使用状況モニタリング・再診体制の確立
- 生活習慣病管理との統合: 高血圧・糖尿病・肥満などをSASと一体で管理
- 他科連携: 循環器・呼吸器・耳鼻咽喉科との紹介・逆紹介ルートを明確化
SASを単独疾患として扱うのではなく、慢性疾患の一部として整理することで、医療の継続性と経営の安定性が両立します。
周知と啓発:地域での早期発見を支える
- 健診問診で「いびき」「日中の眠気」を聞き取る仕組みづくり
- 院内掲示やパンフレットでSAS検査・治療の流れをわかりやすく紹介
- ホームページ・ブログでセルフチェック項目を発信
- 企業健診・産業医との連携で勤務世代へのアプローチを強化
SASは、医療と地域社会の橋渡しができるテーマです。
「眠りの質」を整えることが、患者の生活の質を支える第一歩となります。
まとめ:SASを“生活習慣病管理の一部”として捉える
SASは、生活習慣病を悪化させるだけでなく、社会生活にも影響を与える疾患です。
内科クリニックが「生活習慣病管理+SAS管理」を一体で行うことは、地域医療の新たな標準となる可能性があります。
その実践には、検査体制と経営戦略の両立が不可欠です。
シリーズ記事
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- 【生活習慣病と内科クリニック経営④】フレイルと慢性疾患管理 ― 内科クリニック経営における包括的対応
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