ベースアップ評価料はどう配分する?賞与・手当・配分差をどう考えるか【院長の経営相談Q&A】
更新日:2026年9月14日
本記事は、厚生労働省が公表している令和8年度ベースアップ評価料関連資料をもとに、無床クリニックを中心に整理しています。制度内容や運用は、今後の疑義解釈や事務連絡等により変更される可能性があります。実際の届出・給与処理等については、最新の厚生労働省・地方厚生局の資料や、必要に応じて社会保険労務士等へご確認ください。
ベースアップ評価料について、制度の趣旨は理解できても、実際には「どう配分すればよいのか」で迷うことがあります。
特に、全スタッフへ同じ金額を配る必要があるのか、毎月の手当として支給するのか、賞与との関係をどう考えるのかは、院長や事務担当者が迷いやすいところです。
まず確認しておきたいのは、ベースアップ評価料として入った金額を、そのままスタッフの人数で割って配る制度ではないという点です。
制度上求められている賃金改善の考え方を確認したうえで、自院の対象職員、給与体系、既存の手当、これまでの賃金改善などを踏まえて、どのように給与へ反映するかを考える必要があります。
まず押さえておきたいこと
- ベースアップ評価料は、医療機関が自由に使える収入ではありません。
- 評価料による収入は、制度上定められた対象職員の賃金改善に充てることが前提です。
- 評価料収入をそのまま職員数で割って配る制度ではありません。
- 全スタッフへ一律・同額で配分することが制度上求められているわけではありません。
- 賃金改善は、基本給または毎月決まって支払われる手当の引上げを基本に考えます。
- 賞与については、「余った金額を賞与で配ればよい」と単純に考えず、制度上どこまで賃金改善額に含められるのかを確認する必要があります。
- 制度上決まっていることと、医療機関側で判断することを分けて考えることが大切です。
なお、「スタッフ一人あたりいくらにすればよいか」は、単純な人数割りだけでは決まりません。対象職員、勤務状況、現在の給与体系、賃金改善計画・実績などを確認したうえで考える必要があります。
この記事では、具体的な金額を一律に示すのではなく、ベースアップ評価料の配分・賃金改善について、制度上決まっていることと、自院で確認・判断することを分けて整理します。
目次
ベースアップ評価料は自由に使える収入ではない
まず整理しておきたいのは、ベースアップ評価料の位置づけです。
ベースアップ評価料は、医療機関の利益として自由に使える収入ではありません。
制度によって得られた収入は、対象となる職員の賃金改善に充てることが前提となっています。
ただし、「評価料として10万円入ったから、その10万円をスタッフへそのまま分ける」というような単純な仕組みではありません。
賃金改善については、制度上の対象者や賃金改善の方法を確認し、賃金改善計画や実績との整合も確認する必要があります。
「入った金額を配る」ではなく「賃金改善としてどう反映するか」を考える
ベースアップ評価料では、単純な分配額だけを見るのではなく、現在の基本給や手当、これまで実施した賃金改善も含めて、制度上必要な賃金改善が行われているかを確認する必要があります。
そのため、配分方法を考えるときは、まず次の点を分けて確認すると整理しやすくなります。
- 制度上、誰が対象となるのか
- どのような賃金改善が求められているのか
- 現在の給与体系はどうなっているのか
- すでに行っている賃金改善があるか
- 今後も継続できる給与体系か
配分方法は一律である必要はない
「スタッフ全員へ同じ金額を配らなければならないのか」と迷うことがあります。
ベースアップ評価料では、全員へ一律・同額で賃金改善を行うことが制度上求められているわけではありません。
一方で、だからといって、医療機関側が理由なく自由に差をつけてよいという意味でもありません。
配分差を検討する場合には、制度上の対象者を確認したうえで、自院の給与体系や勤務状況などを整理して考える必要があります。
配分を考える際に確認したい項目
- 制度上の対象職員
- 職種
- 常勤・非常勤などの雇用形態
- 勤務時間
- 現在の基本給
- 既存の手当
- これまで実施してきた賃金改善
- 今後も継続できる給与体系か
例えば、現在の給与体系や勤務時間が異なるスタッフについて、単純に全員同額とすることが自院にとって適切なのかは、個別に確認する必要があります。
反対に、職種や雇用形態が違うことだけを理由に、機械的に配分差をつけるのも適切とは限りません。
重要なのは、「他院がこの方法だから」ではなく、制度上の条件を満たしたうえで、自院の給与体系にどう反映するかを考えることです。
基本給または毎月の手当として反映するのが基本
配分方法を検討する際に迷いやすいのが、どの形で賃金改善へ反映するかという点です。
- 基本給を引き上げるのか
- 毎月決まって支払われる手当として反映するのか
- 賞与との関係をどう考えるのか
ベースアップ評価料による賃金改善では、基本給または毎月決まって支払われる手当の引上げを基本に考えます。
そのため、「評価料として入った金額を年末にまとめて支給すればよい」と考えるのではなく、まずは毎月の賃金へどのように反映するかを確認することが重要です。
基本給と手当のどちらにするかも、自院の給与体系を確認する
制度上の条件を確認したうえで、基本給へ組み込むのか、毎月決まって支払われる手当として設けるのかを検討します。
その際には、既存の給与体系、就業規則、給与規程、他の手当との関係なども確認が必要です。
特に、給与項目を新設したり、就業規則や給与規程へ影響したりする場合には、社会保険労務士等へ確認した方がよいケースがあります。
「制度上認められているか」と「労務上どのように設計するか」は分けて考えることが大切です。
賞与で調整してよいのか
検索でも特に多いのが、「ベースアップ評価料は賞与で調整してよいのか」という疑問です。
ここは、「賞与なら自由に使える」「余った金額を賞与として配ればよい」と単純に考えない方がよいところです。
ベースアップ評価料による賃金改善は、基本給または毎月決まって支払われる手当の引上げを基本として考えます。
また、基本給等の引上げに伴って増加する賞与、時間外手当、法定福利費などについては、制度上の賃金改善額との関係を確認する必要があります。
一方で、業績に応じて変動する賞与や、一時的に支給する臨時的な手当などについては、基本給等の引上げと同じ扱いにはなりません。
賞与について確認したいこと
- 毎月の基本給または手当として、必要な賃金改善が行われているか
- 賞与が基本給等の引上げに連動して増加するものか
- 業績連動や一時的な臨時支給になっていないか
- 賃金改善計画・実績上、どのように扱われるのか
そのため、「賞与で配るか、手当で配るか」という二択から考えるのではなく、まず制度上求められている賃金改善を確認し、そのうえで現在の給与体系へどう反映するかを考える方が整理しやすくなります。
対象となる職員を確認する
配分方法を決める前に、制度上の対象職員を確認する必要があります。
令和8年度診療報酬改定では、ベースアップ評価料の対象職員の範囲が見直されています。
そのため、過去の制度内容や以前作成した院内資料をそのまま使うのではなく、令和8年度の対象範囲を最新資料で確認することが大切です。
特に、勤務医師・歯科医師、事務職員、派遣職員、業務委託、法人役員などは、雇用形態や年齢等によって制度上の扱いを確認する必要があります。
対象者を確認するときのポイント
- 職種だけで判断しない
- 雇用関係を確認する
- 常勤・非常勤、勤務時間を確認する
- 勤務医師・歯科医師は年齢要件も確認する
- 派遣職員については派遣元との関係も確認する
- 業務委託や法人役員の扱いを区別する
対象職員の整理を誤ると、その後の配分方針や賃金改善計画にも影響します。
制度上の対象者と、自院としてどのような給与体系にするかは、分けて考えてください。
配分方針を決めた後は、スタッフへの説明も必要
配分方法を決めた後は、スタッフへどのように説明するかも考える必要があります。
特に、配分額や給与への反映方法に違いがある場合には、「なぜこの方法なのか」を院内で説明できる状態にしておくことが大切です。
ただし、スタッフへの説明方法そのものは、配分方法とは別のテーマです。
制度上決まっていること、自院で決めたこと、個々の給与に関することをどのように分けて伝えるかについては、以下の記事で詳しく整理しています。
自院の配分方法を決める前に確認したいこと
制度上のルールが分かっても、「では自院ではどうするか」がすぐ決まるとは限りません。
配分方法を考えるときは、最初から「一人いくらにするか」を決めるのではなく、必要な情報を順番に確認すると整理しやすくなります。
配分方法を考えるための確認順序
- 制度上の対象職員を確認する
誰が対象となり、誰が対象外となるのかを確認します。 - 評価料収入の見込みを確認する
どの程度の収入が見込まれているのかを把握します。 - 現在の給与体系を確認する
基本給、既存の手当、賞与、これまで実施した賃金改善などを整理します。 - 雇用形態・勤務時間を確認する
常勤・非常勤、勤務時間、職種など、スタッフごとの状況を確認します。 - 制度上求められる賃金改善との整合を確認する
賃金改善計画や実績との関係を確認します。 - 給与への反映方法を比較する
基本給へ反映するのか、毎月の手当とするのかなど、自院の給与体系に合わせて考えます。 - 継続できるかを確認する
制度変更や評価料収入の変動があった場合にも、院内で無理なく運用できるかを確認します。 - 社会保険労務士等へ確認する事項を分ける
就業規則、給与規程、給与計算、労務上の扱いなど、専門家への確認が必要な事項を整理します。
この順番で整理すると、「制度上決まっていること」「専門家へ確認すること」「自院で判断すること」を分けやすくなります。
大切なのは、他院の配分額や方法をそのまま当てはめることではありません。
最終的にどの方法を選ぶ場合でも、院長自身が「なぜ自院ではこの方法にしたのか」を説明できる状態にしておくことが重要です。
この記事のまとめ
- ベースアップ評価料は、評価料収入をそのままスタッフへ人数割りして配る制度ではない
- 制度上の対象職員と、賃金改善の方法をまず確認する
- 全スタッフへ一律・同額で配分することが制度上求められているわけではない
- 賃金改善は、基本給または毎月決まって支払われる手当の引上げを基本に考える
- 賞与は「余った金額を配る方法」として単純に考えず、制度上の扱いを確認する
- 対象職員、給与体系、雇用形態、勤務時間、既存手当、これまでの賃金改善を確認する
- 賃金改善計画・実績との整合も確認する
- 就業規則や給与規程、給与処理などは、必要に応じて社会保険労務士等へ確認する
- 最終的には、制度上決まっていることと自院で判断することを分け、自院として配分方針を決める
制度は分かったものの、自院の配分方針を整理しきれないときに
ベースアップ評価料の制度上の考え方が分かっても、現在の給与体系、雇用形態、既存の手当、スタッフ構成などが重なると、「自院ではどうするか」を決めにくいことがあります。
まえやまだ純商店では、すぐに配分方法を決めるのではなく、まず現在の状況、これまでの経緯、院長のお考え、すでに確認・対応していることを伺います。
そのうえで、制度上確認すること、社会保険労務士等へ確認すること、自院で判断することを整理します。
無料相談の内容を踏まえ、当方で対応できる内容かを確認し、必要な支援がある場合には、支援内容と費用をご案内します。
労務・給与・就業規則等について専門的な判断が必要な場合は、社会保険労務士等への確認が必要です。
